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50話

夕方、土方仕事から帰還した人員との顔合わせも含めて、改めて俺の紹介がなされる。

客人の到来が宴会イベント発生の起点になるのは何処でも同じで、その晩は俺を主役……または酒の肴な雰囲気で小宴会。

食材の大半は……、若牛の処置と交換な扱いで俺が提供する感じに。


なんでも初見の相手と対するのに狩人が狩った獲物を何処かに隠しておくのは当然の処置だそうで、「宴会用の獲物は何処かね?」の話からそんな偽装が都合良く成立した。

と言うか。

俺の肉への関心の強さからか、そっち系の仕事の関係者と思われたらしい。

肉の調達を頼まれてて自分で狩るのと並行し、仕入れの代行もしてる風にって感じな勘違いか。

そしてそんな大ボラに乗っかり、ちょっと森に戻ってから例の手作り簡易轌の製造も含んでの経緯後に、食材の提供となる。


卸したのはカモシカ擬きのやつ。

肉買い取りの話に乗せてこの付近で狩られるのの情報も仕入れた。

流石は鹿の系統、どんな地域にでも蔓延る生態のようで。

増えすぎた鹿の如く、植物の天敵みたいな扱いなので耕作地には喜ばれた。

森林部に予想外の破壊を出したり村の中に湧いて微妙な出来の野菜を荒らしたり。実に見事な魔物っぷり。



腹もくちて酒も進めば口も軽くなる。

幸いにも人里離れた村の体でも人員は各地から寄せ集めのもんで、近隣地域とやや遠方の雑多な情報が得られると踏んだし。

そんな予想は大体当たった。


地味な肉体労働が基本なので大半は独身の男、しかも一箇所を回ってから別の地域へと移動って強者も半数以上の規模で普通に居た。

中には所帯を持つのと無縁な別の意味で貴族のやつもいて、そういったのは生涯、牛達と一緒に領内を巡回するのだそうで。

ううむ、中々に剛毅は遊牧生活。


問題は公爵領の中心域の話が無かった事。

まぁ、地方巡回ばかりな連中が都会の話に疎いのも当然なので仕方なし。

そのあたりの話となると歓楽施設のお姉さん方が詳しいそうだが、同様に人材の半分以上は各地を転戦する猛者だったりするので。

対象外に当たったら諦めろの精神しかない。

まぁ、それ以前にそんな話をする状況は完全に閨(ねや)の時なので。しかもまぁ、多分事後確定のあたり。

気づけば……そろそろこの世界で済ましといても良い時期とも思うが、それは対面した当人が俺的に当たりかどうかの話でもあるし。

別に美人とかの拘りは無いが……性格は大事か。

こういった現場で働くのだから気難しいド素人って事も無いだろうが、どうも日本基準の働くお嬢さんな感覚が残っていると面倒さが大きい。

本当に当たりの人員が少ないからねえ。

昼間はOLでの副業ってのは本当にハズレだし。


一夜の相手の男の記憶を全部ひっくるめて墓まで持ってくのが、夜のプロの女の条件なんだがな。

じゃないと、こっちも使い捨ての道具としてしか相手できんし。

一言も重要な情報が漏らせんとか、最悪、相手した後の処分も含む案件になるから本当に面倒い。


と言う事で、今回もパスだ。

せめて仕事で動いてない時限定って感じにしとこう。

特に例のカルトな祭壇は此処が最も近いのだし。

信仰関係は何時、誰がその末端で動いてるかも判断できんから仕方が無い。


行商関係者の振りする序でに、肉のタレを久しぶりに披露する。

オッサンの年代が多いせいか、俺の好みに通じる連中を多数発見。

ニンニク醤油で醸された肉の旨味に悶絶すると良い。

そしてその誘惑に負けて過去の黒い歴史も含む情報を暴露するが良い。

なに、同じ世代のよしみだ。絶対必要な状況にならん限り黙秘する条件は付けてやる。


……ちっ。

迂闊な馬鹿男特有な失敗談しかねーのかよ。

そんなもん、吹聴しても特に得する状況が無いわ。

浮気? それ彼女居る前提の話だよな?

オッサンにしか見えない系の話なら要らんぞ。

それって洒落にならん方向で引かれるから。母性本能は間違っても刺激せんからな。


……流石は独身貴族共と言うべきか。

話題が露骨に、妄想多めの物理嫁に偏る。

挙げ句に、俺に「嫁は商ってないのか?」なダメな要求すら出てきた。

人身売買とかしてねーよ。

さっきまで[肉の業者]扱いしてた後のそれって余計に怖いわ。


宴もたけなわな頃合いとなると、しけ込む類いは何処かに消えて今夜は独り決定の連中ばかりに。

完全に理想で幻想の嫁談義の場と化したので、状況的にはもうお開き決定。

絡むのが五月蠅いので酒瓶何本かを投下し、泥酔限界の時間を早めた。

無駄に魔王的な創造を駆使した芋原料のウィスキー、岩の上に三年な人物の名を冠した尊称付きの……再現品を堪能し酩酊するがいい。


……ちょっと、余りにも哀れな連中と思ったりなんかしてないんだからね。


さて、今日の俺の寝床は何処かいな……?


え、その指さす方向は……例の施設っすか。

いや今夜は遠慮する精神だったんだがなあ。

えー、と言うか専門の宿屋が無いとか。

行商連中とかどうしてたんよ。

……ああ、皆お喜びだったと。

こんな環境で大きく物や金を動かすから、村内では細やかな英雄って扱いな訳ね。



結局、押し切られた。

と言うか、既に満室近いのだけど。


施設管理の纏め役の婆さんの話からして、今夜は住人が飲む方の稼ぎが悪くてな嫌みつき。

すんませんなぁ。

と言うか、現物提供での解体の直ぐ後での血塗れの宴だったんだが、それでも客として入れたのかね?

流石に草原域だと近場の水場で汚れを落とすのに限界あったんだが。

用水路の類い、此処には最低限しか引いてない感じで。

居住区域が地盤を弱くする懸念の仕様のようで。


けどまぁ、土汚れ前提の環境なので施設内の風呂が有るのだとか。

基本は生活用水として引いた水のプールから浴びての埃落とし。その後にサウナ小屋で汗流して、また水被ってお仕舞い、な感じで。

……まぁ、費用対効果は良い感じ?

少なくとも湯船に熱い湯を保つよりは経済的だろう。


先客はほぼ、サウナも終えて個室に移動済み。

残る人員は残念な事に選択する余地も無し。

ふむ、少々相手のプライドを傷つける結果かもだが、「貴女は好みじゃないので」で独り個室に籠もるのも有りか。

でもまあ、残り物の相手ならそんな選択も有るよな。

あるい意味、客の要望が叶わん訳だし。


それでも斡旋役の婆さんとしては紹介せん訳にも行かないようで。

とりあえず、風呂が終わったらの面会はするようで。


しかし、正直な感想を言わせてもらえば、その段取りは本当に要ったのかと問いたい気分のもんだった。

肝心の余り物。

これ絶対、この世界でも対象外のやつだから。


先ずは見た目の年代。

女であっても女性では無い。[女の子]と区別するやつだ。

確かに外見は可愛い。

茶色混じりのボブな黒髪の少女は活発系の色黒で、各所の出っ張りは皆無な上に脂肪より筋肉の張りを感じる部分が潔い。

顔のパーツも大きく、つり眼がちな表情のせいで野性味の演出。

単に性別が女ってだけで、色気とは無縁過ぎる雰囲気だったり。


そして何より、そんな野性味を更に強調する付属付き。


通常の位置にある人の耳の其の上にもう一対、ネコ科特有の三角なのが存在し、意思に関係せずヒョコヒョコと動いてたり。

俺に正面を向いてるせいで付け根を直に確認はできないが、頻繁に上下左右に揺れて、その先端に俺の視線の注目を誘わせてる何かは、絶対尻尾だ。

つまり、獣人。

よく観察し直せば、髪の色だって光りの加減の違いじゃなく、模様だ。

茶色の斑点模様が確実に有る。

と言う事は、恐らくはネコ科でも豹に近い方のもんなんだろう。

野性味?

獰猛性と言い換えよう。


……無関心って雰囲気で俺を視る様子も……、言い換えると獲物かどうかの確認をしてるようにも見えるな。

口内で小さく「カカカ」とか鳴いてないか?

あれ確か、獲物を前に興奮してる反応だよな。


婆さんに視線を向ける。

反らしもしねえ。

……っく、流石は年の功ってやつか。

小娘の拘る部分を「長い人生の中じゃなんて無いこと」の一言で完封するやつか。


しかもトドメとばかりに、「使う使わないで言うなら使えるし、特に問題も無いよ」と来た。

しかも「使う気が無いなら行火(アンカ)代わりにでもしな。此処の夜は結構冷えるよ」のダメ押し。

どうやら拒否の方向は無いようで。


当人も方も小首を傾け完全に俺をロックオンのようで。

ついっと寄って来たと思ったら完全に精神的な死角をとられ、片腕を抱き込まれて脇腹をクンカクンカと嗅がれる始末。


……まぁ、この反応からして印象は良かったようで。


そして、案外力強い牽引力に負けたまま、個室の一つへと案内される俺だった。



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