第4話 エルフ、森を焼く
「いやーっはっは。BBQは森ごと焼くに限るな!」
燃え盛る森を前にエルフ達は串を片手に談笑した。
環境破壊への罪悪感など皆無である。外道である。
「それとオークも!」
大皿には野党のオークが数人分盛り付けられていた。
素材の味を活かし、塩と1種のスパイスのみの味付けで。
「頭っ、頭っ、頭よこせっ!」「おまっ、素手やめろよー!」「蹄もーらいっ!」
エルフ衆はついばむようにオーク達を食らった。
他の動物の肉はそっちのけである。
「なんかすっげーガッツいてるな、みんな」
「そりゃ族長、久々の森焼きだも~ん」
「あれ、さっき森焼いたばっかじゃなかった?」
「前の森は二年前に焼いたよ」
「マ!? はぇ〜時間経過はっやー」
裸の付き合いならぬ焼肉の付き合い。
族長と側近は肉を食う間、会話で上下関係は消失していた。
「つーかお前、一桁年前のことなのによく分かったな?」
「最近どうしてか、前より体感時間が伸びた気がしてさ……」
「なんでだろな。俺ら栄養不足で体感時間遅かったんじゃね?」
「まあ、何千年生きる設計の体だしな」
――焼肉は彼らの食生活だけでなく、身体にまで影響を及ぼしていた。
「これもバーベキューのおかげだな! 美味くて力になって良い事づくめ!」
「肉汁最高っ! ドーパミン溢れてとっまンねぇ!」
「ドパエルっ! ドパエルっ!」
はしゃぐ側近は両手の串をカチカチ叩いて鳴らす。
筋骨隆々になった腕で振った串は火花を散らした。
「……つーか俺ら、体つきゴツくなってない?」
「たしかに妙にパワーが漲るっていうか、筋肉が呼吸してる感じがするっていうか……」
「これが……焼肉の魔力なのか!」
人族の学者いわく、人は火を扱い始めてから知能が急速に発達したという。
食材を焼いて消化しやすい状態にすることで、消化器官の負担を軽減。
結果、余剰エネルギーを脳に回したことで進化したという説だ。
その変化はエルフも例外ではなかった。
「つまりエルフも同じく進化を……?」
「いや、エルフだからこそじゃねえの?」
「と、言うと?」
「俺達、元は食事もあんまり取らなかったのに長命種じゃん? 知能だって人族の平均値を凌駕している」
ごく一部の魔術師や高知能個体を除けば、平均的にエルフ族の知能は高い。
「俺らが森に行く前はエルフが一番魔術に強かったってよ。まあそっちは別の一族だったらしいけど」
「魔術とかバリバリ使ってたエルフ族って結局森に来なかったんだっけ?」
「噂じゃ絶滅したとか、混血や変異で遺伝子がだいぶ変わったとか……」
「族長詳しいじゃん。なんでンな知ってんの?」
「前任族長の爺さんが言ってたよ。ほら、寿命で樹と同化した――――」
「それ、この前燃えてんじゃんか」
「……この話忘れよう!」
焼肉を食べた拍子に先祖の燃えカスを食べたかもしれない……などという思考はオークの小骨と共に放り投げた。
「つまり俺らは消化能力も頭も良いって話!」
「じゃあ焼肉を食えば食うほど賢くなるってことか!」
「そういうことかもな! ガッハハハハハ」
――彼らは知らなかった。
徐々に自分達が、化け物に変わってきているという事実に。




