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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
24/87

〜渡さない〜

申し訳ありませんが、今回は短めになってしまいました。

暦たちはネギルから渡されたコートを一旦元の箱に戻して留め金をかける。


「ありがとうございます」

「ありがとうございました」

「別に気にすることはない。見た目の割りに軽いし場所も近くだったから迎えついでの片手間に持ってきたに過ぎん」


ネギルは礼を言う暦たちに適当に手を振る姿から不器用な優しさが感じられた。


「あの...その箱ってどこで貰えるんですか?」


紗季が小さく手を上げて質問する。


「ん?嬢ちゃんも合格したのか...っても殆ど二回勝てば合格できるがな。何位だい?」

「五十二位です」

「なら帰り道だ。後でで良いだろう」

「わかりました」


紗季はぺこりお辞儀をするとすぐさま暦の腕に自分の腕を絡める。


「お兄ちゃん、一時間後に入学式だよ!急いで着替えなきゃだね」

「そうだね...でも何処で?」

「アリーナの待機室だ。さっき放送で知らされただろう?」

「「「え?」」」


ネギルの一言に皆一様に首を傾げた。


「まさかとは思うが...聞いてなかったのか?重要な事も幾つか言っていたぞ」

「ネリシャはきいたか?」

「私達のコロシアムは会場が相当に沸き立っていましたから聞き取れなかった可能性もありますが?」

「そもそも放送なんて流れてたっけ?」


疑問符を浮かべている一同にネギルはため息を吐いた。

彼の顔には呆れたと大きく書いてある。


「まあいい、入学式までの放送は大切だから次からは聞き漏らすなよ」

「「「はい、すみませんでした」」」

「返事だけになるなよ。さて、待機室に向かう片手間に嬢ちゃんの装備を貰いに行くか。コヨミ、悪いがそこで寝てる変態を担いでやってくれ」

「わかりました」


暦は死体の様に伸びているエルメスを背負うとネギル達の後に続いた。




ネギルの案内の下、速やかに紗季の分の装備を手に入れた一行は暦たちの待機室へと行き着いた。


「俺は討伐隊長殿を看に戻る、式まで後五十分だ。さっさと着替えて式場に行くんだぞ。....念のため言っとくが、式場は下の階にある三番ホールだからな」

「はい、重ね重ねありがとうございます」


エルメスを小脇に抱えて去って行くネギルにようやく精神安定剤の効果が切れた暦が頭を下げて見送った。


「さてと...俺はいいから紗季たちが部屋で着替えてくれ」

「よろしいのですか?」

「気にすることはないよ」


暦はすまなそうに顔を傾けるネリシャに手を振る。


「さっき中身を見て気づいたけどコート以外は装備が同じなんだ」


クラーケン強襲の折にシラギの部下から装備一式を借りて着替えていた暦はコートさえ着てしまえばそれで着替えが完了してしまうのだ。


「戦ってる間にロングコートも無くなったし...本当に着るだけだから遠慮しないでいいよ」

「わかりました。ではお言葉に甘えさせていただきますね、行きましょうサキさん」

「じゃあ着替えてくるね!」


二人が部屋に入ったのを確認すると、暦も着替えるべくハーフコートを引っ張り出した。


(皆はハーフコートって言うけど、どちらかと言うとこれはジャケットだよな...それにしてもコートを着てないだけなのに誰も俺がガーデンの服を着ていることに気づいてなかったよな。案外適当なのか?)


いろいろな疑問について考えながら着替えていく内に、幾つか今の装備と新しいものに違いがあることに気がついた。


まずコートを出した時に一緒に出てきた剣帯代わりのベルトの形が異なっていたのだ。


(そうか...このベルトはあの変わった鞘が付けられる様になってるからか...まさか)


ガサゴソと箱の中を掘り返してみると、シャツやズボン類は今のものと変わらないが、ベルトやポーチ類が微妙に違うことに気がつく。

更には底に端末機という新装備が眠っていたので参ってしまった。


「・・・、取り敢えずベルトだけ変えて端末をポーチに入れればいいか。後は後々に着替えよう」


取り敢えずといった状況だが着替えを終えた暦は、引っ張り出した物を綺麗に箱に戻して女子二人を待った。


五分ほど経つと待機室の扉が再び開いて、着替えを済ませた紗季たちが姿を見せた。


「お待たせしてしまいましたね」

「お待たせ!」

「これで姿だけはガーデン生だな。さあ、式場に行こう」

「はい」

「はーい」


何時もの通り紗季は腕を絡めてきたが、今度は何故かネリシャも反対側で腕を組んた。


「え?」

「ヤキモチです」


まったくの想定外といった顔をする暦にネリシャは笑顔でそう言った。


「お兄ちゃんは渡さないよ?」


僅かに腕の力が強くした紗季は冷たさを帯びた声と共に睨む。


「港以来休戦していましたが...平和は長続きしませんね」


ネリシャは静かに首を振ると、紗季の耳元に口を近づけた。


「本当に私が異類の気配を感じたというだけで彼に声をかけたとお思いですか?」

「!」


美しい声の中にほんのりと妖しさを混ぜたネリシャの囁きに紗季は驚愕する。


「ネリシャさん、つまり戦争はこれからだ、って言いたいんだ...」

「ふふふっ...そうですね」


この時の渦巻く不穏な空気に暦があえて気づかなかったのか気づけなかったのかは永遠に謎である。

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