第17話:オノゴロ島再臨――五神の兵器(アーティファクト)
東京湾から南へ約1000キロ。
マッハを越える速度で太平洋を南下した『アーク・ノア』の眼前に、現代科学の常識をあざ笑う光景が広がっていた。
そこは、近年突如として急激な拡大(大陸化)を始めていた小笠原諸島・西ノ島――いや、かつてこの世界を生み出した神話の地、『オノゴロ島』の成れの果て。
「――信じられませんわ。島全体が、まるで生き物のように脈動していますわね」
麗華が結晶銃の照準器から目を離し、驚愕の声を上げる。
海面から天突くように隆起した山肌からは、マグマの代わりに純度1000%の黄金色の原始魔導エネルギー(プロト・エーテル)が噴水のように吹き荒れ、夜の海を神々しく照らしていた。
「敵の転移反応はまだない。奴らが人体改造兵を送り込んでくる前に、あの中心核から結晶を回収し、僕たちの『本物の武器』を錬成する」
僕は『レプリカント・ギア』を操作し、船内の錬成プラントを限界まで過熱させた。
「綱臣、僕の先導に続け。お前の重力魔力で、原始エネルギーの暴風を抑え込むんだ!」
「了解です、閣下! ――『重力障壁』!」
僕と綱臣を先頭に、5人はオノゴロ島の中心、黄金に輝くエネルギーの源流へと足を踏み入れた。
肌を焼くほどの高密度エーテルの中、綱臣の展開した土色の障壁が、火花を散らしながらエネルギーの直撃を防ぎ止める。
「ここだ。みんな、手を貸せ!」
源流の最奥。そこには、地球の心臓とも言える巨大な原始魔導結晶『オノゴロの涙』が脈動していた。
僕はギアのハッキング・コードを最大展開し、未来の魔導工学理論を用いて、その結晶の膨大なエネルギーを5つに分割、各自の魂の波形へと強制同調させた。
「ぐっ……、あァァァァッ!!」
「これが……神風の、根源の力……!」
刹那の身体から青雷が、織絵から純白の光が、麗華から群青の魔力が、そして綱臣から強大な重力が吹き上がり、黄金の結晶へと流れ込む。
魂の同調率が全員一斉に30%を突破。
次の瞬間、アーク・ノアのプラントと連動した光の渦の中から、未来の知識と現代の日本が持つ因果が融合した、5つの『専用最強兵器』が姿を現した。
「おいボス……こいつは、最高だぜ……!」
刹那の手には、彼の暴走する電撃を100%指向性エネルギーへと変換する超伝導極大双刃――『雷霆神威』。
「これなら……もう誰も通しません」
綱臣が構えたのは、オノゴロの岩盤と一体化し、核爆発すら無効化する絶対防壁――『神岩城塞』。
「閣下、わたくしの視界は、これで世界の果てまで届きますわ」
麗華が引き締まった表情で握るのは、因果律ごと標的に弾丸を「必中」させる魔導狙撃銃――『八咫烏』。
「私も、駆君の征く道を完璧に護るよ!」
織絵の周囲に浮かぶのは、戦略級の結界を瞬時に多重展開する聖女の法具――『八咫鏡』。
そして、僕の右腕に錬成されたのは、かつて滅亡の戦場で僕が振るった最強の対魔導機兵の力を、人間の右腕サイズに凝縮した神殺しの魔導義手――『零式・逆行天叢雲』。
「素晴らしい。現代の日本の因果を吸い上げた、前の世界を遥かに凌駕する真・神器だ」
僕が右腕の『天叢雲』を軽く一振りすると、それだけでオノゴロ島を覆っていたエネルギーの暴風が真っ二つに裂け、静まり返った。
魂の覚醒、そして最強の兵器の獲得。
3ヶ月後の大決戦を前に、僕たちはついに、未来の敵(人体改造勢力)と対等以上に渡り合える『神の軍勢』としての切札を手に入れた。
ピピッ――。
その時、僕の右腕の『レプリカント・ギア』から、これまでで最も禍々しい、そして巨大な空間歪み
(アノマリー)の警告音が鳴り響いた。
『緊急警告。富士山直下フォッサマグナ、および東京湾の二箇所に、同時に最大級の歪みを感知。発生まで、あと48時間』
「――チッ、待ちきれなくなったか、未来の鉄屑ども」
刹那が新兵器を肩に担ぎ、獰猛に笑う。
いよいよ、世界滅亡のタイムラインが、僕たちの覚醒に呼応して強制的に前倒しを始めた。
――(第18話へ続く)




