01-18
「師」
しばらくして部屋に帰ってきたローバ。
その目元は、心做しか赤かった。
「ローバ。もう大丈夫かの」
「……うん」
「……強い子じゃ」
恐らく、この世界は現実世界よりも命が軽い。
だが、だからといって死に対する悲しみが軽くなる訳では無い。
少女の目には、人の死を乗り越えんとする強い意思があった。
「あ、鳥さん」
ローバの目が私に止まる。
バーバラさんはその姿を見て、決意したかのようにこう切り出した。
「……ローバには、話しても良いかの」
「どういう事?」
「実は、この鳥さんは、鳥ではない。ローバと同じ、人間じゃ」
「……えっ?」
驚きの声。
どうやら本当に私を鳥だと認識いていたらしい。
「でも、どう見ても鳥さんだよ?声も、鳴き声だし」
「バカもん!!それはクォンタムが、亜人種だからじゃ!」
「亜人種?」
バーバラさんによる三人種の説明は、概ね初日に聞いた光の説明と同じものだった。
だが、どうやら亜人種の事は一部地域では秘匿されているらしく、存在そのものを知らない人も多いらしい。
そうなると、ますますバーバラさんが何故亜人種語まで話せるのかが疑問だ。
「……そういえば、お主は【人化】のスキルは持っておらんのか?」
そのバーバラさんが、ふと聞いてくる。
しかし聞いたことの無いスキルだった。
横でローバが、聞いたことの無い声を出したバーバラさんを驚いてみている。
「持ってないですね。その【人化】スキルというのは?」
「……お主は、本当に世間知らずじゃの。亜人種でそれでは、お主が苦労するぞ?」
「と、言われましても……」
どうやら亜人種必須スキルらしい。
光の話ではそんなことは言われなかったが……。
信用のない【亜人種知識】を一応使ってみるが、特に情報は得られない。
本当に使えないスキルだ。
「……【人化】スキルは、亜人種の異形度を一定値まで下げるものじゃ。亜人種は異形度が高くなるほど魔獣化が進むわけじゃから、逆に下げてやれば、人の姿に近づく、という訳じゃな。お主、異形度はいくつじゃ?」
「……9です」
「9!?そら、全身鳥になるわけじゃ。普通はそんなに高くなる前にスキルを身に付けるもんじゃがのぅ……」
異形度9は高い方だったらしい。
うん、なんとなく察していた。
「……ねえ、鳥さんと何話してるの?」
そこで、1人だけ話を理解できないローバが首を突っ込んできた。
確かに何も知らずに聴いていれば、ギャオギャオ鳴いてるようにしか思えないだろう。
「じゃから、鳥さんでなくて、人じゃと言っておろう!こやつはクォンタムじゃ!」
「……クォー?」
「クォーでいいですよ」
「……それでいいそうじゃ」
人認識してもらえればとりあえず文句はない。
というか、いつになったら私は動けるようになるのだろうか?
いい加減、動けない事に辟易としてきた。
ローバは、人と言われた私に興味があるのか、あちことを触ったり、見たりしてくる。
正直、くすぐったいのでやめて欲しかった。
「クォーは言葉を喋れないの?」
「それは……」
「あ!!」
ふと疑問に思ったのか、そう聞いてくるローバ。
しかし、バーバラさんが説明しかける前に、ローバは何かを思い出したのか部屋の外へと駆けていく。
「全く、あの子は……」
バーバラさんの苦労が溜まる一方だった。
Tips:スキル【人化】
読んで字のごとく、魔力を消費して人に化ける為のスキル。亜人種が使った場合は異形度を一定値下げるに留まるが、一部魔獣が使う場合はその限りでは無い。
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