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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
28/87

〜ガーデンでの朝〜

〜side of Koyomi〜



「ん...眩しい....」


窓から眩しく射し込む日光に照らされて俺は目を覚ました。


腕の中で幸せそうに眠る紗季を見て、しばらくはどうして紗季がここに居るんだと疑問に思ったが直ぐに昨晩の事を思い出した。


(そういえばそんな事があったな...まさか俺自身も気づかなかった事に気がつくなんてな...まあ、ある意味紗季らしいか。ありがとう)


そんなことを胸中で呟きつつ紗季の頭を撫でると、くすぐったそうに顔を俺の胸に摺り寄せてくる。


紗季を撫でつつ壁掛け時計で時刻を確認すると朝の五時半だ。


「っん....ふぁ...」


頭を撫でられる僅かな振動で目を覚ました紗季があくびをしながら顔を上げる。


「おはよう、紗季」

「おはよ〜お兄ちゃん...ふぁぁ」


眠気が抜け切っていない様子の紗季がもう一度あくびをする。


「さて、顔でも洗ってくるか。紗季も着替えに部屋に戻りなさい」

「んー...はーい」


朝の仕度をしようとベットから降りるその瞬間を狙ったかの様に頭に声が響いた。


【おはようございます、ネリシャです。今日は七時より顔合わせの様なものがあるそうなので遅れないように気をつけてくださいね。場所は支給品の端末で確認できますので心配いりません。部屋の前に居ますので準備が出来次第出て来て下さい】


待っていたのではないかと疑いそうになるネリシャの声。


「紗季、どうも外でネリシャが待ち構えてるらしいから出る時は気をつけてな」

「はーい」


トコトコと玄関の方へ紗季が歩いて行くとしばらくすると何やら言い合う気配が漂って来た。


(まあそうなるよな...ん?)


支給品の入った鞄を覗いてみると何かが光っている。掘り出してみるとミーラスブリザで轟が使っていた端末機器だった。


(これが端末か...説明書は一応付いてるけど本当に一応程度の内容だな)


端末と一緒に半透明の包みに入れられていた説明書は簡単な使い方と端末の説明が書かれているのみである。


「えっと、この光ってるのは.....メール着信か。液晶をスライドして....あ、開けた開けた」


開いてみると昨日から幾つかのメールが届いていた。


説明書を片手に操作してやっとの思いで必要そうなメールを開く。


《From. 兵団管理委員会


おはようございます。

本日は午前七時より入学者同士での面会が学生区にてあるので遅れないよう気をつけること。


服装は当然ながら昨日配布した制服を着用してくるように。


場所はナビデータを送信したのでそれに従って行動するように。


諸君等の活躍に期待しています》


メール画面を閉じてマップを開くと二件の目標が表示されていた。


片方はこの建物の一階で、おそらく食堂だと思われる。

もう片方はだいぶ離れており、ガーデンの西端にあるこの寮区から出て中央区の方へと行かなくてはならない。


双方ともにこの部屋からの最短距離で表示されているが、所要時間は食堂で五分、学生区の指定位置まで約一時間となっている。


(少し寝坊気味か...明日からは五時に起きよう)


端末を机に置いて洗面所に向かい、ガーデンでの時間管理を脳内でしつつ顔を洗った。


「着替えは...こないだと同じ要領でやればいけるか」


鞄の中からシャツやパンツなどの衣類とジャケットやポーチ、剣帯など装備品を引っ張り出して身に付けていく。


「これで良し」


黒で統一された衣類に銀のボタンと胸元に輝くガーデンの紋章。

暗い印象の服装は、腰に帯びた刀の紅い鞘を目立たせた。


「・・・今度自分で黒い鞘を作るか」


しばらくは我慢だと自分に言い聞かせて部屋から出ると、疲れた様子のネリシャが壁にもたれかかっていた。


「おはよう、妙にグッタリとしてるけど何があった...んだ?」


本来の調子に戻ったせいで不意に出そうになった素の口調を押し殺して尋ねる。


「貴方達兄妹が仲睦まじい事は理解していたつもりでしたが...まさか夜を共に過ごす仲だとは思っていませんでした」

「なんだかもの凄い誤解をしてないか?」

「いえ、私の儚い夢が早々に散ったまでのことですから...お気になさらず」

「?」


ジト〜ッとした上目遣いでこちらを眺めてくるネリシャ。


(と、言うか...儚い夢って何?)


「一つ言っておきたいんだけど...確かに紗季と一緒に寝たけどもおそらくネリシャが考えてるようなことは何一つとして起こってないぞ?」

「えっ?本当ですか?」

「何を考えていたのかは知らないけど、おそらくはな」


誤解を解こうとすればするほどネリシャの顔が赤くなっていき、パクパクと音にならない声を出している。


「あ...いえ....そ、その...」


肩が震え出して、頭からは湯気が上がりそうな状態だ。


「すみませんでしたぁぁぁあぁぁ!!」


遂にその場の空気に耐え切れなくなったネリシャは180度回頭して、いずこへと走り去ってしまった。


その慌てようは普段の落ち着いた姿からは想像し難いものだ。


たまたま廊下に居た同期生たちは疾走する彼女を何事かと目を丸くして見つめて、そして自然に視線が俺へ集まってくる。


(どうしよう、非常に気まずい)


どうしようかと悩んでいるとちょうどよく紗季の部屋の扉が開いた。


「お待たせお兄ちゃん。あれ?あのエルフの女、あんな頑なにここに居るって言ってたくせに居ないんだ」

「ははは」


まさか自分の大いなる勘違いの羞恥に耐え切れなくなって自爆したなどと言えるわけもないので取り敢えず笑って誤魔化す。


「きっと何かあったんだよ。さあ、時間も無いし朝ごはんを食べに下りよう」

「うん、昨日の晩御飯食べてないからお腹減ったよ〜」

「寝ちゃった俺は兎も角、どうして紗季も食べてないの?」


胃の辺り摩る紗季に純粋な疑問が沸く。


「お兄ちゃんが食べないんだから私も食べないよ」

「今までは毎食一緒だったから気づかなかったけど、そんな昔の習慣をまだ続けていたんだ。もうそんな事気にしなくていいんだから、しっかり食べないと身体を壊すよ」

「いいの、私が好きでやってるだけだから...あっ」


健気だなと思いながら頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めた。


「さっ行こ」

「ん」


相変わらず腕に絡みついてくる紗季に苦笑しながら俺たちは食堂へと向かったのであった。



朝食を取り終えた俺たちはマップを表示させた端末を片手に目標の学生区へ向かっていた。


正直な事を言えば周りにも同じような様子の同期生が沢山彷徨っているので、その流れに従って行けば間違いは無いだろうが、念のため自分でも確認しておく。


時間にも余裕が無くなりつつあるので、早歩きで進んで行くが兎に角遠い。


「ガーデン...想像はしていたけどそれ以上だ」


片道で一時間もかかるなど普通の施設では考えられない事だろう。

島一つを丸々改造したガーデンの敷地面積は洒落にならない。


「伊達に有名ってわけじゃないか」


俺たちが必死になって歩き続けてやっとの事で目的地に辿り着いたのはそれから三十分以上後のことで、集合時間のギリギリ五分前といった頃であった。


蛇足をつければ、俺たちがついた時には既にネリシャはいつも通りの様子で待っていたのだった。

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