決意
「……ん……」
「ぁ……」
誰かの残念そうな声が聞こえて、目を開けると、見知らぬ天井だった。
ここがどこか、数秒時間を有したが、ユノの部屋に泊まったことを思い出して、思考が覚醒する。
ユノのベッドに背中を預けて、座って寝たからか、体のあちこちが悲鳴を上げている。
先ほど声がした方へと振り返ると、ユノは上半身だけ起き上がって、僕の手を握っていた。
「ぁ、おはよ……ユノ……元気? かな?」
「……うん」
返事をしたユノの顔はまだ赤かった。
「大丈夫? 顔がまだ赤いけど、熱はまだ下がってない?」
「……ううん、下がった」
ユノは少し僕の手を握る力を強めて、そっと離した。
「……ありがとう……」
「僕が看病してて良かったでしょ?」
「……うん」
おどけて言ったつもりだったんだけど、そう真正面から肯定されるとちょっと照れる。
「ごめんね、寝る前に、急に怒鳴ったり、嫌なこと言ったりして……」
「気にしないでよ。それに、僕としては言ってもらってよかった」
「……ねぇ、サイ」
ユノの瞳が、僕をしっかりと見つめた。
「私、外に出てみたい」
「……!」
それは、勇気ある宣言だった。
ずっと1人で閉じこもっていた、彼女の一歩だった。
「サイに、手伝ってほしい……でも、そのためにサイに、私がなぜこんな風になっちゃったのかを知って欲しいの」
ウララさんにも聞かないでほしいと言われた、ユノの秘密。
こうなってしまった、部屋から出られなくなってしまった、その理由。
「でもね、私の話を聞けば、サイは、もしかしたら危ない目に遭うかもしれない」
ユノは顔を伏せて、僕から目を逸らす。
「……サイの事を巻き込みたくない……だから、もし、聞きたくないなら、それでも……」
「ユノ」
僕の答えは、決まっていた。
「僕は、一度君から逃げた」
それは、揺るぎない事実だった。
「ユノの才能を前にして、隣に並ぶのが怖くなって……僕なんかがそばにいちゃいけないって思って、それで、逃げた」
だから、騎士になろうとした。
ユノのそばに立つことに、誇りをもてる自分になりたくて。
しかし、結果的には……
「君を、1人にしてしまった」
僕の存在が、ユノにとっても大きいものだったなんて、想像もしていなかった。
「でも、ユノが故郷からいなくなったことを知って、なんていうか……胸に、ぽっかり穴が空いたような気がして……勝手にいなくなって何言ってるんだって思うかもしれないけど……」
僕の胸に穴が空いた理由は明白だった。
「僕はもう、ユノのことを大切な人だって思ってる」
それくらい、僕にとっても、ユノの存在は大きかった。
僕の人生において、かけがえの無い、なくてはならない存在にまでなっていた。
昔みたいに、太陽のように笑っていなくても。
ユノの全てが愛おしいと、そう感じていた。
「だから、遠慮なんてしないで。僕はユノの全てを知りたい」
僕の話を黙って聞いていたユノの瞳は、少しだけ、潤んでいた。
そして、語り始めた。
僕がいなくなった後、彼女に何が起こったのかを。




