↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/85

51話

……さて、困った。

女関係は先延ばしのつもりだったのに、この事態。

しかも仕事女にも関わらず、もう完全に許容範囲外のやつ。

……せめて……、自分と同年代ならなあ。

こんな子供は流石に……、あ、そう言えば某少数部族での契約嫁、あれも当時自己申告での十代成人済みとか言ってたガキだったな。

もう露骨に嘘だし、確実に壊れそうだったしで何とか誤魔化したが。


確か一夫多妻の環境で俺の嫁になった以上、俺と再会しない限り一生処女で終わるんだろうが……、其処はもう面倒も見きれんし仕方ないよな。


と言うか、前世の俺は死んだんだし、新しい旦那を見つけてくれの精神で。

これも自己申告だが、家族とは霊的な繋がりで遠い異国でも心は通じてるとか言ってたし。

ならもう、俺の死も知ってるだろうの解釈で。


まあ、そんな縁が有ったなら、幾つか次の人生とかでの再会もあるさ。

そん時はまあ、また変な柵が無かったら夫婦になろうか。

今度はちゃんと相手にするさ。

……せめて、相性が合う条件さえクリアしてたなら。


……と言うか。

現実逃避も程々に、か。


個室は狭い。

元々寝るだけの部屋ってのも有るが、何よりベッドが大きい。

しかもこの世界の文化レベルを無視したくらいに頑丈で高性能な感じで。

腰を下ろした感触で分厚いマットレスの構造にも想像がつく。

コイルスプリングでの代物だよ。

少なくとも、仕様が完成したのは鉄素材の構造解析が20世紀の世界大戦後になってからの代物だ。それ以前の技術だとスプリングの耐久性に個体差が有りすぎて安心の品質とは言い難い。

そんな時代の高品質製は完全な職人芸の産物な訳で、一品で逸品。

俺の知る価格とは二桁以上価格が跳ね上がるもんとなる。


……この世界、工業機械の技術とは無縁だよ……な?

王侯貴族の贅沢品となればまだ話は判るが、こんな村の娼婦宿に置くようなもんじゃ無いだろう。

……此処の公爵って、何もんだ?

いや、そっちは関係無くて、単にこの土地の事情での、これか?


別段、この村が特別って雰囲気じゃなかったんだがなぁ。

宴会の様子は普通にモブ連中の戯れ言に終始してたし。

今の俺の中で最大の異質な存在たる、この獣人娘も行動は完全に小動物だし。


何か裏設定でも有るのかと真っ先に疑ったんだが、その当人がこのベッドの不思議構造に驚いて現在進行形でポンポンと跳ねている。

もう完璧に、トランポリンにはしゃぐ子供で。

こないなの相手に、どうやって頑張れと言うのか?

あの婆さんにこの現場見せて弁明を問いたい所存也。


遊びに夢中で表情だけは紅潮し、「はあはあ」と激しい動悸な様子なんで絶対できない選択だが。

見せたら確実に誤解の現場。

何故かあの婆さんなら「意外に勇者だね」とか感心されそうで余計に……。


と言うかなぁ。

跳ねるのに子供の感じで騒ぐなら、それはそれで対応も決まるから良いのだが。

このネコ科娘、何というか、常時ドヤな御尊顔であるからに。

どうも自分の中では随分とカッコイイ状況に写っているらしい。

猫って意外に空中機動が本領の動物だしなあ。30mの垂直落下でも何の支障も無しに着地するし。

もし落下の途中に足場とか有れば平然と活用して立体機動もかますだろう。

と言うか……大気中での落下速度のも限界が有るし、それならどんなに高度的な距離が空いても加速による慣性衝撃の発生にも限界が出る。

つまりその限界値を平然と乗り越えれるとしたら、事実上、成層圏から落下しても平気に着地するんじゃね?……な妄想も。


地球だと人の次の霊長類は猫だとマジに宣言してたやつも居る訳で、何気にあり得そうとも考えてみたり。

少なくとも、このネコ科娘のドヤ顔にはその説得力が有るようにも無いようにも。


まぁ、考える時間が取れる分には困らないので好きに遊ばせておく。

実は、ついさっきからミラテル経由の情報が増えて予定の変更に悩んでいたり。


昼間あたりから彼女からの接触が増えた理由でもある。

原因は……、あの廃墟での祭壇に有った異形のオブジェ。

俺から伝わったその存在の情報に、彼女は心当たりが有ったようで。

答えを簡潔にで言うと、あの姿の持つ神が本当に居たようだ。

しかも邪神に非ず。この世界の創世神話にも登場する主神格の一柱。

名は[産神リフィス]、一応は、この世界に生命の種を芽吹かせた偉大な存在との事。


詳細はとりあえず置いといて。

リフィスの創った命を元に、この世界の他の神々は様々な種族を創り、現在に至る。

神々とはいえリフィス以上に命の形の創造は無理だったようで、やった事は自分の都合に合うように、必要な部分以外を削ったと言うこと。

逆に言えば、その削った部分を繋いでいけばリフィスの望んだ命の形になるらしい。


……其処まで聞いて想像してしまった。

あのオブジェの基本は、様々な命を縫合して一つにしたもんだ。


人間も含めて現存する種族は[源]の姿から何かしら欠いた存在。

そして、肝心な事にリフィスの命の姿は今の時代には失われた姿と言う事で。

ミラテルの言う内容によると、信仰したものが想像した原初の姿の例、その一つとして、あれに似た物の記録が存在してるのだそう。


そして、リフィスを奉じる信者の一派には、完璧な姿の命を欠けさせ模倣した他の神々を蔑み排他するのもいるのだそうだ。


邪神では無いが、邪教化した悪質な連中は内包する神。

それがリフィス信仰の現在の姿のようで。


……また面倒なもんを知ってしまったと悩む俺。


更に追加情報を言うと、見た目の姿が欠けた事に注目する信者にとっては逆に部位が多い程に畏敬の対象とする傾向が有るそうで。

例えば、人間の外見にもう一対、無意味に耳を生やしていたり。

尻から尻尾とか生えてると尚のこと喜ばしいそうで。

しかも、そんな身体器官が無駄じゃなく人間以上に高い機能を発揮とかしたらもう、[生き神]レベルの崇拝対象なんじゃな感じとか。


……もう、この獣人娘。

完っ璧に関係者に確定なんじゃね?


そうとしか思えない巡り合わせで御座いますよ。


実のとこ、婆さんと対面した頃から脳内に「不潔です不潔です」のご感想を頂いてた俺なのだが、今は状況が逆転して「もっと可愛い猫耳を視界に入れるように」な要求すら出てる始末。

いや、可愛い部分には同意しとくが、その神様関連での情報が要るからの話じゃないんかい?

可能なら、この子が今此処に居る理由とか問うた方が建設的なんじゃないかな?


……俺が其処に突っ込んでどうするの精神。


まぁ、無理なんだけど。


この子、実は人語を理解してねーんだ。

家族語って言うか、其れなりに接した時間の長い婆さんの言う事は雰囲気で理解してるらしい。しかし初対面の俺とは無理。

婆さんの真似っぽくした行動でも余り反応はしてくれない。

それ故の、この遊ぶ様子でも有るんだが。

一応、自分の仕事に関する仕草は理解してるっぽいが。……其処は俺の方が遠慮したい。

痩せ我慢には非ず。俺の女性観の拘りが故にのもんで。

あと10年して出直して来いとは、割と本心から言える。


……ああ、ミラテルさんミラテルさん。

貴女の実年齢がその範疇ですんで。「ちっちゃいですしね」と特定部位に関心持ちながら黒い炎の気力を上げないように。

眼のハイライトを消すような心象の伝達は勘弁してつかーさい。

割と本気で怖いから。


言語での意思疎通が無理となると、今活用中の魔道具が直ぐ連想できる訳で。

……こりゃ、帰還後にする予定がまた増えた感じかね。

と言うか、この子を連れて帰るって選択も無いから。

往復に使う日数の予定も組んどかないとだなぁ。

今後は時間的な面倒を避けるとすると、いっそ師匠の結界魔術の方が優先か。

何処でも必要な魔道具が創造できる環境は、後々重要のような感じだし。



そして気づけば。

ネコ科娘はすっかり就寝モードになっていた。


これならもう気にせずに寝ても良いだろう。

女でも子供を抱き枕にする程度はセーフだよな。

確かに婆さんの言ったとおりに空気の冷えは有るようだし。

その割に掛け布団と呼べる物はシーツ生地っぽい薄さだし。


此処は互いの体温で補間しあうのが正しいと思う訳で。

と言うか、何よりこの子の掴んだ俺の服の端。離してくれる様子も無い。

流石は獣人の怪力とでも言うのか、服を裂かずに離せる自信が欠片も無いぞ。


ぐぅ……。

と言うか、掴まれた体勢的に俺は俯せじゃないと寝るのが苦しい。

いやこれもある意味苦しいが。

仕方なしに寝る体勢へ。


残念ながら抱き枕の実行は不可能となったが、俺の脇腹にぴったりと貼り付く子供の体温は其れなりにいい行火としては機能した。


むしろ……生地を通して腹の地肌に貫通してくる寝息の熱さは本当に行火のようで。

正に、火傷するかと勘違いしそうなくらいのもんだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。