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SilentRoseQuest  作者: 石食み
第1章
14/33

01-09

少し残虐描写があるかもしれません。

 行きと違って、帰りは楽だった。

 昨今のゲームには大抵着いているマップ機能が無かった時はさすがに肝が冷えたが、先輩冒険者達が帰り用の目印を残していてくれたらしい。

 そういう所は流石冒険者だな、と思った。


「ケインズさん……」


 私は捜索にかまけて、何も考えていなかったのだと、痛感した。

 ゲームだから、現実じゃないから、そういった考えは一旦捨てよう。

 ここはもうひとつに現実、さっきもそう感じていたけれど、その本質を理解していなかった。


「ん?どうしたよ」

「いえ、私、もっと頑張ります!」


 決意を込めてそう宣言する。

 ケインズさんはしばらくぽかんとしたあと、大きく笑って肯定してくれた。

 決意を新たに歩き出す。

 しばらく歩くと、少し開けた空間に出るた。

 まるでそこだけ世界が違うかのように空気が澄んでおり、中央には割れた石碑のような物が転がっている。


「止まれ!」


 ふと、前を歩く冒険者がそう叫ぶ。

 その声には緊迫感が多分に含まれており、弛緩した空気が一瞬で張り詰める。

 しかし長くは持たなかった。


「……どうした」

「……いや、一瞬だったが、白い影が見えた気がした」

「なんだと!?」

「どうする?追うか?」

「いや、一旦帰った方が」


 口々に話し始める冒険者達。

 それらをまとめる為、リーダー格の男が口を開く。


「静かに!パーティ事に別れ、それぞれ別の道から帰ろう。ただ、何かを見つけても絶対に追うな!それと――」

「ソの必要ハなイ」


 突如、指示を遮るように声が響く。

 その声は壊れかけのラジオから流れてくる不出来な発音をしていて、耳が痛くなるものだった。

 見れば、先程まで居なかったはずの()()()が、口元を血で濡らして石碑の上に立っていた。

 その口元からは、子供の手が伸びており――

 床には、その子供の物だったであろう折れた大剣と、杖が転がっていた。


「随分ト客が多イな。目覚メたばカリで慣れヌと言ウのに」


「……は?」


 頭が急速に冷える。

 嫌な想像が頭をよぎる。


「ま、全テ喰エばイイか」


『マルクは剣が、スタッドは魔法が得意なんです。きっと持っていっているはずです。どうか、どうかあの2人を見つけてください……!!』


 エミリさんの声が再生される。

 つまり、つまりあの鳥が2人を――殺した。

 初めて見る人の死体の恐怖で固まってしまった私と違い、冒険者達は既に動き出していた。


「【覇王斬】!!」

「貫け光よ、光の魔よ、【ホーリーピアッシング】!!」

「ハッ!」


 とても先程までダラダラしていたとは思えない速度で、剣が、魔法が、光の槍が、大槌が、その他あらゆる攻撃が鳥に向かう。

 初手必殺の攻撃は確実に敵を捉る、はずだった。


「他愛モなイ。全力の攻撃、二度ハ無イカ」


 だが鳥は無傷だった。

 攻撃など無かったかのように自然に立っていた。

 その威圧感に、皆が気圧される。


「嘘だろ」

「光属性が効いてない!?」

「これは、無理だ。ありえないほど無理だ」


 そんな私達を一瞥し、鳥は続ける。


「でハ、死ネ」


 鳥はおもむろに翼を広げた。

 広げた翼が光る。

 その光は、私達全体をつつみこもうとして、


「っ嬢ちゃん、危ない!」

「えっ?」


 私はケインズさんに弾き飛ばされた。

 そして光が一際強まる。

 中からは苦悶の声が響いてくる。

 だがどうすることも出来ない。


「ケインズさん!?」

「嬢ちゃん、逃げろ……逃げて、街のみんなに伝えてくれ!!」


 ――光がゆっくり収まっていく。

 だが、そこには誰一人立っていなかった。

 冒険者は勿論、あの白い鳥すらも。

 そしてケインズさんも。


              ◆


 嘘みたいに静まり返った森を抜けた私を迎えたのは、松明を抱え警戒に当たっていた街の衛兵達と、難しい顔をしているギルドマスター、そしてエミリさん率いる孤児院の子達だった。

 1人歩いてくる私の姿に察したのだろう、衛兵達はにわかに騒がしくなり、エミリは今にも泣きそうだった。

 衛兵が駆け寄ってくるなり、口を開く。


「帰還、ご苦労。それで、他のもの達は……」

「それは……」

「マルクは?スタッドは?どうなったのですか!?」


 口ごもってしまった私に、エミリさんがそう問うてくる。

 私は弱々しく首を振ることしか出来なかった。


「そんな……」


 エミリさんはそれを見て、崩れてしまう。

 せめて最後の事だけでも説明しようとしたが、声がかすれてしまい、何も話せない。


「嘘つき」

「助けるって言ったのに」


 子供達がそう非難してくる。

 私はそれをただ黙って受け入れるしかできなかった。

 叶うなら謝罪をしたかった。

 だがそれは甘えだ。これは出来ないかもしれないことを安請け合いした私への罰なのだ。


「だから獣人種は」

「シム!!」


 シムと呼ばれた男の子が言いかけたことを、エミリが怒鳴って止めさせる。

 私の勝手な行動が、私だけでなく獣人種という種全体の立場を悪くしてしまった。


「……詳しい話は明日ギルドで聞く。だからもう今日は休め」


 悔しさと悲しさを混ぜた表情でギルドマスターが助け舟を出してくれる。

 私は小さく頷いて、1番の安宿に入り、ログアウトする。

 いつか必ず、あの白い鳥を倒すと決意しながら。


Tips:獣人種-02

獣人種も亜人種程では無いが差別対象となる事がままある。それは獣人種の筋力が肉体労働に有用なのと、美形が多い為だ。


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