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67話

状況完了はフィンカの遊びが終わった時点にて。

大きな図体を障害物の多い森林部に誘われた時点で、魔物に勝機は無かったとも言える。

戦闘の流れを観察できたのは後半もいいとこだったが、自ら倒した倒木で足場を乱され、即席ジャベリンで穴だらけにされの蹂躙でフィンカに完封されたのが良く判る惨状だった。


と言うか、俺に良いとこを見せたかったらしい。

俺の方が先に作業を終えて到着したのに合わせ、一気呵成にトドメを刺してたし。

どうもフィンカの種族はネコ科の弄びの性質の持っているようで。

獲物対象にされた相手には、同情の気持ちを持っとこう。


「倒した、楽しかった」の意識には「そりゃ良かったなー」と返しておく。

ドヤ顔全開だったので頭をかいぐり倒してもおく。

フンスフンスと鼻息も荒く喜ぶ様は、もう完全飼い猫の其れで。


俺の意識越しにフィンカの偉業を観賞していたミラテル嬢は……ちょっと引いてるけども。

でもこれが獣人の本質らしいので。

世間様が奴隷契約の重要性を大事にする理由も良く判ったのかな、な精神で。


反面、その契約で得た獣人の護衛力には十分過ぎる安心感が有るだろう。

フィンカの飼い主が将来的にミラテル嬢になったとしても、愛玩動物以上の価値は示せたと言う一幕で。



サイズは大きいが天然の魔物だったようで、死体が魔素の塵に還る気配は無し。

背には大量の木を生やした前衛的過ぎる生け花のスポンジ剣山っぽい酷い状態だが、そのまま[収納]に収めて、辺り一帯が静寂を取り戻したので遺跡の前へと戻る。


最初の戦闘の跡は、多少は血の臭いが漂っているが、元の戦いを想像できる程に乱れてもいない。

魔物の攻撃が基本的に振り回し型の打撃だったせいだろうな。角の形状が俺の知識にあるトリケラトプスと同じだったら、突き刺し攻撃も有ってもっと悲惨な現場になったろう。

……ああ、そうそう。

収納した事で魔物の名称が判明。

[ドーザーサウルス]だそうで。

何度か思う。魔物の名称って地球由来の雰囲気がよくあるなぁ……と。

其のあたりの共有性の理由は、やっぱり其の内に調べてみたいリストに入れとこうか。


魔物との戦いに集中してたフィンカは意識を通して俺の様子は把握してても、此方の戦い自体には無関心だったようで。

あれだけ居た人間が跡形も無く消えている事にやや不思議そうな顔をしている。

だが其処は別に不思議がる事でも無かろうに。

俺は[収納]持ちなのだから。痕跡丸ごと収めてしまえば良いだけの話。


……ああ、具体的な部分の話と?

んー、言って判るかの内容になる気もするのだけども。


意識の同調も駆使して、フィンカに地球の生化学式な呼吸の仕組みを講釈してみた。

……うん。まあ息するのは大事くらいには伝わったか。


今回は人数も多いし地球産の武装も無いので、一気に広範囲に効果を及ぼせる同威力の兵器の効果を再現してみた。

簡単に言えば、窒息の領域の設置だろうか。

ただ真空は意外に面倒。人間だと三分そこらは呼吸無しで生きれるし。だから定番の呼吸する事で生体機能に障害を生む方向のやつで。

毒ガス攻撃と言うのとは少々違う。二酸化炭素を増やしての、大気の成分濃度を変えたって感じか。


手法は単純。

予め周辺の大気を[収納]に収めて中で成分分解。

一部のみを対象空間に放出の流れ。

自分も含めた自爆攻撃とも言えるが、状況の急激な変化を理解してるのとしてないとで心理的な対応全然違う訳で。


いきなり普通に息ができなくなった連中は揃ってパニックを起こしたまま、簡単に意識を失ってくれました、と。


大気成分の抽出にやや手間取ったが、準備が整えば実行自体はほぼ一瞬。

現代兵器の概念は、そういう部分で効率的だ。

魔物相手だと非常に怪しい効果とも言えるが、相手が人間だと異世界のって制限がついても非常に楽になる不思議。


また呼吸障害で意識を無くした時点で瀕死判定にでもなったのか、死亡してなくても[収納]への格納が可能になった。

大体……三割はまだ生きてるか。昏睡状態が固定されてるならこのまま楽に処理も可能と。

また、収納できたお陰で鑑定の機能も働いて助かる。死亡したら個性の情報も消えて「死骸」以外にろくに記さなくなるし。

……と言うか、最近肉類の鑑定を頑張ってたせいか、どんな肉でも食肉への加工法が追加されて……実に意識の表に置きたくない情報も記され始めてて。


……まぁ、忘れよう。


とにかく、その生きてた中に例の元々死にかけの隊長も混ざっていて「タラナン子爵」関係者って情報も得られたのが幸い。

此方は鑑定結果を読む感じに意識し、ミラテル嬢へと連絡済み。

後は向こうの貴族の領域で精査してもらい、的確な指示で楽をさせてもらおうな精神で。



と言う事で、とりあえずの状況終了。

しかし時間は無さげでもあるので、早速の遺跡探索だ。

だって、この増援以降に更に増援って展開が無いとも限らないし。

隊長の肩書きはあくまで部隊長な感じだったので、やっぱり本隊は別に居る様子だし。



瓦礫を避けて遺跡内に入ると倒されたファンガスの後方に健在のが大量に。

しかも形態は……あー、女性型。しかもまだ若い世代。

外見が劣化してないのは観賞する側としては視覚的に助かるが、その元になった犠牲者へのやるせなさが何とも微妙な気分を生んだり。

少女の外見でも武器の振り方はそれに似合わない豪快さが。

ぎこちなさって意味では変わらないので、本人にその才能が有った訳ではないと推測。

まぁ、技能が有ろうが無かろうが関係無しに倒していくが。


進む内にフィンカが討伐、俺が状況把握の役割分担となる。

どうも遺跡内のファンガス養殖場化は完了してるようで、その部分の痕跡の確認に集中したかったので。

柱が多く壁が少ない。と言うか地上階は壁が無い。周辺が森林なので日中の総合的な明るさは低いが、それでも遮光性は皆無では無い。

と言うか、そもそも人が使うのだから用途は逆だろう。

それをファンガス仕様に改装したようで。

彼方此方に日光除けのバリケードが設置されていた。

……迷路のようとも言える。


……ああ、ファンガスの移動を制御する意味も有ったのかね。


問題はそれが地上設備を埋める効果も有った事で。

例によって地下へと向かう必要がありそうな状況だと、非常に無駄で邪魔なものとしか言いようがなかったり。

ただ苗床の機能を止めないままでとなると、其れを根こそぎ排除するのも困りものといった感じで。

結局、魔力を香りとして感知するフィンカの先導で進み地下への道を探す定番の流れに。

その流れでファンガスと遭遇するのはフィンカが最初となり、討伐担当へ。俺はガイドされる間が暇なので、後付け設備でこの地の貴族の何かしらの汚点探しの担当となった訳だ。


これは、先程ミラテル嬢から来た追加依頼のもので。


「状況としては私領持ちの貴族の特権で片が着く案件の領域なので、他領の貴族が介入できるだけの条件が必須」との事で。


やはり中央の半場強制で特定地域に押し込められている連中な立場が、今回は逆に連中への優位性として機能してるそうで。

領民とは、言わば奴隷以下の扱いも時には許される存在なのだし。

真実は税や労働力を生むための家畜だ。反抗の意思までは管理されないが、使う側の都合で生殺与奪が決まる存在は……過言じゃない。

自分の富を生む道具を消す以上共倒れは必須だろうが、自領民を全員皆殺しにしても、貴族に犯罪という汚点は残らないって訳だ。勿論、[愚かな貴族]とかな評価は下るが。


だから、ミラテル嬢はファンガスの苗床にする対象の条件に注目した。

もしこの対象が他領に悪影響を与えるのだとしたら、其処が付け入る取っ掛かりになる。

特に中央が口を出すともなれば魔導国自体に害となる条件も必要となるが……、其処は政治の悪辣さで演出も可能なんだそうで。


けどまぁ、現状は芳しくない。

まぁ、あくまで序でのものでもあるし。

これが成果を生めば……、たぶん、今後は俺たちの行動の制限が、この面倒の多い地域で少し減る程度のもんだろうし。




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