第5話:渋谷崩落の予兆と、不遜なる『雷帝』
突然、俺の存在が完全に消えた痕跡を追ってきやがったのか?
渋谷を舞台に、未来の知識と新型デバイスで大型ボスを圧倒する無双バトル
第5話:ボスの出現現場で、まだ「未来の記憶」を持っていないはずの、後の最強の仲間と遭遇する運命の出会い編
「くそっ、駆。こいつ……急にレーダーから完全に消えやがったな?」…
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翌日、土曜日の渋谷駅ハチ公前広場。
人混みの中で僕の袖を引っ張ったのは、おめかしした私服姿の織絵だった。
彼女の視線は、僕の左腕にある『レプリカント・ギア』――正確には、彼女のスマホに仕込んだ簡易アプリに注がれている。
「驚いたか。昨日作った結界とギアの隠蔽機能の副産物だ。現代の科学はおろか、世界の因果律からも、僕の存在の痕跡は完全に消えている」
「本当に過保護な司令官ね。でも、消えるのはその間抜けなレーダー反応だけにして。私の前から消えたら、承知しないから」
織絵はふくれっ面をしてみせたが、その目は笑っていなかった。
僕たちは今、すれ違う有象無象の若者たちとは違う、血生臭い「戦場」の気配をその肌に感じ取っていた。
ピピッ――。
『対象の完全実体化まで、あと120秒。座標、スクランブル交差点の中心』
ギアの冷徹な電子音声が、終末の始まりを告げる。
「よし、織絵。術式展開の準備を。一般人の避難は――」
「――必要ねえよ。そんなチマチマしたことやってるから、お前らはいつまで経っても『二流』なんだわ」
突如、僕たちの背後から、鼓膜を震わせるような傲岸不遜な声が響いた。
振り返ると、そこにいたのは、派手な金髪にスカジャンを羽織った一人の少年だった。
ポケットに手を突っ込み、ガムを噛みながら、気怠そうにスクランブル交差点を見下ろしている。
その顔を見た瞬間、僕の脳内に未来の戦歴がフラッシュバックした。
雷堂 刹那。
未来の世界において、単騎で師団級の魔導兵器を消滅させ、人類最強の攻撃力を誇った男。後に『雷帝』と呼ばれる、僕の最大のライバルであり、悪友だ。
だが、未来の彼はもっと狂気に満ちた目をしていた。今の彼は、まだその圧倒的な才能に振り回されているだけの、ただの「生意気な天才」に過ぎない。
何より、彼はまだ未来の記憶を持っていないはずだ。
「おい、お前ら。そこ、特等席だからどけよ。今からそこで、おもしろい『花火』が上がるからよ」
刹那がニヤリと凶悪に笑った。その指先から、バチバチと青白い電磁火花が漏れ出ている。
記憶はなくとも、その身体に眠る規格外の魔導出力は、すでに現代の枠を飛び越えようとしていた。
「雷堂……。お前、アノマリーの出現に気づいて……」
僕が言いかけたその瞬間、世界の『音』が消えた。
ドゴォォォォン!!!
スクランブル交差点の真ん中の空間が、巨大なガラスが割れるように粉砕される。
現れたのは、全高5メートルを超える巨大な鋼鉄の異形。第1話の蜘蛛とは比較にならない、重装甲歩兵型魔導兵器『タイタン・ジェネラル』。
「ギ、ガ、ガガガガガガッ!!!」
怪物の咆哮とともに、周囲のビルから一斉に悲鳴が上がる。パニックに陥る渋谷の街。
「ハハッ! 来やがったな、デカブツ! 俺の『力』の実験台に丁度いい!」
刹那が狂喜の声を上げ、地面を蹴った。
常人の数倍の速度で怪物へと肉薄し、その右拳に、現代科学をあざ笑うほどの超高圧の雷撃を収束させる。
「死ねや、化け物がぁッ!!」
刹那の雷拳が、タイタンの胸部装甲へと叩き込まれた。
凄まじい電光が渋谷を白く染める。だが、僕はそれを冷ややかに見つめていた。
「ダメだ、雷堂。……お前のその攻撃じゃ、そいつは1ミリも削れない」
未来の知識が、僕の脳内で完璧な戦術を弾き出していた。




