第8話:黒衣の追跡者と旧型(最新鋭)の限界
現代の政府裏組織「特務魔導防衛局」が登場し、彼らの最新兵器を未来の知識で翻弄する
「渋谷一帯の電波をジャック……? やるねえ、現代の国家権力も捨てたもんじゃねえじゃん」
スクランブル交差点から路地裏へ滑り込んだ僕たちを、異様な静寂が包み込んでいた。
さっきまで響いていたパトカーのサイレンが、霧が消えるように遮断されている。代わりに闇の中から現れたのは、全身を耐魔導漆黒スーツで固めた一団。
その胸元には、未来の僕もよく知る紋章が刻まれていた。
「『特務魔導防衛局』……通称、局。この時代でも、すでに裏でアノマリーの隠蔽と処理を行っていたわけか」
彼らの中心から、一人の男が歩み出てくる。仕立てのいいスーツに身を包んだ、冷徹な目をしたエージェントだ。
「そこまでのようだ、少年少女。これより、未登録のアノマリー駆除個体、および超常能力者の身柄を拘束する。抵抗は推奨しない」
男の合図とともに、局員たちが一斉に銃身の太い特殊アサルトライフルを構えた。
現代の防衛局が誇る最新鋭の魔導兵器『九六式・魔導圧殺銃』だ。
「おいボス、あいつらマジでやる気だぜ。ぶっ飛ばしていいか?」
刹那が指先をバチバチと鳴らすが、僕はそれを手で制した。
「待て、刹那。まともにやり合う必要はない。……あの銃、局が誇る最新鋭(笑)の兵器だが、未来の技術体系から見れば、ただの『欠陥品』だ」
「あぁ?」
「織絵、彼らの正面3メートルに『遅延結界』を。刹那、僕が合図したら、あの結界に向けて最大出力の1割の電撃を撃ち込め」
「り、了解!」
「チッ、1割かよ。ケチくせえな!」
僕たちの私語を「往生際が悪い」と判断したのか、スーツの男が冷酷に右手を振り下ろした。
「撃て(ファイア)」
ドドドドドッ! と激しい銃撃音が路地裏に木霊する。
放たれたのは、着弾と同時に魔導回路を強制停止させる電磁凝縮弾。
「今だ、二人とも!」
刹那の放った青い電撃が、織絵の展開した透明な結界へと激突する。
弾丸と電撃が結界の境界面で激しく交差した瞬間、僕は『レプリカント・ギア』の画面に、ある「周波数コード」を高速で打ち込んだ。
――九六式・魔導圧殺銃。
この兵器は、2030年の改良まで「外部から特定の高周波パルスを受けると、装填された弾丸の魔導エネルギーが逆流して自壊する」という、教科書レベルのセキュリティ脆弱性を持っていた。
「未来のハッキング・コード(バックドア)を開放する。……全銃器、強制オーバーヒート」
パチ、と僕が指を鳴らした瞬間。
「なっ――なんだこれは!?」
「銃身が、溶けて……っ!?」
局員たちの手元で、最新鋭のはずのライフルが一斉に真っ赤に過熱し、ドカンと小さな爆発を起こして火花を散らした。
彼らが慌てて武器を投げ出す。
「ば、馬鹿な……! 我々の最高機密である魔導兵器を、一瞬で無力化だと……!? 君たちは一体何者だ!」
エージェントの男が、初めてその冷徹な仮面を崩し、驚愕に目を見開く。
彼らにとっての最新鋭は、僕にとっては100年近く前の「骨董品」に過ぎない。手のひらの上で転がすなど、造作もないことだ。
「通りすがりの、ただの高校生さ。……織絵!」
「はい! ――『目眩ませ(フラッシュ・バン)』!」
織絵が放った強烈な光が路地裏を真っ白に染め上げる。局員たちが目を手で覆い、完全に視界を奪われた。
「行くぞ。追跡用のGPSの周波数もすでに書き換えた。僕たちは、現代のどのシステムからも追えない」
呆然とする局の連中を置き去りにし、僕たちは夜の帳へと鮮やかに消えた。
国家組織の最新兵器を、未来の知識で文字通り「おもちゃ」のように翻弄して突破しました!




