ツーショット
「ユノ? どうしたの?」
「こ、こ、こんな、可愛い子が、側にいるんだね……」
「可愛い……?」
──それはもしかしてメイナのことを言っているのだろうか?
「確かにメイナは世間的に見たら顔立ちが整っている方に見えるかもしれないけど……」
「や、やっぱりサイもそう思うの!?」
ずいっと顔を近づけてユノが聞いてくる。
「で、でも、働き振りは良くないよ? 見回りはやる気ないし、すぐカフェ行きたがるし、なんなら仕事終わりの飲みを生きがいにしてるような奴で……」
「かふぇ……飲み……?」
ユノがいったいなにを気にしているのかがわからず困惑していると、ユノは唇を震わせて質問した。
「も、もしかして、サイと……?」
「え、う、うん、でもメイナは友達が多い奴だから、他の人とも……」
「……2人では?」
「へ?」
「2人きりで、い、い、行くの?」
「い、行ったことはあるけど……」
「……」
信じられないという顔で僕を見てくる。
「……な、なんかユノ? 僕の方ばっかり見てない?」
可能であれば写真の方を見てほしい。
写真の人物に慣れる訓練なのだから、僕の方を見ていては訓練にならない。
ユノはポツリと口を開いた。
「……サイ、こういう子が、好きなの?」
「え?」
「メイナちゃん、可愛いもんね……」
「い、いや、別にメイナになにか特別な感情を抱いてるわけじゃ……」
──なるほど、もしかして……
「……ひょっとして、嫉妬してる?」
「……」
ユノは顔を真っ赤にして、黙ってしまった。
完全にそういう反応だ。
「ほ、ほんとだって! ただの先輩後輩の関係ってだけで……」
「せ、先輩後輩の関係で、だ、男女で2人でカフェや飲みに行ったり、するの……?」
「……あんまりしないかもだけど、する人もいるよ!」
「で、でもさっきなにか言い淀んだよね……! 『あ』って……!」
「いやそれはメイナとは別に関係ないことで……!」
「じ、じゃあなんなの!?」
「いやぁ……それは……」
ここで学生時代に告白されたことだよなんて言ったら余計ややこしくなる。
「い、言えないってことは……! め、メイナちゃんに、こ、告白されたりとか……!」
「ないよないよ! あー! もう!」
「……!!」
僕はユノを抱きしめた。
その瞬間、あんなにパニックになっていたユノが、急激におとなしくなった。
どうにも、僕の胸の中だと落ち着くらしい。
あの時、看病をした日の経験でこうなってしまったのかはわからないが、とにかく僕に抱きしめられると、ユノはおとなしくなる。
「……こんなことユノにしかしないよ」
メイナが好きなら、こんなにもユノのために家に通ったりしない。
「僕の中で、ユノがどれくらい大きい存在なのか、わかってほしいな」
「……」
ユノは僕の胸に顔を埋めながら、ゆっくり頷いた。
この状態のまま、ユノに写真を見せていくことにした。
「みんな一癖も二癖もある人たちだけど、とっても良い人だよ。ユノも、会ったらきっと仲良くなると思う」
「うん……」
なんとかユノを説得?できて、ユノは今夢見心地な様子で僕の言葉を聞いている。
──なんか催眠みたいになってるような……もう抱きしめタイムは終わりにしよう。
「……ぁ」
僕はユノを離すと、ユノは名残惜しそうに悲しい顔をした。
「それでユノ、頼みがあるんだけど……」
「……? うん、なあに?」
「ちょっとユノの写真を1枚撮らせてくれない? さっき見せたうちの後輩や先輩がユノがどんな人なのか知りたいみたいで……」
「え、えぇ……でも私今こんな格好……あっ」
ユノは渋る様子を見せたが、何かを思い付いたように声を上げた。
「……うん、わかった。撮って良いよ」
「ほんと? 無理してない?」
「大丈夫。でもその代わりに……写真は私が撮る」
「へ?」
ユノは僕の手元にあったカメラを取る。
腕を伸ばしてカメラのレンズを自分へと向けた。
「1人で撮るのは難しいよ? 僕もいるんだし、僕が撮ってあげ……へ?」
僕の問いに答えず、ユノは驚く行動に出た。
その姿勢のまま、僕にギュッとくっついてきたのだ。
呆気に取られている隙に、斜め上の角度から写真をパシャリと1枚撮る。
「た、大切にしてね? 私と2人で撮った写真……だから……」
「……」
顔を真っ赤にして照れながら、ユノはそう言った。
僕の顔も、きっと同じような赤色になっていることだろう。
「って、待ってこの写真を2人に見せるの!?」
「べ、別に、いいでしょ……困るものでもないし……」
「いや恥ずかしいよ! せめてもう1枚ユノ単体の写真を……!」
「だ、ダメ!」
「なんで!?」
「その写真をメイナちゃんに見せてくるまで、私の写真撮るの禁止!」
「絶対煽られるから!」
「ダメったらダメー!!」
結局ユノ単体の写真は撮れず、メイナとシュウ先輩にはツーショットを見せた。
2人からはめちゃくちゃ煽られたのは言うまでもない。




