第7話:『雷帝』の陥落――最強の矛を我が手に
呆然とする刹那に「未来の真実」を告げ、彼をチームに引き入れる勧誘編
爆煙がゆっくりと夜の渋谷に溶けていく。
ひび割れたスクランブル交差点の中心で、金髪の天才――雷堂刹那は、自分の両手を見つめたまま動けずにいた。
「俺の、雷が……あんな、一瞬で……」
これまで「誰も自分についてこれない」と孤独な全能感に浸っていた少年が、初めて味わう完全な敗北感。いや、敗北ですらない。圧倒的な技術の「格の違い」を見せつけられたのだ。
僕は壊れかけの『レプリカント・ギア』の煙を軽く手で払いながら、地べたに座り込む刹那を見下ろした。
「立てよ、雷堂。そんなところで拗ねている暇はない。今の一撃で、現代の警察や防衛局の連中がすぐにここへすっ飛んでくる」
「テメェ……ッ! なんだあの力は! なんで俺の力の扱い方を、俺より知ってやがるんだ!?」
刹那が弾かれたように立ち上がり、僕の胸ぐらを掴もうとする。
だが、その前に織絵がすっと間に割って入り、冷たい、しかしどこか哀れむような瞳で刹那を射抜いた。
「そこまでにしなさい、雷堂刹那。今のあなたはただの『力を持て余した子供』よ。これ以上、私たちの司令官に無礼を働くなら、私が相手になるわ」
「あぁ!? 誰が子供だコラ、この女――」
「お前は、2120年の世界で人類最高峰の攻撃力を誇った『雷帝』だ」
僕が静かに放ったその言葉に、刹那の動きがピタリと止まる。
「……は? 2120年? 何言ってんだテメェ、頭バグってんのか?」
「バグっているのは世界の方だ。お前はまだ覚えていない。数年後、この地球に『災厄』と呼ばれる神の戦闘兵器群が降り注ぎ、人類が滅亡することを。そしてお前が、その最前線で多くの仲間を失いながら、最期まで戦い抜いた英雄だということも」
「……何、を……」
刹那の瞳が、激しく動揺に揺れる。
普通なら鼻で笑うような荒唐無稽な話。だが、先ほど僕が見せた「未来の技術」と、織絵の展開した
「不可思議な結界」、そして何より僕の目にある『無数の死線を越えてきた本物の修羅の光』が、彼の本能にそれが真実だと告げていた。
「俺が……未来の、英雄……?」
「そうだ。だが、前の世界でお前は死んだ。僕の力不足のせいでな」
僕は刹那の肩にそっと手を置いた。
「雷堂、もう一度僕の下で戦え。お前のその規格外の『雷』は、世界を救うために必要な最強の矛だ。今度は、お前を無駄死にさせない。僕が完璧に、その力の使い方をコーチングしてやる」
「……っ」
刹那は、僕の手を振り払うことができなかった。
プライドをへし折られた悔しさよりも、自分の「力」の本当の価値を理解し、必要としてくれる存在が目の前にいるという事実に、彼の魂が歓喜していた。
「……フン、意味わかんねえよ。タイムスリップだの滅亡だの、SFの読みすぎだろ」
刹那は不敵に、しかしどこか照れくさそうに笑い、ポケットから新しいガムを取り出して口に放り込んだ。
「だけどよ……。俺の雷をあんな風に使える奴の指図なら、悪くねえ。テメェが本当に俺を使いこなせる司令官かどうか、特等席で見極めてやるわ」
こうして、未来の最強のライバル『雷帝』が、正式に僕のチームへと加わった。
ピピッ――。
その時、僕のギアが再び不気味な電子音を鳴らす。画面には、渋谷の爆発騒ぎに群がるパトカーのGPS……そして、それらとは明らかに違う『未知の魔導波形』が、僕たちを包囲するように接近しているのを示していた。
「挨拶代わりに、歓迎会(追手)のお出ましだ。……行くぞ、二人とも。新星チームの最初の初陣(脱出作戦)だ」
『雷帝』刹那がチームに加入し、いよいよ最強の布陣が揃いつつあります! 第8話では、現場を包囲しようとする謎の勢力からの鮮やかな脱出劇が描かれます。




