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第20話:富士山(フォッサマグナ)救出包囲網――司令官の絶対戦術


「――小岩井一佐、体の具合はどうだ」


 『アーク・ノア』の作戦司令室。


 原始魔導のワクチン・リアクターによって敵の寄生プログラムを焼き切られ、完全に人間の理気を取り戻した小岩井一佐は、深々と頭を下げた。


「お気遣い痛み入ります、閣下。……五体満足、魔導回路のバイタルも正常です。何より、またあなたのお側で戦える誉れ、言葉もありません」


「お涙頂戴はそこまでだ。オッサン、体が動くならさっさと富士山の内部構造(データ)を吐き出しな」

 刹那が極大双刃『雷霆神威』の刃を弄びながら、不敵に促す。

 小岩井一佐は真剣な面持ちで頷くと、ホログラムスクリーンに富士山、そしてそれを縦断する巨大な大断層――フォッサマグナの立体地下マップを映し出した。


「富士山の地下数百メートル。そこには奴らが原始魔導を強奪するために築いた『人体改造・強制錬成プラント』が存在します。そして……そこには私と同じように仮死状態で生体パーツにされている、かつての防衛軍の生存者(仲間たち)が、まだ数百名規模で囚われているはずです」


「数百名……っ。そんなにたくさんの人を、あんな悍ましい姿に……!」

 織絵が悲痛そうに胸元を抑える。


「さらに、東京湾の電撃作戦(スピード・バスター)の失敗を知った神代は激昂しています。奴の背後にいる未来の『人体改造勢力』の命令により、48時間の猶予を待たず、フォッサマグナの封印を無理やり引き剥がして富士山を強制噴火させ、日本の中央から原始魔導を一気に吸い上げるつもりです」


「麗華、ターゲットの捕捉は」

 

「完了していますわ、閣下」

 麗華が『八咫烏』の超高精度透視スコープを覗き込む。


「富士山の五合目から地下に向けて、神代の暗黒魔導の出力が急激に上昇中。強制噴火の儀式開始まで、あと残り『15分』といったところですわね」

 猶予はわずか15分。敵の狙いは、日本列島を分断する大噴火。

 だが、僕の『観測眼』と演算脳は、すでにこの状況を完全に詰ませる戦術を弾き出していた。


「作戦を伝える。敵の強制噴火を逆利用し、囚われた仲間を全員同時に救出(サルベージ)する」


「あぁ? 噴火を逆利用って、どうすんだよボス!」


「アーク・ノアの主砲に、先ほど完成した『ワクチン・リアクター』の全エネルギーを装填する。――麗華、お前の『八咫烏』とアーク・ノアの火器管制システムを完全同調(リンク)させろ」

 僕はホログラムの富士山地下プラント、その特定の3つの「構造的欠陥(バグ座標)」をピンポイントでロックオンした。


「神代がフォッサマグナの封印を解くために開く『時空間転移点(ゲート)』。そこはエネルギーが剥き出しになる唯一のバグだ。麗華、そのゲートの隙間から、地下プラントの全域へ向けてアーク・ノアの主砲『ワクチン拡散弾』をぶち込む」


「地下の仲間たちへ、広範囲の強制救済パルスを流し込むわけですわね……!」


「そうだ。刹那、お前の『雷霆神威』の超伝導電撃を主砲の推進力(レールガン)に回せ。マッハ10でゲートの歪みを突き破る。綱臣、お前の『神岩城塞』の重力障壁を富士山の全域に展開し、万が一のマグマの吹き出しを1ミリの誤差もなく抑え込め!」


「「「了解(おう)ッ!!」」」


「織絵は僕の『天叢雲』と魔力波形を同調。ゲートが弾けた瞬間に、僕たちの魂をプラント内部へ強制転移(ハッキング)させるぞ」


「うん、いくよ、駆君!」

 5人の神話の武器と、未来の最高司令官の絶対的な戦術。

 神代が絶望と共に富士山の地脈を引き裂こうとした、まさにその瞬間、大空から光学迷彩を解いた黒き巨船『アーク・ノア』が、神話の巨神の如く姿を現した。


「神代! 前の世界でお前が諦めた仲間たちの命(未来)を、今ここで僕たちがすべて奪い返してやる!」


 富士山の上空が、黄金と青雷の輝きで白く染まる。


 二周目の世界で、絶望の歴史をハックする『大救出作戦』の火蓋が切って落とされた。


――(第21話へ続く)

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