第2話 エルフ、気付く
「おーい、こっちに焼きコーンくれ~」
「こっちにもっと野草追加! ついでに肉もー!」
「オラよっ、迷いドラゴンもあったから切り出してきた」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ質量やっべぇ!?」
森はかつてない活気に満ちていた。燃えながら。
焼けていく森のすぐそばでエルフ達は骨付き肉を掲げる。
「ある限り肉食うぞオラァァァァァァァ!!」
『にくぅぅぅぅゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
「人族はこの焼肉スタイルをバーベキューと言うらしい――今日からエルフの主食はバーベキューだ!!」
『B・B・Q! B・B・Q!』
肉を取り囲み、肉を頬張り、肉に泣く。
草木のような性格から一変し、エルフ達の気分は高揚する。
酒の味を覚えた冒険者やギルド立大生に似た騒ぎ方だ。
「な、なんて野蛮な……」
「気にするな。バーベキューとは豪快さこそ肝らひい」
「しかし、いくら何でも手掴みは」
「肉が冷めるより良いだろ?」
「正論だな。認可! ガハハハハハ!」
知性、温厚さ、穏やかさを捨て去ったワイルドな食事。
その賑わいはこの数千年を焼き焦がすほどの愉悦に溢れた。
「エルフのバーベキュー、永久なれッ――!」
森の全てが灰燼に帰すまで、エルフ達のバーベキューは続いた。
※
「諸君! 今宵の宴でバーベキューの魅力は分かってくれたと思う!」
バーベキュー終了と同時に、族長はエルフ一同へ告げた。
「ということで、我々は例の計画を実行しようと思う」
族長はオークの顔が彫られた石板を指さす。
「タワダン建設目的での住処の焼き討ち。我々はぶっちゃけこれで良かったが、この一件は明らかな侵略行為だ」
ずっと彼は、彼らはオークの事で頭がいっぱいだった。
当然、憎しみや怒りではない。
「大義名分ある! 報復理由ある! つまり、戦争を建前にバーベキューが開催できるッ!!」
『うおおおおぉぉぉぉォォォォォォォォ!?』
「さあ、前代未聞の大バーベキューに備えよう!!」
血走った眼を開いた長は、涎を垂らして宣言する。
「――あのオーク達の味を、堪能しようじゃないか」
エルフたちは初めて、その血が滾る感覚を覚えた。




