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大天才だった幼馴染に久しぶりに会ったら、見る影もないくらい心身ボロボロになっていた件  作者: 平元桜央
第一章 太陽と月

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食生活

 お菓子を小さな口で味わうように食べるユノを見て、僕も嬉しくなる。

 でももう時計を見ると16時。

 あんまり食べると夕飯が食べられなくなるから、続きは夕飯を食べ終わってから……


「……ぁ」


 そこまで考えて、僕はあることを思い出した。


「……? どうしたの?」


「いや、その……そういえば思い出したんだけど……ユノ……ご飯って、どうしてるの?」


「あ、あー……えっと……ちゃ、ちゃんと食べてる……よ……」


 ユノが口ごもり、目線が泳ぐ。


「いや、実は本当はウララさんに何となく聞いてるんだけど、なんかあんまり実感がなくて……念の為……」


「……! そ、そ、そうなんだ……じ、じゃあ、隠しても仕方ない……ね……」


 ユノは少し項垂れて、手のひらを上に翳した。

 その次の瞬間、ユノの手に鶏肉がテレポートしてきた。


「こ、こうやって、冷蔵庫の中のものをテレポートして……」


 ボウッ!


 ユノの手に乗っていた鶏肉が、一瞬にして炎に包まれる。

 しばらくして現れたのは、表面が少し焦げたホカホカのチキンだった。


「こんなふうに魔法を使って焼いて食べてるよ……」


「……」


 実際目の当たりにしてみると、本当に信じられない食事をしている……というか、実際に見るまでは信じたくなかった。


「冷蔵庫の中身をテレポートできるなら、冷蔵庫に料理を入れてもらってテレポートする……ってことはできないの?」


「え、えっと、て、テレポートされるものって、冷蔵庫の中のものからランダムに選ばれるから……り、料理を都合よくポンってテレポートできなくて……」


「……なるほど」


 魔法も別に万能じゃないんだな。

 何かしらの制約があるのか。


「ひ、ひどい時は3食連続で豆腐っていうことがあって……で、でも、ち、チキンは当たりだね……これは今日の夕飯にしよ……」


「……」


 ──こんな食生活を3年間……


 部屋から出てないのにあまり太っていないのは、この食生活が原因だな。

 ユノを部屋から出す云々の前に、まずはこの生活を少しでも直さなきゃ行けないかもしれない。


「じゃあ、ウララさんに作ってもらおうよ」


「え?」


「ほら、僕がこうして来れるようになったんだし、ウララさんに作ってもらってご飯を運んでくるよ」


 これからは魔法の練習以外でも、可能な限り来よう。

 ユノの食生活のためにも。


「なにか食べたいもののリクエストある? ウララさんに伝えるけど……」


 僕が立ち上がりながらそう聞いた瞬間……


「ちょ、ちょっと待って!」


「……!」


 ユノが、いきなり大声を出して止めた。

 ユノの大きな声を、久しぶりに聞いたような気がする。

 少しだけ、昔のユノに戻ったかのような……そんな感覚。


「……ぁ……ご、ごめん、きゅ、急に大きな声、だして……」


「……ううん、大丈夫だよ。それよりどうしたの?」


「え、えっと……そ、その……」


 ユノは言い淀む。

 口を開きは閉ざし、何度も繰り返してようやく言葉にした。


「その……ママって、わ、私に対して怒ったりとか……して、ない、かなって……?」


「……」


 この質問に対して、「どうして?」と聞いても良いのだろうか?


 それはウララさんが聞かないでほしいと言った「引きこもったワケ」に該当はしないだろうか?


「え、えっと……! わ、わたしってずっと引きこもってて……な、何年間も顔を出してないから……さ、流石にママも怒ってるんじゃないかなー……って……」


 ──なるほど……まぁ、もっともらしい理由ではある。とってつけたような感じだけど……


「怒ってないと思うよ」


「そ、そう……」


 僕がそう言うと、ユノは安心したように頷いた。


「じ、じゃあ……お願い、します……」


「うん、なにがいいとかある?」


「あ、じゃあ……」







 ユノのリクエストを聞いて、僕は部屋を後にした。


「……」


『その……ママって、わ、私に対して怒ったりとか……して、ない、かなって……?』


 ユノの言葉で、昨日からずっと疑問に思っていたことを思い出す。

 僕はポケットからバリアキャンセラーを取り出し、見つめた。


 疑問に思っているのは、ウララさんのこと。


 ウララさんは3年間、ユノと顔を合わせていないと言っていた。

 でも、ウララさんはバリアキャンセラーを持っていた。


 つまり、ウララさんは『ユノに会おうと思えばいつでも会えた』のだ。


 でも、バリアキャンセラーを使わずに会っていない。

 これはなんでだ?

 自分の娘があの状態なら、親なら……特にウララさんのような人なら、絶対に力になろうと、どうにかしようと会おうとするはず。


 ここから導き出される仮説は……


「……なにか、あったのか? 2人の間に……」


 2人の間に何か諍いがあったのであれば、ウララさんがユノに会おうとしないことも、先ほどのユノの『ウララさんがユノに対して怒っていないか?』という確認も説明がつく。


「……これは聞いても良いものかなぁ……?」


 僕は新しい疑問に胸をざわつかせながらも、階段を降りた。

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