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大天才だった幼馴染に久しぶりに会ったら、見る影もないくらい心身ボロボロになっていた件  作者: 平元桜央
第一章 太陽と月

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寂しかった

「……」


 ユノの話を聞いて、僕は耳を疑った。

 気分が悪くなる。

 驚きもする。

 まさか、僕と別れた後に、ユノがそんな酷い目に遭っていたなんて。


「……インフィニティ」


「……え?」


「それが、私を攫って、この事件を引き起こした組織の名前」


 ──『インフィニティ』

 

 人々の負の感情から、悪魔を呼び出す魔法を完成させようとする組織の名前。


「でも、今言った事件やこの組織について、絶対に調べちゃダメ。どこに組員が潜んでいるかわからないから」


「……わかった」


 だから、ウララさんは理由は聞かないでほしいと言ったんだ。

 僕に危害が及ばないように。


「私とお母さんがこの片田舎の町に来たのも、私がまた標的にならないように、王都の騎士団が秘密裏に住所を変更したから」


「……そう、だったんだ……」


 王都から遠く離れたこの町にどうしてとは思っていたけど、それなら納得がいく。


「これが、私の身に起こったこと」


「……」


 なんて、ことだ。

 

 言葉が出なかった。


 そんな悍ましい事件があったなんて。


 ユノが、その事件の被害者だったなんて。


 ほぼ全ての疑問の答えが、明らかになった。


 こうして、僕と話ができているのも奇跡だ。


「ユノは……今でも、他の人のことが……」


「うん……目が覚めた時。ママも、周りの人も、別の生き物みたいに見えちゃって……それで、部屋の外へ出られなくなっちゃった」


 ユノは布団をギュッと握りしめた。

 悲しみからか、彼女の声が、徐々に震えていった。


「考えずには、いられないの。『どうして私なんだろう?』『なんで、こんなことになっちゃったんだろう?』『私はこのままずっと、ひとりぼっちなのかなぁ……』って……」


 ユノの瞳から、大粒の涙が溢れた。






「時々……死にたくなるんだぁ……」







 諦めをはらんだ笑みを、ユノは浮かべた。

 彼女の黄金の髪の毛が揺れた。

 あれだけ夢に見ていた大魔導士への道も諦め、大好きな母とも会えず、外にも出られない。


 それが、どれだけの孤独で、絶望なのだろうか。


 僕は無意識にユノへ手を伸ばしたけれど、その手を止めた。


 他者に触れられることが恐怖な彼女にとって、その行為は余計なこと以外の何物でもない。


 僕が手を引っ込めようとしたとき、ユノが、僕の手を掴んだ。


「……! ユノ……」


 ユノは僕の手を握って、大切なものを扱うかのように、そっと抱き寄せた。


「サイは、安心するの。なんでなのかは、わからないんだけど……」


「……そっか」


 だからあの時、僕が初めてこの部屋に来た時、ユノは僕に触ることができて、泣いたんだ。

 もう感じることができないと思っていた人の温もりを、感じることができたから。


「サイが、来てくれて本当によかった」


 ユノにとって、僕はまさしく、希望の光だったのだろう。


「ユノ」


 僕は、ユノに寄り添うように、ベッドの上に腰掛け、ユノの手を握った。


「約束する。僕が、必ず君を外に連れ出す」


 ユノの願いを叶えたい。

 外に出したい。

 それが、僕がこの部屋に訪れた理由だったから。


「大切なことだから、もう一回言わせてほしい」


 僕は、ユノの手を握りながら、頭を下げた。


「君を1人にして、ごめん」


 幼い日に、傷つけてしまった彼女へ、もう一度謝罪の言葉を口にした。


「もう、2度と1人にしない。ずっと一緒にいたい」


 僕がそう言うと、ユノは顔を歪めた。


「……さ、寂しかった……」


 緋色の瞳から涙がとめどなく溢れて、頬を濡らした。


「ず、ずっと、サイがいなくなって理由を考えて……私のこと、嫌いになったんだって……私が、毎日毎日ずっと付き纏ってたから、嫌な気持ちになったんだって……そんな考えがずっとぐるぐる回ってぇ……」


 力が無くなったように、ユノは僕の胸に顔を埋めた。


「ずっと後悔しちゃってたの……! あのとき私がもっとサイの気持ちを考えていれば……! サイに嫌われないようにもっと努力していれば……! サイはいなくなったりしなかったんじゃないかってぇ……!!」


 僕の胸に縋りついた。僕もユノの体を抱きしめて頭を撫でた。


「理由くらい話してよ……! 手紙くらいちょうだいよぉ……!! 1人にしないでよぉ……! ずっと、ずっと、会いたかったんだよ……!!」


 ユノは力無く僕の胸を叩き、しばらくの間、泣いていた。


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