59話
帰還行程は詳しく語る必要は無いだろう。
色々と時間は使ったが、移動した距離としてはそう遠くない。
チート任せで移動に専念にすれば太陽の出ている内に魔導国に帰れた。
往路で確認したトラブルは徹底的に避けたので、復路での問題は最低限だったし。
避けれずに遭遇した魔物はどうしてもランダム配置だったせい。
魔物避けの魔道具はフィンカ専用とした影響だと思う。
俺が付けてた時は魔物の方が逃げていく様子だったのに。
装備する者によって効果が変わる?
其処は帰還後に調べる案件って事で。
フィンカが獣人で良かったと思えた要素の追加。
移動速度を加減しなくて良い、な部分。
前世でなら速度出し過ぎで狭まる視界が恐怖の状況でも極々平常。
むしろスピードが楽しいといった反応だったので、此方も気分良く走れた。
……と言う訳で、半日掛からずの行程。
……時間的には、あまり語る必要も無い。本当に。
……ちょっと、後日「新しい魔物発見」とか冒険者ギルドに報告が上ったりもしたらしい、が。
帰還直後にフィンカの試練が始まる。
無許可状況で人間の生活圏に入ってしまった事への色々。
俺の完全管轄下なら物理的教育も含めて制御は効くかもだが、今回の旅の最後の方でやらかした件で、少々自信は無し。
また、俺越しに知ってはいても初対面となったミラテル嬢との兼ね合いも有って、正式に奴隷契約基準の魔術的効果を付ける必要が、必須となった。
まぁ、別に。呼び方程に非道な処置では無いようで?
いわゆる首輪な感じの拘束具も無いし。
ゴムのベルトな感じのチョーカーにしか見えない。
しかもファンシーな事に、ピンクの地に白抜き縁取りのハート模様でのドット生地。
普通にリボン? フィンカ自身はワイルド系健康優良児のイメージなんで、あんまり似合ってるとは言い難い。
……うん、ミラテルさんの趣味のようで。
しかも実際に着けてみて似合わなかったな印象は共有できたようで。
なんか「明日は別のを用意しないとっ」な意気込みの意思が伝わって来とります。
……其処は、まぁ、頑張ってくれの精神で。
フィンカも女の子特有の着飾りたい精神が有るようなんで、嫌がって無いなら放置。
……ああ、[女の子]って部分は今は使って良いかが微妙。
どうも俺の外泊中に、ミラテル嬢は例の人柱の仕事をこなしたらしい。
今の姿は子供ではなく、そこそこに成長した姿へと変わっていた。
其の感じで初対面の時の印象が帰って来た。
本当の年齢には届いてないが、17前後の容貌なら十分に女性の印象。
成人済みの雰囲気な行動にもマッチ。
初めて対話した時のにも違和感は無し。
……ただし、現状はその意識の方が若返り過ぎとも思うが。
うん、可愛いもの好きの意識は前から伝わってたが、完全に暴走な雰囲気を今は止めれる気がしない。
と言うか。
良かったな、外見の成長のタイミングが合ってて。
子供のままので今の行動とかだったら、確実に大きなヌイグルミに狂乱する残念な感じだった筈。
残念な部分は正直言って変わってないが、少なくとも今は、やや下の妹を愛でる姉にも見えなくもなしで。
……女子会モードな中に仕事の話を持ち込む野暮が良い結果に繋がらないのは、前世で散々に経験したので放置の方向で。
しかし再会前までに必要な情報は書面化してくれてたので、俺も無駄な時間は過ごさないで助かる。
因みに、世話する対象が倍になって覇気漲らせてるのが侍女モード全開のシーディス。
主人と一緒にフィンカの着せ替えで遊んでいるとも言う。
俺に書類一式と業務連絡の作業全般の対応をしたのは、この貴族集団最下層のトニアス。
……お前、別に貴族の縁故って訳じゃ無いよな。
ただの雇われ冒険者だよな?
何、平民が下手に知ったら危険そうな情報の精査なんかやってんの。
……既に手遅れか? 南無南無。
最初は同室にて女子会の直ぐ隣で渡されたレポートを見てた……が、徐々に彼女等のテンションが上がって五月蠅いので別室に。
案内は勿論、トニアス。
他にも召使いは大量に居るのに、何故かトニアス。
ちょっと好みのメイドさんも見かけたんだが……流石に場所的に自重か。
と言うか、帰還したのは私塾に非ず。
ミラテル嬢の私邸という、エーデルワイス公爵家縁の土地の一角で。
最初は私塾に帰還の予定だったが、フィンカ関係の手続きが必要と途中で変更になった。
多分、今日は此方に逗留な流れだろう。
絶対、フィンカの抱き枕を堪能するといったミラテル嬢の堅い意思も漏れてるので。
俺越しの情報のみなのが、非常に我慢ならない案件だそうで御座います。
さて、時系列的に最初は枯れた遺跡の再調査の件。
遺跡に残る機能停止のための人員は選定され、今は現地へと移動中。
元々転移で飛んだミラテルの回収もした場所なので、移動中のトラブルも無いと思われ。
しかし、調査団と化した集団になったようで時間は掛かってる感じと。
安置されてた魔石の魔術回路の解析もできた連中なので、行ってみて役立たずな懸念も少ないようで。
まぁ、この件は経過待ちと。
次は邪教関係。
リフィス信仰自体は邪教じゃないが、現時点での勝ち組信仰に良いように利用された感も有るので、総じて密教のような状況。
つまり、余り新鮮な情報は集まっていない。
レポートに記載されてるのは、10年程前の勢力図等。
それによると、何かと秘密が多そうなサーブワン公爵との関連性も強まらない様子で。
むしろ、過激派やテロ活動の主流は全く別の地域に多い。
これで無関係と断じるには早計だが、あの祭壇が個人活動な印象もあって危険の早急性は低いとの判断のようで。
だからこの件も経過待ち。
サーブワン公爵自体の調査は……それ以前の段階。
まだまだ折衝状態と。
内容が内容だけあって、事前に渡せる情報が少なくて接点の取りようからして難しいらしい。
どうにも、意図的に現魔導国との勢力との接点を絶ってる感じもあって、ミラテル関係からのアプローチもし難い様子。
俺からすると不自然満載な内容なのだが。
両者合意での状況らしいのが、余計に気になる部分なのだが?
……うーむ。
やっぱり経過待ちか。
ただ俺の営業の成果か、魔道具の依頼の話は既に何件か届いてるとか。
こっちは対応が早すぎる。
向こうにしてみれば辺境域の村で披露しただけなのに、何其の情報収集力の高さってやつだ。
俺自身の体感でそう言った対応力を発揮しそうなのは……あの如何にも貴族と縁故の有りそうな婆さんか。
どうも世捨て人と言うよりは潜入調査官な立場と見た方が良いのかね?
……ああいった村の全てに配備されてる人員なのか、特定の村にしか居ない存在なのか?
最初の村には特に気になる存在も居なかったしなあ。
此方は自分でも確証の無い案件だから仕方無し。ただ、現地スパイの存在は確証有りと、レポートに追記はしとく。
最後は二つ目の遺跡にして、活動していた魔術回路の関連情報。
結果的に停止はさせた。だが其れによるミラテル本人への変化の兆候は、現時点では確認できず。
ミラテルのタイミング的にも、丁度保有魔力を解放したのも間が悪いってとこで。
集中的に魔力回復期間に入ってるから、その総量や質に変化が出たかの確認が難しいのだと。
……まぁ、仕方無いよな。
仕事の予定としては、本格的な行動前の事前情報集めだったし。
状況確認が主目的であり、状況の変化は出さない方針でもあったのだし。
後は備考として。
祭壇を造った容疑者っぽい対象は捜索中。
ただし、現地がサーブワン公爵領内なので極秘活動。
書面上でも対象人員の記載は無し。
俺への依頼とは別件の内容なんで、まぁ、ミラテル嬢が抱えた貴族活動の件の情報共有程度に。
その部分に含めてフィンカの件の情報も極少数ながら有り。
彼女の名乗りに関係する不穏の部分は特に無いが、フィンカの獣人種族としての活動域は書かれてたり。
やっぱり本題には関係無しなんだろうが、それで彼女の移動経路の想定くらいは取れるかもな感じだそうで。
……あれ?
……なんか、フィンカの帰還系の追加依頼の要項なんかが書かれてるのは……何故に。




