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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
32/87

〜ある部屋で〜

スピエン・イローパとアイシャ・クライアントが模擬戦を始めた頃、ガーデン中央区のとある部屋に三つの影が浮かんでいた。


「ーー以上が私が見たところの彼の素質ね。グレイの指示通りに適当な海の魔物を使って下手なお芝居をしてみたけど...まあ、余興にはなったかしら」

「そうか、ご苦労だったな。磯姫」

「いいえ〜」


静かにティーカップを口に運ぶグレイ・フォックスへ窓際に座る東方の島国風の少女こと磯姫が妖艶な笑みを浮かべる。


「しかし彼ができるのは現状では変化(へんげ)のみ...か。妖術の一つも使えないとは九尾の名に恥じるな」

「まあ、彼の...暦の潜在能力には期待しない方がいいわ。あの子、変化でかなり力を使っちゃうみたいだから高度な妖術は無理でしょうね。何にせよ覚醒するのに時間がかかり過ぎている...血が薄まり過ぎたわ」

「灰狐に磯の嬢よ、それは違う。暦君はまだ覚醒し切っていないだけだ。彼の潜在能力はどの海よりも深い」


第三者の言葉に二人は呆れた顔をする。


「カーディナル、幾ら貴方でも直接彼に会って来た我々とでは見方が違うのだ。奴は妖怪としては落ちこぼれだよ」


カーディナルと呼ばれた二十歳程の見かけをした男は長い黒髪の間から悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「本当にそう思うか?」

「勿論だ。それに妹らしき少女も期待はできんだろう...彼女の場合はそもそも妖気自体を持っていなかった。つまりは『大妖怪』は完全に滅んだのだよ」


グレイは再びお茶を啜ると灰色の瞳に光を揺らめかせる。


「そんなことは無い。暦君が本気を出したら我々が束になっても敵わないだろうし、妹には妖気は兎も角強い霊気を感じる。どちらも油断はできんさ」

「そうかしらね〜暦は私と戦った時に何か吹っ切れた様だったけど...そこまで劇的に力が増えた様子は無かったわ。あれぐらいなら私一人でも楽々滅ぼす事ができたわよ。まあ、灰狐じゃあ返り討ちだったでしょうけどね」

「・・・反論はできない」

「ふっ灰狐は弱いからな...しかし磯の嬢よ、最近は見かけ通り頭が悪くなったか?」

「どういうことかしら?」


薄ら笑いをするカーディナルに磯姫は口にのみ笑みを浮かべる。


「ご想像にお任せするよ」

「『水よ、我が敵を穿て...水術・水刃』」

「むっ」


磯姫が瞬時に術式を詠み上げるとグレイのティーカップに入っていたお茶が飛び出ると三日月状に変形し、猛烈な勢いでカーディナルへと襲いかかった。

しかし、命中する直前でカーディナルがお茶を弾く様に腕を振ると忽ち無数の水滴に変わり、それが球体状に集まるとグレイのティーカップに再び収まった。


「相変わらず血の気の多い女だな」

「それ以前に術に人の茶を使うな」

「水分がそれしか無かったのよ」


腰に手を当てた磯姫はクルリと二人に背を向ける。


「・・・ところで、先日に感じられた強大な妖気の爆発については何かわかったか?」

「特に進展は無いわ。まあ、こんな短期間で解明しろって言う方が無理あるけど」

「こちらも貴方が言っていた過去に一度同じ様な妖気の爆発が東で起こったという事以外は目ぼしい記録は無い」

「そうか...お前らもまだまだだな」

「その一人で全てわかったような態度をするのは止めてもらえんかね」


グレイはキッとカーディナルを睨みつけて厳しい口調で言った。


「事実、私には真実が見えていて君たちは見えていない」

「ほう、もう何かわかったのか?」

「無論だ。どれもこれも、水上 暦が引き起こしたものだ」

「ありえん!」

「そうよ、私と戦った時だってあの妖気の百分の一も無かったわ」

「では聞こう」


カーディナルは強い批判には耳もくれずに続ける。


「君たちが見て、戦った暦君の尾は何本だった?」

「確か六本...!っそうか」

「何よいきなり?」


グレイは何かに気がついた様だが磯姫は未だに疑問符を浮かべている。


「妖狐の力は尾の本数に比例する。本来ならば尾の数が変わることなどないからこんな簡単な事を見落としていた」

「高々三本でそんなに違うのかしら?」

「そうだ、妖狐の力関係は尾が一本でも多い方が強い。それは尾の毛一本一本に篭った妖気によって圧倒的な力量差が生まれるからだ。ましてや九尾狐は妖狐の王者、その絶対性は唯ならぬものなのだ」


首を傾げる磯姫にカーディナルが解説を加える。

そうして、ようやく理解のできた磯姫が頷いた。


「なる程ね。じゃあその二回の妖気の爆発は何らかの要因で暦が覚醒した時のもの...ということね」

「そうだ。だからまだ彼を見限るには早い」

「そうね、案外楽しめそうだわ」

「後は何が引き金で彼を覚醒させられるか、だな」

「時間はある、ゆっくりと見ていこう。全てを見て、全てを語るのが我ら三子なのだからな」

「じゃあ、私は海に帰るわ。また何かあったら呼んでちょうだい」

「私も引き上げよう。シラギの見舞いにも行かんとだからな」


二人が立ち上がり、風によってカーテンがはためくと次の瞬間にはもう彼らの姿は無かったわ。


「さて、暦君には今晩あたり『彼女』に会わせてみるか。...近々、私自身もな」

---------------------M.Gメモ---------------------



カーディナル・スクウェア(実名不明)


Lv.??

装備品 妖刀・箱庭

備考

マーセナリーズ ガーデンの事実上のトップである学園長であるが多くは未だ謎に包まれている。


長身だが座ると床までつく程長い黒髪と真っ黒な瞳が特徴的な二十歳程の外見の男。

実を言えば彼も妖怪でありグレイ・フォックス(灰狐)や磯姫は弟妹である。


しかし、兄妹内ではそれぞれを本名で呼んでいるのに対してカーディナルだけはその例から漏れる。


また、磯姫にちょっかいを出してよく喧嘩になるが実はとても仲がいい。



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