43話
久し振りの戦闘を意識した冒険者活動。
改めて武装系と防具の確認。
前回の大きな戦闘はルツボンになるが、あれは基本的に魔術での対応だったし、トドメはチートの除草剤。
物理の対応は全くしてない感じ。
此処までの旅程で基本は弓で射るもの。採集時にも似たり寄ったり。
遥か遠方からの索敵の理不尽さよ……だ。
何時もどおりの[激辛の矢]のストックは64本。
当れば一撃で瀕死にするが、同時に大暴れの悶絶もあるので確実に全損するのが問題。
買い足すのは安いのだが、流石に個人で一度に三桁在庫を買おうとすると不思議がられるし。
小分けに買うのが意外と面倒。
……あ、そう言えば。
濃縮塩漬け肉の味付けを[収納]内でした時は魔王種の反応が無かったのを思い出した。もしかすると、結界内での効果と同じか?
適当に在庫素材使って矢の創造をしてみるか……、止めよ。
あの結界機能も結構変な制限も有るっぽいし。
似たような事ができても、結果が同じかは未知数ってのが怖い。
とりあえず、矢の買い足しをリストに。
予算に余裕もできたし、防具の予備も買っておこう。
いまだにトロールの一撃で防具全損はトラウマだ。
結果的に着ても着なくても問題無いあたりに気分が微妙だが……、普段場で冒険とか世間の目が怖い怖い。
……ああ、折角の魔導国だ。
魔術が仕込まれた特注品とか探してみようか。
たぶん、触れば解析できそうだし(ゲス顔)。
それで無理でも、試着と称して一度収納に入れたら絶対解析できるし(かなり本気)。
私塾で出る前に食事の準備はしておく。
昨日の小麦粉を利用した乾式のショートパスタ(フジッリ)を創造。
ネジ棒状の物でどんなソースと合わせても良い感じに染まる汎用型バスタ代表。
ソースは弱火で温めれば良い様に、真空封印した寸胴鍋数個に入れて置いてある。
昨夜のホワイトソースの魅力に嵌ったガキ共なので、二~三日は大丈夫だろう。
パンの在庫も大丈夫だろうが、一応贔屓にしてるパン屋の地図も置いといた。流石にその程度の御使いはできるだろう。払いは師匠宛てのツケ払いだし。
そもそも、俺が担当する前からやってた段取りだろうし。
……それでも何故か、私塾を出た直後に「オカンが実家に帰る」風な視線を感じる不思議。
主婦じゃなくて主夫なんだがなっ。
予定したルートをこなし準備をしていく。
冒険者ギルドの支部が在るせいか、関係店の利用感覚もルビアルテとそう変わらない。
そして残念な事に、いわゆる[魔法の武器]な無いようで。
正確には、完全受注生産な。俺がミンサーを頼んだようにな段取りが必須で、馬鹿高く時間もかかる代物でした。
故に今回は見送り。サンプル品すら無いんじゃパチモンも創れん。
そして気付く。
……何故俺は……、食材の買い出しに行動をシフトしてるのか?
恐るべし主婦業。
既に習性化してたのか、ついつい、旬の品を目で追ってしまう。
当然、買ってしまうし。
モロコシっぽいコーンと、とうとうトマトっぽいやつをゲット。
パスタを創ったので是非欲しかった。
挽肉とタマネギは既に在る。これで御当地素材のミートソースができる算段。
さて早速、試作を始めて……って、違うわ。
……実にベタなボケを。
恐るべし主婦業っ。
自分でも抗いがたしな本能と化したかぁ……。
予想外の障害に遭いつつ装備変更を完了。
既存の物の新品を加えるのに合わせ、今回は[収納]前提での大振りの盾も用意しておいた。
ルツボンみたいな怪獣サイズの相手とか、回避だけじゃ絶対対応無理だし。
戦闘中の致命的な装備破損は、可能な限り避けたいし。
後は、鋳潰す前提の廃鋼材を格安で入手。
万が一の場合、これを素材にして武装の現地調達をの精神。
ミラテルからの経験談として多少の情報は得た。
実のとこ、その内容が冒険者ギルドに記録されてる一般的な活動内容と違い過ぎるのがな。地味に気になる。
ゲームっぽく言えばイベント戦闘中心なのか。
この地方の基本戦術が役に立たなそうなので、予防線を何本も用意しときたい。
さて、活動開始。
最初の移動先は既にミラテルが探索成功させたという場所。
そのために魔力によるMAPへの反応は無し。代わりに地図を用意して貰っている。
徒歩なら片道でも二日。ミラテルは転移で単身で跳んだ後、シーディスに意思を送って馬車での迎えを頼んだそうだ。
なる程、中々に便利な使い方で。
今回は要所要所でミラテルに情報の補間をしてもらう予定。
どこまで記憶を残しているかは現地に着いてからの話。流石に目的の位置の事くらいは覚えていると願いたい。
さて、徒歩で二日の予定ね……。
俺の場合はどうだろう?
記録では半年近く前らしいが、街道はともかく途中からは平原を馬車で目的地まで往復したそうで。
轍の痕跡も僅かに残っているかも……な話を頼りに。
全力疾走、往ってみようか。
……現着。
凡そ三時間の行程。
……疲れた。精神的に。
速度的にはバイクをとばすに近いんだが、地形の都合で時折ハイジャンプな足運びに苦労した。
MAPでの俯瞰視点では平面表示だからなぁ。
主観視点での帰伏に富み過ぎたオフロードはキツイキツイ。
整備された街道の有り難さが良く解る一件でした。
さて、今回の探索地の外見はエスニックな廃寺院風の遺跡。
潜む魔物はネズミサイズのイモリっぽい物で、名は[シーラ]のみ。
基本は大気中の魔力を吸うか、昆虫類を獲るだけで人間にはほぼ無害。
ただし、あまり近寄ると跳んで貼り付かれ、地肌を舐める行為で魔力を吸われる。
ある意味服越しに噛みついて来るヒルよりも安全な相手だが、地肌に直って部分がミラテルには苦手だったようで。
……おっと、それ以上は乙女の尊厳の都合で聞かない精神で。
俺、紳士。ちゃんと空気読むから。
地上階は中心部に礼拝の間と、その奥に当時の住人の居住区が在るだけ。
問題の場所は居住区の一室から地下へと続く。
地上が石組と彫刻で華美一歩手前なデザインなのに対し、地下は随分と殺風景で。
しかし観察すると、どうも巨岩を掘り抜いた物で労力が物凄い。
しかも壁面は鏡面仕様ってぐらい、丁寧に磨かれてるし。
地下に限って言えば遺跡の雰囲気は欠片も無い。まだまだ現役を張れる堅牢さ。
床にうっすらと残る小さな足跡はミラテルの物だろう。
方向は地上に向けての片道分。転移で地下に直接出たそうだし、言葉どおりの痕跡。
一応、(そうです、覚えてます)の同意も今もらってる。
同様に、地下に魔物の気配は皆無だったとの伝言。
……つまり、シーラに首筋舐められて悲鳴上げたのは地上限定って事で。
微かに下り傾斜の一本道を進む事数分。問題の、地下祭壇らしき場所を確認。
室内は暗いが、俺が外に出る時は昼間も起動させてる魔物避けのカンテラのお陰で問題無し。
[浄化]っぽい魔術が作動しっ放しなのか、空気の淀んでる気配も無し。
目的地となる祭壇の確認もできた。
八畳間程度の正方形の部屋。
中心には俺の腰の高さにある、大理石風の円柱の台座。
此処に魔術の起点っぽい魔石が安置してあったそうだ。
今は回収され、公爵家所縁の施設で解析中。
……俺の感想としては、何の警戒もせんと回収すんなっ、な感じで。
如何にも駄犬・インディな冒険の舞台セットだよ。罠の警戒しようよっ、の雰囲気。
……怖いわぁ、お嬢様。
岩石をくり抜いたらしき室内。真っ平らな壁面に隠し通路らしき物も無し。
念のため[収納]から出した物干し竿(純粋に洗濯用)を手に、遠くから叩いての確認も。ガリガリと壁面をずっても見えない凹凸の感触は無かったと。
……そうなると……、残る可能性は、台座か。
室内は一枚岩。しかし台座だけは別の石製。
単に調度品とも言えるが、ちょっと台座のサイズかね、気になるわ。
なんせ、軽くマンホールかくらいに大きいから。
其処に手にできる大きさの魔石一個とか、随分と不自然。
そして案の定、これが更に地下へと続く蓋だった。
何の仕掛けって訳でなく、力任せに押したり引いたりしたら一定方向に横滑りしたよ。
ポッカリと現れた、梯子付きの縦穴。
どうやら初っ端から追加情報に有り付けるようでゴザンスね。
2019年(令和元年)。本年度最後の投稿です。
お読みくださった皆様に感謝を。
年明けに再び読まれる事に期待を。
それでは皆さま、良い御年を。




