第二十七話
無事に目的の滝水で身を清め、近くにあった売店でのんびりお団子を食べていた。
まいまいの自撮りで班の8人で集合写真をとったりして青春している。
しかし、沙弥の一言で一気に現実に引き戻された。
「ちょっとまって!集合時間まであと8分しかないじゃん!」
ここまで15分くらいかけて登って来たことを考えると、このままでは遅刻確定だ。
「時間ないね!急ぐよ!」
美波は一気に駆け出し、すぐに私たちとの距離が離れていった。さすが長距離エースだ。
「ちょっと!修学旅行なんだけど!」
とかいいつつ沙弥も後ろから楽しそうに美波を追いかけていった。
「やっぱり陸上部コンビすごいな…。行くぞ!」
健太がそう言うと他のメンバーもそろって二人を追いかけるのであった。
「はぁ…。セーフ…。」
無事にみんな待ち合わせ時間には間に合った。
普段あまり運動をしないまいまいは結構疲れているようだ。
「静羽は余裕そうだね?」
そう言う美波の方が余裕そうだが、私は笑って答えた。
「バド部エースをを舐めるな!」
まるで体育祭のノリじゃないか。
私たちの班がギリギリで到着したことで無事に全ての班が揃い、集合写真の撮影が始まった。
クラスの公認カップルたちは堂々と二人で並んで仲良くポーズを決めていた。 私と駿は当然そんな真似はできないので羨ましい。 それどころか写真に写る二人の位置は遠く離れていた。私は真ん中で、駿は最後列の端の方。
あっちの静羽だったら絶対に真ん中は嫌だが、それを隠すように完璧な笑顔を決めておく。
少し寂しく感じたが、撮影が終わって後ろを振り返るとすぐに目が合った。こんなにすぐに目が合うなんて、もしかして彼はずっとこっちを見ていたのか。
かわいいとこあるじゃん。
清水津寺観光が終わると、再びバスに揺られて宿泊先に向かうのであった。先生はみんなが夢の中に誘われる前に注意事項を説明した。
「夕食の後は、部屋で過ごしてもらいます。その後クラスごとに大浴場で入浴時間が設けられているので時間に注意してください。なお、旅館の隣にあるコンビニは夜9時半まで利用できます。コンビニ以外の外出は禁止です。」
外出は完全に禁止だと思っていたので、コンビニが利用できるのは意外だ。
「くれぐれもコンビニ以外の外出はしないように。脱出したらどうなるかわかりますね。」
一応進学校であるし問題行動を起こすような奴はいないと思うが、先生に釘を刺された。
話が終わった途端にみんなは眠りについた。朝の集合時間が早かったのもあって、そろそろ疲れが溜まっている頃だ。隣のまいまいがウトウトしているのが可愛かったが、やがて白目をむいて眠り始めた。まいまい、さすがにそれは…。
私は眠くなかったので修学旅行のしおりを読もうとリュックに手を伸ばした。その時にスマホに通知が来ていることに気づいた。
「夕飯の後の自由時間で会えるか?」
駿からの連絡だった。
「もちろん。どこで待ち合わせにする?」
せっかくの修学旅行なのに、駿に会えずじまいで終わるのはもったいない。一緒に写真くらいとりたい。
「部屋に遊びにこいよ。」
ちょっと待て。やっぱり駿はその気だったの?先日駿の家にお邪魔した時こそ何も起こらなかったが、《《この間のつづき》》でもされたら…。
いや、何を期待しているんだ。早まるな私。
「お前の友達誘って来て。俺の友達がそっちに用事があるらしい。」
駿から追加でメッセージが送られてきた。
そうだよ。二人きりになるはずがないだろう…!
変な期待をしていた自分に思わず恥ずかしくなってしまう。私は自分の頭をコンコンとスマホに打ち付けて頭を冷やし、返事を送った。
「優花とまいまいと一緒に行くね!」
駿の言い方から察するに、優花かまいまい目当ての男がいるようだ。
駿と同じ部屋なのは、大輝と悠と健太だ。修学旅行の班も同じだから、健太がまいまい狙いなのかもしれない。これは面白くなりそうだ。
あれこれ考えているうちにバスは旅館に到着した。相変わらず白目をむいているまいまいを起こして、私たちはバスを降りる準備をした。
そして、ここ数十分の私のワクワクを全て帳消しにする悲報が耳に入る。
「重要な連絡を忘れていました!」
先生はバスを降りる前に慌てて付け加えた。
「旅館では、女子は二階に、男子は三階に部屋が割り振られています。当たり前ですが、女子が男子の、男子が女子のフロアに入るのは禁止とします。」
…!駿に会えないじゃん…!




