表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
29/87

〜編成〜

暦と紗季が学生区エリア20・大講堂に辿り着いたのは集合時間の5分前のであった。

講堂は大勢の人が集まっていたが、それでもまだ半分以上もゆとりがあるような広い場所であった。


「なんとか間に合った...暇な時に散策しとかないと移動だけでも一苦労だ」

「ほ、本当だよ〜」


暦の呟きに肩で息をする紗季が賛同した。


残った僅かな時間で端末に周辺地図を表示させて、せめて学生区の地形を覚えようと試みる暦だがそれだけでも全部でエリアが六十をもあるので軽い絶望感に襲われた。


(焦るな暦、まだ二日目じゃないか)


殆ど自分に言い聞かせてモチベーションを立て直そうと暦が努力している間に教官らしき様子の男性が壇上に現れた。

それと同時に講堂内は急に秩序たって、順番こそ適当だが綺麗な列を組んだ。


「合格者諸君、私が今期の訓練兵団を総指揮することになった片手剣部教官のクレタ・ミカーネだ。人によっては長い付き合いにもなるだろう、よろしく頼む。時間になったので本日行う事について説明する。聞き漏らしの無いように各自よく聞くこと」

『はい!』


各自がクレタ教官へ思い思いの敬礼をする。

皆々出身国の違いから敬礼の形はバラバラだが、張り詰めた空気だけは合致していた。


「よろしい、まずガーデンでの敬礼を教えよう。いつまでもバラバラでは統制も取りにくいからな。それでは各自、まずは(かかと)を合わせ足を45度の角度で開け。次に左手を後ろに回し腰に添え、右手は握りこぶしを作り胸の前へ運んで地面と水平にしろ」


クレタの言葉に全員が従い、指示された通りの動きをした。


「それがガーデン流の敬礼だ。では試してみよう、総員直れ!....敬礼!!」


始めての動作であるにも関わらず全員がほぼ一致した動きで敬礼をする。


「キレが無い!もう一度...敬礼!」


かなり辛口な指導の下に十数回の敬礼訓練が続けられ、やっとのことクレタが満足すると次の段階へ話が進む。


「それでは次に一年間訓練を共にする班を編成する。名前を呼ばれた者達は速やかに右の出て整列すること」

『はい!』

「第1班、キリス・グラーマン.....」


クレタが次々と名前を読み上げると、その度に人影が素早く動いて列を外れていく。


一班の人数は五人、集まったアリーナに勝ち残った人数は千人なので全部で二百班ということになる。(暦たちは知らなかったが、アリーナは全10ブロックで行われていたので勝ち残った人数は各100人×10組で千人)


「第104班、スピエン・イルギース、ミズカミ・コヨミ、ウィリアム・ターナー、アイシャ・クライアント、エレン・ケラー」


いつのまにか百班代まで進んでいた編成で遂に暦の名も呼ばれた。


一回紗季に笑み投げかけると暦はサッと列を外れて集合しつつある104班に合流した。


集まっていたのは男子二人に女子二人、取り敢えず暦は小声でよろしくと言ってから最後尾に並んだ。


「第105班、シャイナ・ホルビット...」


残った九十六班が編成されていく様を横目に、暦はサッと班員の装備に目を走らせる。


(片手直剣が二人に両手長剣が一人で片手曲剣が一人...全員剣士か。スピエンとか呼ばれていた両手長剣使いは剣の装飾と見下した目からして貴族だな)


面倒そうな奴と一緒の班になったなと思いながら残りの時間を過ごす暦。

因みに紗季は130班に、ネリシャは4班に編入されていった。


「ではこれから約二十分間を班員との顔合わせの時間とする。一年間苦楽を共にする仲間だ、極力仲良くするように。それでは開始!」


クレタが手を叩いて合図をすると講堂内は一気に騒がしくなった。

皆自己紹介などをしている。


「じゃあ、僕らも自己紹介をしようか。僕はウィリアム・ターナー。武器は見ての通り片手直剣です。一応サザンセントリルの下級貴族だけど暮らしは一般の人たちとあんまり違わなかったから庶民臭いところもあるかもしれないけどよろしく」


最初に言葉を発したのは金髪青眼で背の高い青年のウィリアム。

爽やかな雰囲気に言葉遣いも丁寧で、好感の持てる青年だった。


「では次は僕が自己紹介させてもらうよ。名はスピエン・イルギース。武器は自慢の聖剣であるこの両手長剣。セントウエスティアの王都イスランディの上流貴族の長男だ。まあ仲良くしよう」


(いや、仲良くする気無いだろ)


思わず暦がそう思ってしまう程典型的な自信家貴族。

美男子の部類に十分入る容姿の持ち主ではあったが、先の暦の予想通りに嫌な奴だった。

嫌に華美な長剣を見せつけてくるのもマイナスな印象を与えている。

ウィリアムとは正反対な雰囲気である。


「・・・じゃあ、次は私が」


小さく手を上げたのはじーっと暦の刀を見つめていた小柄で無表情な女の子だった。


「私はエレン・ケラー。武器はこの曲剣。出身はセントウエスティアの小さな町です。...よろしく」


消えてしまいそうな小さい声で語り静かに頭を下げるエレン。

肩にかかるぐらいまで伸ばしたバニラ色の髪の隙間からアイスブルーの瞳を覗かせた無表情を直せば愛らしい少女だ。

彼女は頭を上げるとまたもや刀を眺め続けた。


「それじゃあ次は私ね」


エレンとは打って変わって元気良く手を上げる少女。


「私はアイシャ・クライアント。武器は今は片手剣だけど基本的に何でもいけます!出身はイーストエンドのミルウェイでお父様が爵位持ちだけど私のとこも殆ど名ばかりの貴族だから気にしないでよろしくね〜」


長い赤髪が特徴的なアイシャ。

武器は何で平気だと言う割りに体は細身で色白である。

それでも元気の良い笑顔が素朴な美少女といった雰囲気を醸し出す。


「では最後になりますが、自分は水上 暦と言い東の地出身です。武器はこの刀の他にも投擲針やダガーナイフなども使います。長いこと旅の中に身を置いてきたのでそれなりに野営や野草の知識もあるので遠征の際は役に立てたら幸いです」


とよく言えば謙虚な、悪く言えば消極的な紹介をする暦。


「質問いい?」


スッとアイシャが手を上げた。


「はい、何でしょうか?」

「何でそんな畏まった言い方してるの?私は死線を共にする仲間なんだし普通に喋ろうよ。ね」


アイシャが他のメンバーに視線を飛ばす。


「そうだね、変な気遣いがあるとかえってやり難いし素の口調で話そうよ」

「私は...どっちでも構わない」

「...まあ、お好きなように」


ウィリアムを筆頭に賛同を得たアイシャはもう一度暦の方を向く。


「ね、皆もああ言ってるし」

「・・・じゃあ、遠慮は無しで」

「よっしゃ!」


アイシャは苦笑気味に納得した暦の手を取り上に掲げる。


「東の人は謙虚だって聞いてたけど本当なんだね。それにしても東洋人って初めて見たけど、噂通りに綺麗な黒髪と黒い瞳なんだね」

「しっかもイケメンだね!惚れちゃいそうだよ」


ウィリアムやアイシャといったノリの良い面子が珍しい東洋人である暦に興味を持って積極的に話しかけていく。


「コヨミ...その刀、本物?」


エレンが二人の隙を狙って暦に尋ねる。


「本物だよ。銘は加州っていって水上家重代の名刀だ」

「へぇ」

「・・・興味があるなら持ってみる?」

「!っ....いいの?」


エレンは驚きを隠せない様で、小さな目を丸くした。

暦はその間にベルトから鞘ごと刀を引き抜いた。


「別に何の問題も無いよ、はい」

「ふわぁ!」


暦から刀を渡された瞬間に無表情だった彼女の顔に喜びの色が広がった。

そんな横でスピエンが暦の肩を叩いた。


「お前、さっきは語らなかったが東の地の貴族の当主か何かか?」

「・・・何故?と聞くのは野暮だな」

「当たり前だ。平民が銘入りの刀を持ってる筈も無いだろう。それに重代という言葉も庶民が使うものでは無い」

「・・・・」


問い詰めるスピエンに暦は黙ったままで何も答えない。


「だが奇妙なのはそんな刀をやすやすと他人に持たせる事だ。普通ならーー」

「スピエンさん」


暦は自分を掴む手をサッと振り払うとスピエンにだけ顔が見えるような角度で立った。

その顔は氷のような冷気を帯びていて、スピエンを氷漬けにする。


「余計な詮索は、よしてください」

「っ!」

「コヨミ、コヨミ!」


硬直するスピエンを他所に刀を差し出して呼びかけるエレンの方へ顔を向ける暦。

その時にはもう普段の彼の顔に戻っていた。


「ありが...とう」

「いや、気にしなくっていいよ。また何時でも言っていいからな」

「わかった」


楽しそうに会話する暦を見て、スピエンは何か底知れぬ恐怖を感じたのであった。

--------------------M.Gメモ--------------------



片手剣部 教官 クレタ・ミカーネ

Lv.1100

HP 14300

装備品 バスタードソード

備考

短髪の金のツンツン頭と額に走る古い切り傷が特徴的な長身でガタイの良い男。

今期の訓練兵団の総指揮を取ることになったがこれには裏話があり、一月程前にこの役を誰がやるのかと教官内で言い合いになった際。

「押し付け合う様な輩に未来ある若造は任せられない。俺がやる」と言って進んで取り組むなど面倒見は良いが、その分細かいことに非常にうるさいのが玉に瑕である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ