その7
戸惑う紗由に華音は笑顔で言った。
「答えはずばり、“命宮”のお仕事だと思うの」
「“命宮”のお仕事?」
「そうでしょ、龍にいさま?」
目を反らす龍に紗由は低い声で言う。
「どういうことでしょうか、西園寺の“弐の位”さま」
「…おまえに“命宮”試験の通達が来た」
「伝えとらんかったんか!?」翔太が叫ぶ。
「何か理由があって伝えなかったの?」大地が尋ねた。
龍は小さくため息をつくと言った。
「伝えようとした時に、伝えずにおくのも試験のうちだと言われた」
「今、一条の“命”がやっていることと、命宮試験の件は関係はないの?」
奏子が尋ねると、龍は頷いた。
「じゃあ、もう意味がないってことね、この状況」
紗由は大きく深呼吸すると言った。
「…大地くん、まりりん、翼くん、奏子ちゃん、史緒ちゃん、咲耶ちゃん、充くん、恭介くん。今呼ばれた方々は、原っぱの外に退出してください。今なら結界が切れてますから簡単に出られます」
「紗由…!」
「これは西園寺の案件ですから」
「私は残ります。何年か後には西園寺の人間になるわけですから」奏子が言う。
「…あ、あの、私も残ります。私もいずれは西園寺の…」
咲耶が歩いて行く先を目で追う一同。そこには聖人がいる。
“いつの間にそんなことに…?”一同はさらに聖人を見つめる。
「じゃあ、充くんも来て!」真琴が呼ぶ。「いずれは西園寺のししゃも係だし」
「ほい!」真琴の傍に来る充。
“その呼ばれ方でいいのか…”充を見つめる一同。
「奏子が西園寺の人間になるってことは、僕も親戚になるわけで…」
翼が言うと、真里菜も言う。
「っていうことは、私もいずれ親戚になるわけで…」
「なら、僕もだね」
大地が言うと、史緒も言う。
「私もです…咲耶とは血がつながっておりますし」
「僕だって探偵事務所の人間だからね!」
恭介が言うと、紗由は気が抜けたように返事する。
「…じゃあ、みんな一緒でいいわ」
ニッコリ笑う一同。
「ほな、仕切り直しや」
翔太が言うと、周辺の空気がぐにゃりと歪み、再び原っぱを覆うように結界が現れた。
「戻った!」驚いてキョロキョロする恭介。
「もしかすると…」聖人が言う。「時間をかき混ぜちゃってるのは、翔にいなんじゃないかな」
「俺? そんな能力あらへんが」
「確かに初耳だけど…」龍が空を見上げる。
「わかったわ。ここは西園寺保探偵事務所所長、西園寺紗由が謎解きをします!」
紗由が手を上げて叫んだ。
「みんながいてくれても、帰っちゃっても、この状況は私に与えられた課題なわけだから、私が解かないと。試験官だって見てるわけでしょうし」
「だったら、僕たちがいる意味ないじゃないか」
「帰ってもいいわよ、恭介くん」
「帰れないよ! 結界閉じてるし」
「どこかに穴、開いてるわよ、きっと」
紗由はうんざりしたように言い返しながら、ハッとした。
“そうよ…関係ない人たちは、いつでも出られるんじゃないかしら?
空は結界が張られているけど…穴…井戸の中!
そして井戸には、誠おにいさんと、蒼也くん、天人くんの核のようなものが戦っていて…本当に戦っているの? だって西園寺への借りを返す戦いの決着はもっと先だって…。
にいさまは、誠おにいさんがしていることと、私の試験は関係ないと言ったけど…そもそも、何で奏子ちゃんはそんな質問…というより確認をしたのかしら。
命宮試験のことは“命”や“弐の位”たちには伝わっていると考えて間違いない。大地くん、びっくりしてなかったし。
そして奏子ちゃんは、石を通じて翼くんに伝わったことを聞いたと考えるのが自然。
誠おにいさんの戦いが、試験と関係ないということになれば、私は井戸には意識を向けない。向けたら試験が成り立たないのでは…?
つまり、誠おにいさんは試験官の一人という可能性が高い。
ただ…さっき、まーくんが言ってた、翔ちゃんが時間をかき混ぜてるというのが、どう絡むのかしら。
だって、本当にかき混ぜちゃったんだとしたら、誠おにいさんは…”
「大変じゃない!!!」
唐突に叫ぶ紗由にみながビックリする。
「ど、どないしたん?」
「誠おにいさんを助けに行かないと!」
「はあ?」
「いいから早く! 井戸の中に降りるわよ!」
「さっきと話が違うよ!」
文句を言う恭介に紗由が言う。
「そうよ。“今”は“さっき”じゃないんだから」
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