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64話

キノコ人間がイコールでファンガスと、俺が勝手に思ってたからの盲点。

宿主と言うか、繁殖用の移動用個体にするならば別に人型である必須性は無いらしい。

むしろ四足獣が一般的。フィンカ自身もそっちの個体ではよく知っていた。

仲間の遺体の冒涜云々は、昔語りで聞きかじった又聞き知識と言う事で。


解体作業中の雑談内容を要約すると、連中は人型の物を敢えて用意し、養殖状況で狩っていたとの事。

理由は得る素材の品質のため。

連中の基準で高品質化するための知恵らしい。

問題は、そのための宿主の調達手段だ。


どうやら特定の基準を満たす人間が定期的に使われているようで。


……ああ、うん。

まぁ、こっちの罪悪感とか一気に消えたわ。


俺が見た類人猿のような外見は、コピー元の遺骸が大分劣化してる証拠らしい。

新鮮なら、個人の判別が可能なくらい精巧にコピーされるそうで。

回収素材の質も比例して劣化するようなので、そろそろ次の獲物の調達も……という話に落ち着いていた。



さて、ではそろそろ対応を決めようか。

先ずは……、この事態がこっちの世界でどの程度の清濁なのかの判断だよなぁ。

個人の感性は別にして、別に人命が何よりも増して優先なんてのは、地球でも極々一部の建前ではしかないし。

何かと命の価値が低いこっちじゃ、それこそ人間の命を対価に公共事業とか存在しても不思議じゃないし。

そのあたりの常識を……ミラテル経由で確認したい。


……。

……ふむ。


結構、自由度のある回答で返ってきたか。

要は、「身内の命か赤の他人のかで、価値は変わる」と。


まあ、自分のそれとそう変わらなかったので一安心。

時に生け贄は殉教者とかも含むからなぁ。被害者本人に望まれる殺人なんてのも、たまに成立するから厄介で。

しかもそれが、その地域では正当化してたとかだと、更に厄介。


流石に自分が生きてた時代にその現物と遭遇はしなかったが、地球の歴史にも有ったらしいし、[食用の人間]とか。


ただ今回は。

少なくとも魔導国での常識の中に養殖事業で人間の素材活用って話は存在しなかった。

またその素材を使った規格製品も無し。

あれはこの地域で、少なくとも余り公言はしない類いの商材なのは確からしい。


つまり、殲滅対象でもOKと。


その他の情報として。

日光が苦手なファンガスは夜間にあの遺跡から出てくるようで、連中のキャンプはそれへの迎撃対応な陣地でもあるそうだ。

今日以降、何日か留まって素材回収をする予定だったと。

最初にキャンプを設営しなかった理由は、ファンガスの苗床が完全に朽ちていた場合は対応が変わったため。もしもコピーすら出ない場所に設営しても無駄だから。その時は、新しい苗床の調達からの話になる。または……別の養殖場への再移動と。


……うわぁ、他にもこんな場所用意してあったらしい。


今回は劣化品でも素材回収は続け、同時に次の宿主を苗床として設置するかの判断を仰ぐとか。

どうやら、こういった実行部隊に指示を出す本隊が別にいるようで。

キャンプを設営を終えた班から二人、伝令として南の方向へと移動していった。


複数の部隊が動いてるとなると、此処を殲滅するのも得策とは行かないか。むしろ危険な敵対する存在が居ると教えて警戒させるし。

まぁ、放置なら面倒も減るから楽と言えば楽だけど。


結局は兵士連中には接触無しで、移動再開になる。

流石に自分達の目的と直接関係ない案件過ぎるので。

これが例の儀式魔術の一つだったら都合が良かったんだけども。

そう上手くは行かないようで。残念。


ただ、遺跡内のファンガスの確認だけはしていく事にした。

苗床と化した宿主の身元くらいは確認しないと。

わざわざ選別基準をつくるくらいなら、その部分を知っておいた方が良いし。


何より現物のサンプルを回収すれば、より詳しい鑑定情報も得られるし。


「狩らないの?」のフィンカの意識には「必要だから見逃す」と明確に指示しておく。

曖昧に言うと、前回みたいに変な解釈してな行動を誘発するかもなので。


遺跡内に戻り、ファンガスの来た方向へと向いて進む。MAP内にはまだ反応が出ないので、案外広い遺跡なのか……若しくはコピー自体が居ないか、まだ存在してないか、なのか。

だいぶ劣化してるというなら、ファンガス本体も次の苗床を得たい本能は有るだろうし。だとしたらあの兵士達に向けての移動はファンガスにとっても狩りの行動とも取れるし。


つまり、反応の無いまま本体と接触の可能性も有るので注意せんと。

そうフィンカにも意思を伝えて、一応は慎重の精神で進んだ。


連中最後の戦闘が有った地点を過ぎた頃にようやく反応が出る。

案外近い。

やっぱり、枯れかけた本体で半分休眠状態って感じなのかもか。

出た反応の方に移動するとフィンカが先頭に立って警戒を始める。程なく接敵だ。我見は先程と変わらない。動きはゴブリンにも劣るので敵にもならない。全身が繊維質な筈だが斬る感触や急所はコピー元と同じらしいので、結構簡単に制圧できた。


[収納]に入れての鑑定結果が植物素材の判定には少し意外感が。

多少は苗床になった人物の身元情報が……と目論んでたのに、欠片も無い。

むしろ元々菌糸類だった影響か、繊維としても使えるが食用化と情報が出たのに驚いた。

むむむぅ。

どうやら苗床の本体とコピー体とでは生体的な連結性は無いようで。

実体の無い擬態情報程度の繋がりって事なのかね。


発生頻度も早くはない。三体倒した時点で本体のある地点に到着。

元は武器庫らしき部屋の中の床一面が白い網目状の菌糸に覆われ、中央にはやや盛り上がった繭のような物が。


ふむふむ。


俺たちと其処を結ぶ中間あたりの床がゆっくりと盛り上がり、コピー体の登場。

この時点で魔物の反応が生じたのを直に確認。

菌糸に覆われた床の下に仕掛けが……有る訳でも無しと。

つまりは本当にその場で今、作られたって事か。


中々に不思議な光景。


できたての其れをとりあえず退治。

直ぐに次ぎが……と待ってみても小さな盛り上がりが出て止まってしまい……。

やっぱり連続作成へのインターバルは必要と?


その想像が正しいのか、もう限界寸前の効果で本来はもっと一斉に湧くのかの答えは不明のようで。

とくかく次は無いようなので苗床の確認をしてみよう。


菌糸がカーペット化してその下の確認ができない。万が一の落とし穴の可能性とかも考えて、足取りは慎重に。

しかし、その懸念も杞憂のまま中心部まで進む。

ファンガス本体はほぼ無害。

視認不可能の胞子は出してる筈だが、それを呼吸で身体に入れても感染にはならない。

例外は、よっぽど死にかけな状態でくらいと。

そんなミラテル情報を裏付ける反応で。


コピー体が誰彼を襲うのは獲物を殺し、その場で苗床を生むのが目的の反応って訳ね。

どうやら魔物としての動物的な意識すら持っていないようだ。


手にした剣の先で、繭を軽く突いてみる。

特に抵抗もなく、埃を引っ掻くように中身が出てきたが……。

うん、完全に死体としか言いようが無い。

自然な、白骨化も含むミイラ化な状態で顔の判別も難しい。短髪なので男っぽいと想像できる程度。衣類もちょっとなぁ、布地であったろうな黒く変色した塊と化してて身元を想像ってのも難しい感じで。

連中が劣化と称したように、確かに朽ちる寸前のものとしか。


……と、手掛かりらしき遺品が有ったか?


左の手首にミサンガ風のアクセサリーが。

何かの……、おそらくは魔物の獣毛で編まれたらしい其れは、菌糸に覆われても腐敗の気配も無い。

フィンカの知る様式の装飾では無いので、獣人系とは無関係の者で確定と。

勿論、貴族社会であるような物でもないのでミラテルからも情報は無し。


一応は回収しとくか。


ミサンガを摘まむと白骨化してた手首がバラけて苦労無く入手。この後のコピー体が片腕になる可能性は、考えても仕方が無いの精神で。

[収納]に入れての鑑定では[ブラスティ・ベアのお守り]と出た。名前からして熊の魔物らしい。こんなとこで熊の魔物の情報を得るとは。

まぁ、普通に狩れる対象のようで驚異度も低い感じか?


地元の狩人かと、改めて傍に遺品が転がって無いかと見回すが特に武器は無し。代わりに武器庫の痕跡か兵士が使うような武器があちこちに。

コピー体の持つ武器の元情報は其れかと推測も入れておいた。


俺が調査している間に隠し要素に探っていたフィンカだが、臭いで追える部分では空振りだったようで。

魔物の反応や魔力的な物なら俺でも探知できるんだけどな。

対象じゃない遺跡だとこんなもんかと、魔力に頼らない他の調査の手段が必要なのだとも意識しておく。


……じゃあ、行くか。


骸に「南無」と軽く会釈し、その場を去る。

いまだに苗床としての機能は止めて無いが、それをするのは兵士連中の仕事であるし。

むしろ、次の獲物にされるだろうな対象の方が気になるし。


でも、そっちはどうしようかね。

正義の味方な空気で動くのも、俺たちの立場だとなんか違うもんだしなあ。




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