20話
異世界生活を始めてのこの数ヶ月、少し違和感を感じてたのが性欲関係。
自覚してみて自分の女性遍歴を思い出したが、特に特殊な性癖だったという記憶は無い。
ただ平均的な日本人としはどうだろあなぁ……な疑問もあったり。
純粋に恋愛から発展したもんも有ったが、比率としてはビジネスの流れが多かったってのが特殊なんだよね。
日本の仕事への姿勢には完全に反するだろう。
でも別の国では、女を抱くのが新規契約の必須条件とか有るんだよね。
いわゆる「血の契約」。家族という繋がりを持つ事が外の人間との仕事関係の必須条件とか。
正直のとこ、前世の現地嫁は記憶にあるだけでも六人は居た。
地域も人種もバラバラ、薄情だが初夜以降会って無いのも居るんで顔を忘れてる以前に覚えていないのもいる。何時何時の仕事上の誰某って感じでの記憶はしてるけど。
子供は何人居るのかねぇ、俺が死んでも遺産が行く事は無いんだろうが。
と言うか、そもそも日本の記録上では俺は未婚だが。
こんな事実を他人が知ったら大体が下衆野郎の評価を下すんだろうが、そんな成果で国内の燃料事情の数パーセントを維持確保していると知ったらどう判断するのだろうか?
綺麗事で国が回っていると本気で信じている連中に言ってみたい事実の一つ。
もう関係ない過去ではあるが。
話を戻して、と。
そんな感じで女性に妙な夢は持たない精神なので、タイミングさえ合えば「身持ちを大事に」とヘタれる事は無い俺なのだが、この世界では出会いが有ってもどうしても関係に進む一歩に躊躇していた。
この世界はセクハラでの取り締まりが山盛りな環境では無い。男が馬鹿で無茶なアプローチをしても、女から平手打ち貰ったら失敗で、周囲から笑われる程度の大らかさだ。
そんな背景の中、俺は隣を歩くマリアンとジナにちゃんと女を感じている。
俺の観察眼では誘えば抱ける感じの気質だろうな解答も出てるし。
でも其の気に至れない。
……やっぱり、これもチートなのかね?
危機感値とか自制力がチートで働いて感情を制御してとか。
そういう関係を生むのがヤバい理由とか有るんだろうか?
その手の常識とかも仕入れないとなぁと意識しとこうか。
さて、登山行程を開始してからの彼女等は宣言通りに立派なガイドに徹している。
徒歩移動は俺とマリアン、荷馬車を操ってはジナ。昨日麓から確認したように徒歩組は階段での直線ルートで。荷馬車はジグザグ傾斜ルートで。行程的には俺とマリアンが先行し、時折ジナの到着を待つ感じ。
この移動式は彼女達の狩猟活動を俺が体験してるからだ。マリアンの移動は同時に索敵と魔物の露払いを兼ねていて、獲った獲物はジナの荷車に纏める形になるって訳だ。
俺はマリアンに着き従って、この山岳地域の魔物の生態を実地指導される形。
実のところMAPの反応で索敵に関しては俺の方が先に感知できてはいる。が、狩猟行動に関しては完全にマリアンに負けている……いや、比べるのも恥ずかしいレベルで師匠の領域。
マリアンの主武器も弓なんで、もうここ三ヶ月で築いた俺のプライドなど全壊だわー。
また罠での狩猟法も教えられる。
山中に獣道が生まれる理由で、野生動物や魔物はある程度決まったルートを巡回する形で暮している。その位置に罠を設置すれば、効率の良い狩りになる道理で。
前もって彼女等の仕掛けた罠の一つに、イノシシの魔物が捕えられていた。[括り罠]というやつで、バネ仕掛け付きのロープの輪に四肢や頭部を引っ掛けて拘束するやつ。体力の無い相手ならそれだけで衰弱死させれるし、強靭なやつでも移動を制限させれるので簡単にトドメを刺せる。
イノシシ型、ロックボアと言うそれも後ろ脚が固定された状態で、マリアンの射撃に脳天を貫かれての一撃で終わった。
俺がこの世界で最初に用意した弱めの威力の弓と同型なのに、使い手が違うだけでこうも威力が変わるかな一撃だった。
……泣ける!
仕留めた獲物を置く荷車はジナの特性品。なんと魔道具だそうな。
ジナの魔力を燃料に荷車内の温度が氷温になる。つまりは冷凍庫だ。それで獲物の長期保存とするそうで。
完全に移動狩り仕様のそれでした。
マリアンの行動的に職能は狩人かレンジャー、ジナは属性魔術士との事。
とは言え、冒険者としてのジョブとかな区別にはならないそうだ。冒険者はあくまで冒険者。チームや徒党を組む形でも他人に依存する要素は最低限との事。単身である程度の活動ができないやつは、ある日突然切り捨てられても自業自得との注意を貰う。
冒険者歴三ヶ月の自己申告でマリアンの指導精神に火が点いたのか、山中行動の一歩一歩に補正を貰う。中々に熱血。弓を射る姿勢も細かく修正されて、全身に抱きつかれる感じなので正直、役得。
娘さんは柔こいのぅの精神に。
これがジナならもっとボリュームが……げふんげふん、俺の賢者モード、手を抜かないように。
……まぁ、俺の矢は例の処理済みなので、命中後の魔物の悲哀にマリアンからのドン引き貰うまでは1セットなんだが。
射る対象の魔物は空飛ぶ魔物として聞いていたやつ。名称は[スモッグス]。外見はモモンガだ。サイズは座布団程も有るが。
正直、見た目は非常に愛らしい。だが正体は中々に凶悪。
相手に直接外傷を与える能力は皆無だが、隠密性と斬撃打撃への物理耐性が半端無い。その特性を活かして冒険者や旅人の顔面に貼りついて来る。山中で、足下の怪しい場所でだ。
つまり目隠しで滑落させようとしてくるのである。
初見の相手は大概引っ掛かる。落ちた後に死ななかったら後の教訓にという感じ。難易度の高い相手としか言えないわ。
体毛の切断耐性が高過ぎで、斬るではなく刺すくらいでしか刃物は効かない。しかし貼り付かれた後での其れは自傷も伴う行為ってとこが本当に質が悪い。場所も顔面だしな。
だから最善の対処は、そうなる前の先手必勝しかなくなる訳だ。
スモッグスの隠密性を抜けて先に発見する技能は、MAP機能の無いマリアンの能力が如何に高いのかを実感した。
いやだって、其処に居ると解ってる俺も肉眼で見分けれてないから。
さて、そんな熱血指導付きなので初日の移動距離は全然進まない。
二つある山の最初の方、山の中腹に設けられた分かれ道で、その日の夜営の判断を決める事になった。
一つは安全策でその山の山頂近くでキャンプの設営。もう一つは次の山の山頂に移動しての夜間設営。暗い環境での設営になるので後者は当然危険も大きい。
もっとも麓の同じように避難用の山小屋が幾つかは有るそうだが。
まぁ、選択肢は用意されたが選ぶのは前者一択だろう。
そもそも日が落ちたら荷馬車が動かなくなるし。
そう言ったら「おお、正解」との返事。どうやらこれも先輩からの指導だったらしい。
分かれ道を山頂への登りに選び、再びレクチャー付きの狩猟実習へ。山ってことで移動距離は短くなり狩りにも慣れ始めたので手間取らなくなりで到着は30分も掛からずに済んだ。
……まぁ、日没までの時間も無いが。
山頂の小屋は麓の半分も無いが俺達の他には誰も居ないようなので気は楽。
前回と同じように、使う小屋は彼女らで一つ、俺が単独で一つ。少し違うのは荷馬車も一緒なサイズが無い事で其れ用のもう一つ小屋を使う。
俺が飯の用意をする間に彼女等は荷馬車の搬入と自分達の小屋の準備へ。後は念のためと周辺に罠を仕掛けてくるそうだ。
キャンプ飯は簡易で短時間での調理が基本だが、それでも火起こしからなら其れなりに時間を使う。
労力の差とかは無視してそういった組み分けをしてでも、暖かい飯は欲するもんという訳で。
……と言っても、俺の飯は[収納]から出すだけで済むんでちょっと罪悪感が……。
少し色を付けとくか。
偽カレールーと漬けパンにもう一品。今日の狩猟の途中での水分補給という事で、とある木から樹液を採取した。
素材名は特に無し。山で活動する者の水筒って感じ。
成分としてはメープルシロップに近いと思う。水気が多くて味と言える程にも感じれ無いが、チートの味覚は甘味成分が有る事は解らせてくれる。
例によって使い捨て上等の素焼き鍋を一つ出し、煮詰めならが乾燥もかける事で短時間の濃度アップを。それでも味が薄いのは[万色の調味能]で調整する。
こうして出来たシロップをかけるのは今朝も食ったリンゴ風の果実。
八分割し種を避けウサギさんカットも施して火の傍にて加熱。ちょっとでも酸味が飛べばいい感じで。形が崩れない程度に熱が通ったら甘味はシロップでの補強である。
女には甘味の精神のつもりで出したら、またも絶叫二重奏を貰いました。




