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Seventh.

そして夜が明け……早朝。


やっと着きました、アーシェン国。

まぁ、まだ村にも着いてませんが……え?あの二人はどうしたって?


えっと……まぁ、結論から言いますと……逃げ切れませんでした。


やっと森から抜け出せる!っていうギリギリのところで偶然出っ張っていた木の根に引っ掛かり、二人とも盛大に転びました。


私は大剣さんが私を担いだまま転び、そのはずみで本当に偶然森の木に当たらずに森の外に投げ飛ばされました。


で、なんとか受け身をとってから森の方を見てみると……つい先程私が(投げ飛ばされて)出てきた獣道がありませんでした。


あれ?なんで?と少しテンパって、落ち着こうと深呼吸していたとき、ふとあることを思い出しました。


……そういえば、『グランドスネーク』ってこの森最強だったっけか…ん?強い魔物の特権って確か……


そこまで思い出して、森の遥か向こうから沢山の断末魔が聞こえてきました。


記憶が正しければ、おそらくこれは『ゴブリン』の断末魔でしょう。


これらの情報から推測して……おそらく、二人が転んだのは偶然ではなく、『グランドスネーク』が『ムーブウッド』に命令し、故意に転ばせたのでしょう。

強い魔物は自分より幾分か弱い魔物に主従関係を結ばせて、その魔物に何時でも何処でも命令できるようにできますからね。

何でこんなタイミングかというのは、おそらく完全に目が覚めて空腹を認知し、命令に至るまで時間が掛かったから。


そして『ムーブウッド』が出口を完全に隠す。

ついでに二人が起きあがるまでに道を変えておけば、もう出口はわからなくなるという寸法な訳です。


『グランドスネーク』は自分がしなくでもいいと思う事は絶対にしようとしません。

(この事は森を歩いていたときに世間話をしていた『ゴブリン』からたまたま知ることができました)←盗み聞き


まぁ、ようは面倒がりなわけですね。


本当にこの話の通りの性格だとすると、大昔に国を一晩で滅ぼしたという話もよっぽどのことがあったのではないのでしょうか。


まぁ、その話は置いといて。


つまり、私が言いたいのは『ゴブリン』の断末魔はおそらく『グランドスネーク』に命令されて二人を襲って、返り討ちにあったものではないかということです。


声が出口から遠かったのは、『ムーブウッド』に騙されて誘導されたといったところでしょう。


そして私はそもそも武器なんて物すら持っていないし、魔力も無いし、周囲には誰もいない。


結論…………二人の救助は不可能。


というわけで、どうしようもないのでとりあえず村に行こうとあてもなくさまよっているうちに……夜が明けたというわけです。


最初にやっと着いたとは言ってみましたが、実のところ、森を抜けた時点で既に国境は越えていたんです。


ただ、夜が明けて改めて実感しただけ……というわけですね。


おそらく私が今こうしていられるのはおそらく、偶然か、『グランドスネーク』の性格か、私の他の人とは違う特殊な体質のおかげでしょう。



「…生き残ってるといいな……あの二人」



小さく希望を呟き、既に遥か遠くにある森を振り返る。


森に囲まれるようにしてあった山脈は、もう無くなっていた。


あの山脈が魔物だったことを知らない人は、大騒ぎするだろう。


とうの『グランドスネーク』にとっては、自分の場所の特定を困難にするために別の姿になっただけなのだろうが。


もう一度森に背を向け、歩を進める。


また眠ることができなくて正直かなり疲れが溜まってたが、どうしても眠る気にはなれなかった。


どこか村に着くまでは、休憩もせずに歩き続けるつもりだ。


まぁ、元々所持金が非常に少ないため、村に着いても野宿は確実だろうが。



「逃げられるかな……?」



あの二人の悲鳴が聞こえないことを静かに願いながら、私は空を見上げた。


…視界の端にチラリとカイさんの姿が見えたのは、きっと気のせ……



「…………痛!?」



途端に、頭に何かが衝突。


痛む頭を擦りながら拾って確認すると、それは……見たこともない紋章のようなものが彫り込まれた…指輪だった。


続きまして第二弾。


こちらも見事にクリーンヒット。


そんな恨み持たれるようなことした記憶無いのにな……と思いながら第二弾を拾い上げると、それも指輪。デザインが違うけど。


二つの指輪を交互に見比べる。


……ん?これは………紙?


頭の痛みであまり指先の感覚を意識していなかったので気付かなかったが、指輪には二つとも紙がくくりつけられていた。



「?なんだろ、これ。えっと、なになに……?」



『やる。

      ソマロ・カイ・スパーダ』←第一弾


『同じく。

      エルシド・グランス・ラシェントル』←第二弾。



…………まてまてまて。


これはどういうことだ。


何故今になって真名を教える。しかも手紙で。

というより魔物にも真名、名、姓の三段階分けあったんだね。初めて知ったよ。(どれを教えるかにより、相手の自分に対する親密度が測れます。ちなみに、ディーは名の短縮)


いや、それよりも確か『サイレントバード』って夜行性の筈。何で朝っぱらから飛んでたんだ。もしかして本当は何時でも飛べるけど夜の方が色々と楽だからとか……ありえる。


というかグランスって誰。多分カイさんの知り合いだろうけど……普通は会ったこともない相手に真名まで教えるのはやりすぎだと思う。


二つの手紙を渋い顔をしながら交互に見比べていると、唐突に、気付いてしまった。


………この二つ、それぞれ筆跡が違う…?


このことから考えられる可能性は一つ。


おそらく、カイさんもグランスさんも、人に変化できるほど魔力があるのだろう。……まぁ、文字が書いてある時点でどっちかが擬人化して書いてることはわかってたけど……二人ともだったとは。

↑魔物の姿は、文字を書いたりするような精密動作に適さない。ちなみにこれも盗み聞き情報。一応、ある程度強い魔物なら文字も読めるそうです。


再び上空を見上げ、鳥の影がないことを確認して大きく溜め息を吐き、アイテム袋に手紙と一緒に指輪を二つともしまう。


そして私はまた森に背を向け、その場から立ち去った。


……いったい、どういう指輪なんだろう。


些か疑問は残ったが、結局、今まで詰め込んできた本の知識を全部引っくり返しても、答えがでることはなかった。


真名とは言いますが、別に知られたところでどうこうなるわけではありません。

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