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第二十八話

 夜の自由時間に駿たちの部屋に遊びに行く計画はあっけなく中止になってしまった。 

 

「女子が男子の、男子が女子のフロアに入ることは禁止とします。」 

 

 別によこしまな気持ちがあったわけではないし。まあいいけど…。でも…。

 修学旅行の間はあまり駿に会えない。それは別にどうでもいい事のはずなのに、何となくもどかしかった。 

  

■■■


 夕食の会場では、班のみんなとまとまって8人掛けのテーブルに座った。 

学生向けの会席料理のようで、カニのグラタンからハンバーグにナポリタンとカロリーが心配だが普通においしかった。 


 男子たちは白米とみそ汁をおかわりしていた。よく食べるもんだと感心していたが、沙弥と美波もなかなかな食いっぷりだ。美波は栄養が心配だからと言ってサラダまでおかわりをもらっている。  

  

「中学校の頃、あまりにもたくさん食べるからクラスメイトに驚かれちゃってさ。」 


 美波はそう言いながら、追加の白米を食べていた。私も口には出していないだけで十分驚いている。 


「いいんじゃない?トレーニングの一環でしょう?」 


 私も運動部なので気持ちは分かるが。 


「さすが静羽!わかってるね!」 

 

 その後は、まいまいが苦手だというエビフライを班の中の誰に譲るかという討論になり、男子に混ざってじゃんけんで勝利を収めた美波が幸せそうに頬張るのであった。 

 



 夕食が終わって部屋に戻る時に、駿から連絡が来ていることに気づいた。 

 

「今夜は会えなさそうだな。」 

 

 自由時間に駿に会えることを楽しみにしていたので、内心けっこうがっかりしている。わざわざメッセージを送ってくるということは、もしかして駿もなのかな…。


「三日くらい平気だよ」


 自分に言い聞かせるように強がってみた。すぐに既読が付いたが、駿からの返事はなかった。

 

■■■

 

 「私たち4組のお風呂は8時から8時45分までだって。」


 部屋に戻ると、まいまいと陸上部コンビの3人は修学旅行のしおりをめくってお風呂の時間を確認した。


 私は部屋に置いてあった旅館のパンフレットを開いてみる。 

 

 二階〜四階 客室 

  屋上   屋上庭園 

 

 へえ。屋上庭園があるのか…。 

 その他アメニティや非常口などの案内も読み、一通りの情報を覚えた。これは絶対に役に立たない情報だと分かっているのに。 

 

 「8時からってことはもうすぐだね…準備しておこうか!」 

 

 沙弥が素早く立ち上がり、着替えの準備を始める。 

 私たち三人もリュックをガサゴソとあさって着替えを引っ張り出し、大浴場に向かった。 

 



 「はぁー!気持ちい!」 


 沙弥と美波は素早く体を洗ってすぐに湯船に浸かっていた。二人とも筋肉質で無駄がない体型だ。どっちの腹筋の方が好みかと尋ねられたが、さすがに困る質問だった。(笑って誤魔化した。)


 「よしっ。私たちも入ろうか。」


 私とまいまいも体を洗い終え二人で浴槽に向かった。いつもと違って前髪が上がっているまいまいは結構魅力的かもしれない。おまけに肉付きの良い美しい体をしてる。 

  

「まいまい…。敵だったか。」 

 

 沙弥と美波も同じことを思っていたようで、二人は口に出していた。 


「ちょっと。やめてよ。」 


 まいまいは両腕で胸元を覆って照れている。 


 私と陸上部コンビ二人は、言ってしまえば絶壁だ。成長期に死ぬほど運動をしている女子はエネルギーの需要と供給が追いつかないため総じて平たい。 


 それに比べてまいまいは羨ましいほど立体的だ。まじまじと見つめたり触りたいと思ってしまうのは、案外女子も同じである。


「なんか西洋美術の彫刻って感じじゃん。」


 沙弥が妙にリアルな実況をするので、みんなでクスクスと笑うのであった。 

 

 風呂を上がると私たちは急いで髪を乾かし、四人で部屋に戻った。 

 偶然駿に出会えたりしないかなと思い、あたりを見渡してみた。


 さすがに運よく会えるワケないと我に返る。

 なにを期待しちゃっているのか…。 

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