第10話:地獄のブートキャンプ――司令官の鬼コーチング
駆の鬼コーチングが炸裂! 刹那と織絵の潜在能力を限界突破させる「魔導特訓」編
「――甘い。それでは実戦なら3回は首が飛んでいるぞ、刹那」
「ぐっ……、あァ!?」
日曜日の早朝。防衛局のレーダーからも、世界の因果律からも隠蔽された奥多摩の深い山林。
そこは、僕が『レプリカント・ギア』の隠蔽結界を最大出力で展開して作り上げた、臨時の「秘密特訓場」だった。
地面に膝をつき、激しく息を荒げる刹那の全身には、無数の小さな擦り傷が刻まれている。
対する僕は、ブレザーを脱ぎ捨ててワイシャツの袖を捲り上げただけの姿。手には、そこらの木を削って作っただけのただの木刀を携えていた。
「テメェ……っ。なんで魔力もねえくせに、俺の電撃を全部先読みして避けてやがるんだよ……!」
「言ったはずだ、お前の雷はただ垂れ流されているだけだと。筋肉のピクつき、視線の動き、そして大気中のイオン濃度の変化。未来の戦場では、それらすべてが『次にどこへ攻撃が来るか』の明確なサイン
(座標)だ」
僕は木刀の先を、刹那の眉間にピタリと突きつけた。
「お前の最大出力が『100』だとして、今の命中率は『1』にも満たない。戦闘とはただの暴力じゃない。高度な演算だ。脳を回せ、雷帝」
「クソがぁ……ッ!!」
刹那のプライドが再び爆発する。
彼の身体から、青白いプラズマが爆発的な質量で吹き上がった。しかし、今度はただ暴走させるのではなく、僕の言葉をなぞるように、必死でそのエネルギーを「右拳の一点」へと押し込めようとしていた。
「そうだ、その収束だ。……織絵!」
「はい……! ――『多重防壁・九層展開』!」
少し離れた場所から、織絵が可憐な声を響かせる。
彼女の周囲に、幾何学的な光の紋章を刻んだ純白の盾が、万華鏡のように9枚同時に展開された。
未来の記憶と魂の同調を急がせるため、彼女にも限界ギリギリの負荷をかけている。
額には美しい汗の粒が浮かび、呼吸は浅い。
だが、その瞳に宿る『最高司令官の盾』としての意志は、1ミリもブレていなかった。
「刹那、あの結界を全力で撃ち抜け。織絵、それを全霊で防ぎ止めろ。お前たちの限界(限界突破値)は、そんなものではないはずだ!」
「るせえええええッ! ぶっ壊してやるよォォォッ!!」
刹那が地面を爆破するように蹴り出し、青雷の塊となった拳を織絵の結界へと叩き込む。
ドゴォォォォォォン!!!
1枚、2枚、3枚と、織絵の結界がガラスのように粉砕されていく。
だが、5枚目を破ったところで、織絵の魔導回路が未来の記憶と爆発的に共鳴した。
「――まだ、です……! 『白銀の聖女』は、この程度で破らせない……ッ!!」
キィィィィィン! と大気が鳴動する。
残る4枚の結界の輝きが、一瞬で純白から「黄金色」へと変色し、その強度が跳ね上がった。
刹那の最大出力の電撃が、その黄金の壁に衝突し、激しい火花を散らして完全に霧散する。
「なっ……止まった、だと!?」
「はぁ、はぁ……っ。や、やった……!」
限界を迎えた二人が、その場に同時に大の字にひっくり返った。
全身の魔力を使い果たし、指一本動かせない状態だ。
僕は二人の元へ歩み寄り、『レプリカント・ギア』でバイタルとシンクロ率を計測する。
『魂の同調率:雷堂刹那 12%、白銀織絵 15%。潜在能力の強制引き上げに成功』
「上出来だ、二人とも」
僕は木刀を放り投げ、今日初めての笑みを二人に向けた。
「たった1日でシンクロ率が桁違いに跳ね上がった。これなら、3ヶ月後の『リヴァイアサン』戦までに、前の世界の全盛期の半分までは戻せる」
「ハッ……地獄だな。……だけどよ、悪くねえ」
刹那が空を見上げたまま、クタクタになりながらも満足そうに笑う。
織絵もまた、荒い息を整えながら、僕の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。
「これで僕たちの基礎体力の底上げ(ビルドアップ)は完了だ。次は――」
僕はギアのホログラム画面を開いた。
そこには、昨晩ハッキングした特務魔導防衛局のデータベースから抽出した、『3人目の適格者』の潜伏先が表示されていた。
「本格的に、次の『仲間』をスカウトしに行くぞ」
地獄の鬼特訓を経て、刹那と織絵の能力が爆発的に進化しました! 次の第11話では、いよいよ3人目の仲間を探す新展開へと突入します。




