01-19
「異形度を下げる方法は、スキルしか無いんですか?」
ローバを待つ間、バーバラさんに聞いてみる。
答えは否だった。
「いんや、そんなことは無いの。それが一般的だ、と言うだけじゃ」
「なるほど。因みに、他の方法とは、……」
「ただいまー!」
疑問を質問する前に、ローバが帰ってくる。
その手には液体の入った、試験管の様な細長いガラス瓶を持っていた。
「ローバ。人が話している間は黙って聞く!いいね?」
「……はーい」
今日だけでどれだけ注意されるのだろうか。
これが日常的に繰り返されていると考えると、バーバラさんの心労が心配だ。
「で、それはなんじゃ?」
「新作の薬!!」
「なんじゃと!?」
屈託なく笑う少女と、驚きに目を見張る老婆。
文脈から察するに、恐らくそれを私に使うという事なのだろう。
まさかの実験台だった。
「それは危険な奴じゃないだろうな。どんな効果じゃ!」
「危険なんてないよ!むしろ逆。これは治す為のなの!」
「それが信じられんと言っておるんじゃ!だいたいいつもいつも……」
そして目の前で始まる言い争い。
どうやら、長くなりそうだった。
◆
話は、私が竜に打ち飛ばされ、意識を飛ばした後にまで遡る。
いつものように薬草の採取から帰ってきたローバは、家の間に血みどろで倒れている鳥と人を発見する。
人の方は助ける間もなく、光になって消えてしまったが、幸いにも鳥の方はまだ息があったため助けることにしたという。
だが、助けるにあたって1つ問題があった。
それは、倒れている鳥が成人男性並の大きさをしていた事。
――もし助けたあと、暴れだしたら大変だ。
そう考えたローバは、先日自作した新薬、通称“脱力剤”を投与した――。
というのが、私が意識を取り戻すまでに行われていた事らしい。
2人の言い争いが一段落した後、バーバラさんが新薬の効果を問い質したところ、ローバは嬉しそうにそう語った。
その脱力剤の効果で、私は今も体を動かすことが出来ないらしい。
先程ローバが持ってきた液体は、その効果を打ち消す為の物のようだ。
というか、今の今まで忘れていたが、あの時私を追いかけてきた女子二人組の弓使いの方は、あの打ち上げで死んだらしい。
下手するとMPK扱いだが、あれは事故だろう。
こちらも被害者だ。むしろ被害者だ。
「また……お主はちょっと見ない内に馬鹿げたもんを作りおって……」
「へへーん」
「しかも今回は地味に有能じゃ……少し改良すれば狩り事情が一気に変わるぞ……」
「もしかして私褒められてる?」
「褒めとらん!全く……」
ローバに製造法を聞いていたバーバラさんは頭を抱えていた。
どうやらかなり凄いらしい。
当の本人は全く気にしてないところも含め、ローバが天才なのは本当なのかな、と思った。
「じゃ、ウォー。この薬を飲んでね?」
更にしばらくして、ようやく薬を貰う。
ローバの私の扱いが、完全にペットのそれだったが気にしないことにする。
しかし、1歩間違えれば化物と言われてもおかしくない大きさの鳥に対し、よくこれだけ近付けるものだ。
すぐ目の前で瓶を傾けるローバを見て、他人事のようにそう考える。
薬の効果は無事に効き、ようやっと体を自由に動かすことができるようになった。
後は、左翼が無いのだけが問題だ。
ローバに礼を言おうとして、言葉が通じない事を思い出し、頭を下げる。
「!どういたしまして、ウォー」
何とか通じたらしく、そう返してくれるローバ。
クォーがウォーになっている事には気にしない。
だが、やはり言葉が通じないのは不便だ。
「クォンタム。改めて、お主に話がある」
そうして動ける自由をかみ締めていると、バーバラさんがそう持ちかけてくる。
どうやら大事な話のようだった。
Tips:脱力剤
とある若き天才錬金術師が作り出した薬。飲むと魔力回路が阻害され、魔力の通りが止まる。
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