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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
27/87

〜真夜中の訪問者〜

後半が病気です...



〜side of Koyomi〜


カチャという窓を開ける音で俺は目が覚めた。


寝起きの頭であったが、鍵をかけ忘れていた事を思い出せたので風か何かかなと思っていると、足音を忍ばせて近づく気配が一つ感じられた。


「・・・・」


俺は体内の警戒度を最大まで引き上げると薄目を開けたまま身じろぎせずにいた。


(今俺は手元に武器は無い....いざとなれば素手でも十分だが、それだと加減が...)


鍵もかけずに全ての装備品を机の上に置いたまま居眠りをしてしまった己を深く呪いながら全神経を聴覚に集中させる。

それでも尚見失ってしまいそうな程完璧に気配が殺されているのだ。

金具の音が無ければ俺が目を覚ます事は無かっただろう。


気配はソロソロと音も無く移動すると静かに俺の枕元に立った。


「・・・」


気配は横を向いて寝ている俺の背後に立ったまま動きは無い。が、微かに吐息が荒くなっている。


その息の中に混じる小さな声を聞いて俺はもしやと思う。


(と...言うか、この声)


「・・・紗季?」

「あ...起こしちゃった?」


ぐるりと向きを変えて暗闇に浮かぶ紗季の姿を視認した。


「まあ色々と言いたいことはあるんだけど...取り敢えずどうやって来たの?」


俺はベッドから起き上がって淵に座る。


「ん?扉がオートロックで開けられなかったから私の部屋のテラスからお兄ちゃんの部屋のテラスまでジャンプして来たの。そうしたらこっちは鍵が空いてたからそのまま...」

「・・・確か10mは間があった筈だけど」

「私の身体能力なら余裕だったよ」

「はぁ...まあ座って」


得意げな顔をしながら俺の右側に座る紗季に俺は少なからず驚いた。

一年前に紗季のレベルを調べた時は600前半だったので、当時の彼女の身体能力ではテラスから助走ありでも到底距離が足らずに落ちていただろう。

まったくもって危ない真似をする妹だ。


「紗季、万が一にも届かなかったらどうするつもりだったんだい?ここは六階なんだから落ちたら助からないぞ」


俺は触る程度の力で紗季の頭に手刀をしてから叱咤(しった)する。


「ごめんなさい...でも...どうしても言いたい事があったの!」


俯いたままそう呟く紗季だったが急に立ち上がると俺の頭を抱きかかえた。


「お兄ちゃん、最近...特に海の戦いに出てから何か変だよ?戻って来たらネリシャとの会話に遠慮が消えたし、何だか変なオーラがもやもや纏わりついてるし、何時ものお兄ちゃんのお日様みたいな温かさも薄れてるよ?...何かあったの?」


後半になるにつれて紗季の鼓動と声が震えていく。


普段は何を考えているかわからない彼女だが、悩みや考え事を腹の中に溜め込みやすいという事は俺が一番知っていたはずだったというのに。


(俺は...また気づけなかったのか)


確かに思い返してみれば磯姫と戦って、その最中に俺の中で何かが吹っ切れて以来人間に戻ってもその反動の様なものが残っていた。

それが最も大きく現れたのがアリーナだっただろう。

精神安定剤で心の動きを止めた後、俺は無感情に対戦者達を斬り伏せていった。

あの無感情は薬の効果だけのものだっただろうか?

否、俺の中の狐が眠りきっていなかったのだ。

その人間らしからぬ冷たさを紗季は見抜いたのだろう。


「そうか...心配かけてごめんな」


俺は一言謝ると、そっと紗季の背中に腕を回す。

しばらくの間無言で抱き合っていたが、やがて紗季が今までの不安を吐き出すかの様に大きく息を吐いた。


「良かった、お兄ちゃんの温かさが戻って来た...幸せぇ」


俺の頭を抱えていた紗季はズルズルと下にさがっていって、やがて俺の腕の中に収まった。

さっきとは真逆の構図だ。


「ありがとう、紗季」


何と表現すれば良いのか思いつかなが、俺も冷えていた体の芯に熱が戻った様な気分になっていき、口から自然とお礼が漏れた。


「本当に、ごめんな...」

「んーん、平気だったよ。それよりもお兄ちゃんが元に戻ってよかった」


紗季の頭が動くたびに擦れる柔らかい髪の毛と、果物の様な柔らかくて優しい甘い香りが心地良い。


紗季の軽い体重がのしかかり抱き合ったまま静かにベットの上に倒れると、今度こそ二人とも無言で、しかしとても満ち足りた気分で眠りについた。




〜side of Saki〜


お兄ちゃんがねむってからからもう十分くらいが経った。


私たちは抱き合って、お互いの温もりを感じながら同じベットで横になっている。(まあ抱き合っているんだから当然だ)


さっき消えたお兄ちゃんの異変には長い月日を一緒に過ごした私でも変だと確信できたのはついさっきだ。

あのエルフの女は気配を感じるのが得意だと言ってたけど経験が足りなかったんだね。


「すーーっはーーーーっ」


お兄ちゃんの匂いを胸いっぱいに吸い込んで、代わりに不安な気持ちを吐き出す。


(気持ちいいな、お兄ちゃんの抱っこ気持ちいいな〜)


優しい私のお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃん。


「お兄ちゃん、愛してるよ」


お兄ちゃんの耳元で愛を吐露してから私も本格的に寝に入る。


少しだけ抱っこの力が強くなったのが、私は嬉しかった。

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