60話
お仕事一段落、の後のちょっとした休暇期間……と思いきや、私塾に帰ったら普通に主夫ノルマに襲われた。
疲れて帰ってきたのにー(棒読み)。
まぁ、いいけど。
師匠経由で俺の居なかった期間の話を聞くと、どうやらストックとして置いていった物が二日保たずに消えたらしい。
「保存の効くのは良いが、新作を置いてけいけば速攻で消化されるわ」と怒られる。
なんたる理不尽。
……いやまぁ、確かにパスタ類は不思議と腹の許容量底無しで入ったりするもんでも有るが。
俺が用意したのって……、食う奴の感性次第じゃ「イモ虫」とか呼んで食欲減らす効果有ったんだがなぁ。
と言うか。
半分近くそれを狙って置いてったりしたんだが。
……むしろ、「小さい頃の貴重なタンパク源を思い出させる」と、食欲増進の方向に働いたそうで。
私塾には、魔術士の才能の可能性の高さのみで集められた元平民や農民出自の子も多いのを忘れていた。
うむ、敗因はそれだな。
特に農作業。
此方の世界じゃ農地や耕地の魔物対策は過剰にしてても、基本的農法は自然任せが普通。やり過ぎれば自然破壊に繋がる感じの農薬は未使用のようで、当然、虫害も有る。
だがそれも、子供達にとっては[自然の恵み]な感じで食料……と言うか、オヤツな対象だったようで。
考えてみれば盲点だった。
農地に出る虫となれば取る栄養は農地のそれ。
同じ地域に生きる子供に毒の効果を発揮する可能性も低いと。
と言うか、人が自力で栄養化できない部分も虫の消化機能を介して吸収ができる。
植物性ビタミンの概念が通じるかは知らんけど、肉食動物が草食動物を介して植物系の栄養を得るシステムは虫もしっかり対象にできてたようで。
仕方が無いので、仕入れたばかりの牛肉を一部放出した。
師匠が嵩増し対策でかパンを予定より多めに補充してたので、その一部も活用。
後は自前の[収納]から芋を取り出し、膨大な肉入りコロッケの作成。
下味付けを塩のみとしても、油の加熱でギュっと閉じ込められ、強まった食材の甘みが相乗効果を生んで俺の食事の拘りとは無縁な、調味料無しでも美味く食せる物になる。
コロッケとは言いつつも一つ一つのサイズは肉団子な感じに。
フォークで突き刺しても形が崩れず、一口で持ってけるので。
余熱で仕上げる云々は一皿を山盛りにで対応。
と言うか、揚げたては流石に熱すぎて食わせれんので。
古いパンはパン粉にしたが、新しい物は物はそのまま出した。何個かはスライスしてバゲットでのコロッケサンド風に実演。
茹で野菜のカットも皿に盛って置いたので、トッピングはご自分でのスタイルに。
一応はマヨも。個人的には辛子風味なんだが自重のプレーン品。
だいぶ調味料の洗脳はしたのに、やっぱり、純粋な子供舌だと辛さの刺激に対する反応はいまいちで。
……ああ、今日は無理だが、今回の探索中に採取したものでジャムとかも用意しとこうかね。
実はカシスとかコケモモ風のはゲットしてるので。
次の探索でも集める精神でいた方が良いだろう。
と言うか、せっかく地球産の甘味素材が自生してんだから活用しないと。
問題は……、どれも結構魔物の生息域限定な素材なとこだけど。
私塾への帰還で一番の目的はフィンカ用の意思疎通の魔道具の作成。
作成とは言いつつも、真っ当な魔道具作成とは完全に別次元となる創造物なので、この世界の理に影響しない隔離空間が必須。
俺の知るその環境は現状師匠の秘密工房しかないので。
今回は好き勝手に創造できる自由性を大いに活用し、限定的な汎用型のを作成。
何時でも誰でも、では無く。
後から使用者の登録をしてな段取りが可能のやつだ。
そもそも、俺がこの結界空間の魔術を覚えれたら要らない段取りなのだが、それが無理だったので。
チートの才能でカバーできる域を超えてた技術だった。
「最低でも五年の間は結界生成でニート化が必須」とか。
技法としてはやれても、今の俺にそういった時間を費やす予定が未定なので。
そもそも、拠点にできる場所も無い。
今は魔導国を起点に活動してるが、それも状況次第で明日は去ってな可能性も……相変わらずなのだし。
魔物避けの複製は……ちょっと失敗。
肝心の現物をフィンカに渡したままだったので。
ああ、フィンカはまだミラテル嬢のとこに置いてある。手続きは数日は必要な案件なのたそうで。
代わりに自分なりの魔物避け……と言うか、事前に魔物対策が可能な魔道具を創造できないか試してみた。
……うん。
……悪ノリはいけないな。
ちょっと凶悪な代物が誕生してしまった。
俺のMAPに対応した自動迎撃……いや、[自動先制攻撃]機能を有した魔物避けな産物に。
なんと、探知範囲内で危険度認定済みの魔物に遠隔で致死魔術が発動。始末後はさらに自動で[収納]に回収。さらにさらに収納内で自動解体、各素材として鑑定までかまして整理という……。
魔物避けの概念は何処に消え去ったな代物で。
しかも、形にしたのは良いが必要な魔力がまた尋常じゃない。普通な魔力容量なら起動すら不可能。俺でも連続してだと……想定では二時間保たずに魔力切れを起こすようで。
便利極まりないながらも、其れなりにコストが極悪過ぎて失敗作としか良いようがない。
因みに、先制迎撃なんて意識が拙かったんだろう。
魔道具の形態は何故か1/35ミサイル戦闘車の模型になった。
魔道具を起動しとくと必要な時に勝手に収納から出動し、爪楊枝より小さなミサイルを発射する。
絵面だけならハリウッドCGも軽く陵駕な実写感。
ミニチュアな分、特撮感の方も満載だが。
……後日、試しに一度使った時の感想で。
と言うか、自動も過ぎると不便利と言うか。
性能云々よりその起動プロセスが駄目だった。
此方の都合が無視されての突然の登場、一連の発射プロセスを経ての「ドーン」。
何故かマーチなBGMすら鳴ってたり。
……自分の感性、割と本気で心配になった。
やっぱりあれだ。
創造は製造より感性依りな領分なんだろう。
製造での設計、細工の工程が理性的な行為が必須な分、妄想成分の自重や自制も働くと。
やってみれば創造は夢を視てるのに近いからなぁ。理路整然に通じない部分すら理解不明のまま成立して形になるのが、質が悪い。
造った本人が言うのも何だが、発想が形になった実感は有っても、どういった構造で形になってるのかの自覚は皆無だし。
内臓付きの人体模型を想像しても現実は泥人形を作ってたな感じだろうか。俺には立派に内臓と思えていても、他人にはただの泥。
前者の俺は夢を視る俺。
後者の他人は夢から覚めた俺。
そのくらい、隔絶感のある魔道具を創ってるのが、今の俺だ。
このあたりは……致命的にこっちの世界の技術を知らないからの弊害だろう。
早々に何とかしたいが……、これも時間をかけて学ぶって制限付きなんだろうねぇ。
この日に創った他の物としては、なるだけ人力で済む感じの機構を入れた、パスタ・マッシーン。
桁外れの消費量と言うなら、足りない分は自分達で作らせようの精神で。
魔道具たる所以は、素材投入でのイイカゲンさ。
小麦粉を入れる投入孔。水を貯めとくポット部分。此処さえ素材で満たしておけば、後は手回しハンドルを回せば何故かパスタシートと化し、更に裁断して麺状にもなる。
茹でるくらいは普通にやれと。
……ソースの類いは流石に無理か。
此方は家を空ける時点で大量に作り置くしかないかー。
ペペロンチーノ系なら油と好きな具材を炒めろで済む気もするが、基本的に辛い傾向の多いもんだし。
何より既にミートソース系に舌を汚染したのが失敗した。野菜で甘味を出す工程は結構時間の管理が面倒なので。
焦げる手前の微妙さが魅力。その部分で自分ルールを定着させたら、多分、高い確率で厨房が火事になるし。
そんな日常に戻った感を数日過ごし、次の調査予定が組まれたのは帰還後四日の事。
当初はまた俺単独での予定だったが、意思疎通が可能になったフィンカ連れでのものに。
理由は……役立つ役立たない以前の話なようで。
ミラテルさん、ミラテルさん。
流石に遊び過ぎて引かれたようだよ。




