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第二十六話

 「まもなく― 宮坂みやさか…。」

 

 新幹線での移動はあっという間に終わり、昼過ぎには今回の修学旅行の舞台である宮坂駅に到着した。私たちはぞろぞろとホームへ降り立つと、駅前でバスに乗り換え最初の目的地に向かった。


 「目的地は清水津きよみず寺だって。」

 

 バスではまいまいと二人掛けの席に座り、一緒にしおりを眺めるのであった。

 初日ということもあり今日のメインイベントは清水津きよみず寺観光だけらしい。集合写真を撮ったら早いうちに旅館に向かう予定だ。


 「清水津寺には、3つの滝があってそれぞれご利益があるんだって。」


 まいまいはガイドブックを読みながら呟いた。


 私も道中に中心部の地図から路線図、人気の土産屋などガイドブックの情報には目を通して来た。無駄な暗記力もたまには利用しないと鈍ってしまうので、仕方なくガイドブックを暗記したのだ。


 「聞いたことある!たしか、長寿祈願と学業成就と恋愛成就の3つにわかれていて滝水を飲むとご利益があるんだよね?」

  

 うろ覚えなふりをして答える私に、まいまいは「そうそう」と頷く。

 

 水にご利益があるとは、たいへん面白い主張だ。効き目が違うということは成分が違ったりするのだろうか…。

  

「どれにしようかな。やっぱり恋愛運だよね。」

 

「悩むなら全部飲めばいいじゃん!」


 私はてっきりそのつもりでいたのだが、どうやらそんな簡単な話ではないらしい。


「だめだよ!ご利益なくなっちゃうってどこかに書いてあった。」


 どうせ全部同じ水だと思うのだが…。ここは謙虚にいこう。



 バスの中ではガイドさんがチラチラと車窓から見える景色を案内してくれた。

 私とまいまいはバレないようにこっそりとお菓子を食べてスリルを味わい、最難関のスナック菓子を開けようとしたところで目的地に到着した。 

 

 バスを降りて点呼をとっている間、辺りを見渡していると駿を見つけた。優花に話しかけられている彼は静かに頷いていた。


 だめだめ。余計なことを考えるな。 


 二人が視界に入らないようにと思いつつ目を離せないでいると、一瞬だけ優花と目が合った気がした。  とっさに目をそらしたところで、先生が指示を始めた。 

 

「これから45分間は班別で寺内の自由行動時間です。45分後にこの場所にもう一度集まったら、集合写真を撮ります。」 

 

 

 説明はすぐに終わり、合図とともに解散すると班行動が始まるのであった。 

 



「ねえ!滝水が有名なんでしょう?そこに行きたい!」

 

 沙弥さやはそう言って入り口でもらったパンフレットを開く。どうやら滝はだいぶ上の方にあるようだ。 


「ここから一番遠いよ?歩くの疲れるし、やめようよ。」 

  

 美波みなみはそういいつつ、靴ひもを結びなおしていた。なんだかんだでやる気満々じゃないか。 

 

「俺ら男子は大丈夫だけど、静羽たちはいけるか?」 

 

 健太の言葉に、他の男子三人は大きく頷く。私とまいまいも「もちろん!」と返した。 

 

「じゃあどんどん回ろう!」 

 

 沙弥の元気よい言葉で、私たちは出発するのであった。 

 

 


 目的の滝は噂通り滝口が3つに分かれていた。それぞれ柄杓ひしゃくで水をすくって、そっと水を口に運ぶ。左から長寿・学業・恋愛と並んでいて、なんだかんだで私以外の全員が恋愛成就を選んでいた。ちなみに私が選んだのは長寿祈願だ。

 


 「静羽は恋愛成就じゃないの?」

 

 沙弥に尋ねられる。


 「長寿だったら恋愛も学問も大体なんでも叶うんだよ。」 


「たしかに!納得!」


 それに、もうすでに成就しているから…。とは言えないので適当なことを言っておいた。 

 

 日本の女性平均寿命は87歳らしい。いま高校生で17歳だから、理論上はあと70年くらいは生きるらしい。かなり低く見積もってもとりあえずあと50年くらいは現実的だ。


 50年か。

 なぜか自分がそんなに長く生きている未来が見えないのであった。

 


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