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魔女のいらない空  作者: 週休七日


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3/8

敵に送る手紙

 やがて私は、浮かぶより先に、椅子に座るようになった。


 木を削るには、そのほうが都合がよかったからだ。


 最初に任された翼は、左右で厚みが違っていた。


 エドが測り直すように言ったので、私は魔女に向かって、と文句を言った。


「ものさしは、君の職業を知らないからな」


 嫌な道具だと思った。


 けれど、削り直した翼は、彼が作ったものと同じ働きをした。


 私が作っても。


 魔法を、ひとつも使わなくても。


 その結果を見たとき、少しだけ、ネリーに見せたいと思った。



 作業台には、ときどき遠くからの手紙が届いた。


 デイトンの自転車屋。

 別の町の技師。

 見たこともない土地で、鳥の翼を研究している男。


 エドは彼らの実験を読み、自分の失敗を書いて送った。


「敵でしょう、その人たち」

「そうだよ」

「どうして教えるの」

「僕と同じところを間違えないように」

「間違えたら、あなたが先に飛べるじゃない」


 彼はペンを止めた。


 少しのあいだ、インクの先を見ていた。


「同じところで死なれたら、嫌だろう」


 それから、続きを書いた。


 偉そうなことを言ったわけではなかった。


 窓を閉めてくれとか、そこのねじを取ってくれとか、そういうことと同じ調子だった。


 私は机の向こうにある翼を見た。


 彼の翼の形は、最初に会ったころとはずいぶん違っていた。


 誰かの失敗が届くたびに、少しずつ変わっていた。



 夜が更けると、エドはよく、作業台に突っ伏して眠った。


 私はその背中に上着をかけ、灯りを落とした。


 ある晩、彼が目を開けた。


「君は眠らないのか?」

「眠るわよ。魔女を何だと思ってるの」

「天井のあたりで寝れば、場所を取らないなと思って」


 私は呆れた。


「空では眠れないわ」

「どうして?」

「気を抜いたら落ちるもの。手を放してしまうのと同じよ」

「ずっと、力を使っている?」

「そう。歩いているあいだ、ずっと足を使うでしょう」


 彼は半分眠った顔で、手帳を引き寄せた。


「何を書いてるの」

「気づいたこと」


 私はそれを取り上げ、閉じた。


「明日にしなさい。あなたまで寝なくなったら、ここの空気が馬鹿で濃くなるわ」


 エドは、もう返事をしなかった。


 その夜、私は彼の向かいの椅子で眠った。


 目が覚めると、自分にも上着がかかっていた。

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