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61話

今回の移動先は、前回から比べての反対方向となる。

此方の地域は魔導国から見ると初期から発展が進んだらしく、木っ端貴族が管理する小領地が大量に在る。


俺の貴族の概念だと、元々その地域で自然発生した支配体制が大国に呑み込まれて家臣化したもの。日本的な言い方をすれば豪族とかがしっくりする。

しかし魔導国での地方貴族と言うと、基本的にはお荷物だ。

有能な貴族は魔導国国内で魔力を用いた要職に就いている。俺の中ではミラテル嬢がその代表になる人柱も、魔導国を魔力的に支える意味では最重要の役職のようだし。

その意味で、魔導国内に居れない貴族である、と言う立場が既に……貴族としての価値は無くした証明となるのだとか。


ギリギリ、他の地域との接触無しで自活が可能な領地を与えられてな流れってのは、貴族として建った過去の業績に対する退職金に近いもんに当たるのだとか。


問題は、それを受けた当人だったら退職金と納得もするが、世襲する次の世代あたりから徐々にその意識を拗らせて行く事。

「我が家系は有能過ぎて中央に疎まれて……」な被害妄想なんかはまだ可愛い方らしい。

総じてみると、柵み無しに知己になって個人的な付き合いが有る以外での……互いの何かの立場が関係するような知己の場合は絶対に避けた方がいい連中。


今回の俺の立場での面倒事は、適当に下賜された領地の中に、目的地がヒッソリとポツンポツンと存在すると言う事。


そしてミッション本質は、そんな連中からは接触を断ちつつ現地を探訪する事。

前回は有る意味好き勝手な移動が可能だったのに比べて、今回はスニーキングな方向の精神でと。


……成る程、俺の単独移動が必ずしも最適……とは言わないと。

フィンカの披露した能力は俺の大雑把な部分を細かく補ってくれてたし。

移動経路の想定に細かく修正を入れれそうなら、それだけで効率も良さそうだし。



と言う事で、その道中。

俺の走力で二日かかる時点で、地方の貴族のやばさが想像できる。

師匠が一部の貴族の腐りっぷりを呆れつつ認めてたが、こうも距離的な隔離も隠さないでとなると洒落になっていないようで。



隠密行とは言いつつも、それは貴族対応なので普通に街道を行く。

キャンプ地も普通に経由。

此方は、本来の目的とは真逆の無茶振り案件。

この地域の獣人の知名度の確認。なんかフィンカの移動経路で怪しい情報が有ったとかの裏づけ探しでもある。


……それ、どう考えても二律背反な気が。

勘違いとは思えていない。

目立つから、獣人。

しかも今は偽装済みだが、それ以前はほぼ素人でも勘ぐれるぐらい密入国の雰囲気を醸してた訳だし。

それは流石に、ただの行商人には無理な行動だ。

何かしら、特定の無理が通じる背景が有る。

俺の予想だと、その背景に居るのは貴族。しかも自領で殿様気分の駄目なやつ。

ミラテル嬢も同じ見解で、自分でも独自に情報は集めるが俺も俺なりのデータ収集はした欲しいそうで。


その妥協案が、地元の貴族のゴシップを知ってるだろうの業界人からネタ集めな手で。

キャンプ地で出会う誰某がその対象な訳だ。


まあなあ、隠密行動だからと山野駆け巡りの野人になり隊をしたかった訳でも無し。道中のキャンプで庶民の舌を現代風に洗脳しようは……何にも増して優先してる事なのだし。

フィンカの参入で一時本気で本格的な野生への回帰旅かと懸念したのに比べれば……雲泥の差となるのだし。

自分達を露骨に悪意の視線にぶつける可能性が高い以外は、文句の出る方針でも無いのだし。


……随分(気分的な)神経が太くなったよな。俺。


あ、後、実に重要な部分も。

今回はトラブルの誘発の可能性が非常に高いので。

出てしまったトラブルに関しては中央貴族が全力で不問化してくれるな条件。

出掛けには「苦労はしますがお気になさらず」なミラテルの心の言葉に見送られ。

隣のシーディスからは「好きなだけ潰してこい」との物騒な激励をもらう。

……本当の出掛けにトニアスの首根っこ捕まえて真実を請うたら、「前々

からミラテルの転移移動の件で色々と暗闘のある地域でもあった」のだと。


……要は、この機会に本気で潰したい相手だから、俺が都合良く動いて欲しいな影の指令付きの依頼な訳だった。


そう思うとなんか哀れな。

仮にも貴族として傲慢になるよう飼育された結果の処分な扱いだもんなー。

如何にも、日本にも居た特定地域しか知らない名ばかり議員の三代目な感じで。

元々選挙の時の宣伝塔以外に存在価値も無かった連中。しかもそれすらも役立てないくらい悪行を重ねて、とうとう選挙にすら要らないようにシステムも変えられたし。

野党や野次党として残れるのすら勝ち組と考えなきゃならん茨の道に生きるとか……。


ああ、いやいや。

それはもう前世の話。此処は異世界。此処は異世界。


ともかく、地元の名士とは君臨してても完全に無視していい相手の確約は貰ったし、最悪排除してもいいのだから……むしろ楽。

トニアス経由で、実は既に代役の能力持ちな代官も近くに配置されてるのだとか。

……そこは用意周到過ぎないだろうか?

まるで、俺とフィンカがこれからテロをしに行くと勘違いしてないか?

俺は冒険者。探索仕事に行くのだよ。

まぁ、前回の魔物と対戦のように荒事は有るかもだけど。


ああ、因みにこれから行く地域に冒険者ギルドの支部は無し。

どうも其処そこ武力を示すと私兵への勧誘が面倒過ぎて、支部すら置けないな雰囲気らしい。


何処の世紀末な環境と聞きたくなるが、町や村としはそう腐っては無いそうで。

むしろ、それすら無理なら自治が叶わず崩壊してる。

実際、馬鹿な支配者が文字通り馬鹿を晒し過ぎて打倒しような市民活動も普通に起きる。

と言うか、既に何度か起きている。

そんな無法地帯は崩壊済みな訳だ。そして、そういった場所から難民化した連中が、前回の村々の開祖な訳である。


……中央の貴族連中の思惑には、機会が有れば大粛正でもしたい風潮も有りそうだなあ。

じゃなきゃ、如何にミラテル嬢の生家が公爵家でもゴーサインは出ないと思うし。


と言うか。

ここまでな扱いを受ける地方貴族。

本当に何故存在してれてるんだろう?



最初のキャンプでそれとなくな情報収集。

獣人奴隷の扱いの情勢、近隣の貴族の性質。

あまり物騒な背景が想像できる事も無く終了。

後はミンサーの営業は実演付きで披露。

実に盛況に終わる。


掘り出し物としては、現物を別の魔道具と交換しないかの交渉が一件。

ただし、交渉成立には成らずと。

流石になー。

売り手が正体不明と称する魔道具とじゃ無理だ。


だが、魔道具関係だとそう珍しい交渉内容じゃないそうで。

最近の俺の感覚だと魔道具は本当に便利な物で済むが、世間様では謎が多くて高価な品で止まっている物なのだし。


接触鑑定とは説明せずに少し調べさせてはもらった。

正体不明の魔道具だと、こうして様々な人間の調査を経て用途を知るのも普通だそうだ。

勿論、有益な情報が出たら報酬にもなる。


俺が知れた内容は、この魔道具は別の魔道具と組み合わせて使う部品でしかないことのみ。だから正体までは判らずと。

イメージ的な印象のみで語ればテレビのリモコンが一番近いか。しかも、同じメーカーでの制約無しで機能する感じの。

サードパーティ品、若しくは混線しやすい粗悪品とも言う。


幸い、魔力供給用の魔石が意匠として見えてるので、そこに「これこれな魔術回路が……」な感じの偽の理由をつけて説明をしておいた。

調べるついでに低価格な買い取りも提案したが、それは向こうから拒否。

まぁ、言ってみただけなので問題も無し。

それでも、言った価格で買い取り希望の気になったらと、魔術士ギルドへの窓口への経由は伝えておく。

一応は、アフターケアな精神のつもりで。


その後は。

俺との意思疎通が可能にはなってもその他大勢の言葉はいまだ解らずなフィンカの焦れが出て解散。

子供の独占欲には叶わんしと、他のメンツも同意して就寝となる。

フィンカに関しては演技でも無いからなぁ。


その晩は、極々普通に抱き枕にされて寝た。



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