フィールドワークと班決めとエレオノーラ
新学期が始まり、少し経って落ち着いてきた頃……。
「皆さん! 来週はフィールドワークを行います! なんと、騎士科の1年生との合同授業です!」
魔物学のクルクルした巻き毛の先生がそう言うと、教室中がざわついた。
「フィールドワーク?」
「来週だって」
「騎士科の男の子たちが来るの?」
「どうする?かっこいい子いるかな?」
「はいはい。楽しみなのはわかるけど、僕の話を聞いてねー」
先生はパンと手を叩き、聖女科の生徒たちの気を引く。
「フィールドワークは騎士科からは3人、聖女科から3人の合計6人で1グループを作ってもらいます。そのため、今日は皆さんで3人組を作ってください!」
自由に決めて構わないと言われ、ミアがわたしの元へ駆け寄ってくる。
「一緒にやらない?」
「うん!もちろん。だけどもう一人探さないといけないね」
どこかにちょうど一人入れそうな子はいないだろうか? わたしは教室をぐるりと見渡した。よく話しかけてくれる同級生たちは既に3人組を作っているようで、なかなか見つけられそうにない。ふと、教室の端を見ると貴族出身の子たちが集まっていた。あの子たちもグループを作るのかな?
「本当に申し訳ありませんわ」
「ええ。ですが、先生が3人組とおっしゃるんですもの」
「わたくし達4人では……ねえ?」
クスクスと笑う3人。しかし、取り残された貴族の女の子は高らかに笑った。
「問題ありませんわ! わたくしはエレオノーラ・グランフェルトですもの!」
金の糸のような髪をカールさせた少女。どうやらまだグループが決まっていないようだ。わたしは隣のミアにこっそりと話しかける。
「ねえ。エレオノーラ……さんに入ってもらえないか頼んでみない?」
「え……?」
露骨に嫌そうな顔をするミア。どうやらエレオノーラに苦手意識があるみたいだ。
「このままだとわたしたちもグループが決まらないままだし。優秀なエレオノーラさんに入ってもらえたらきっと上手くいくと思うの!」
ミアは困ったような顔を浮かべたが、「リリンがそう言うなら」と受け入れてくれた。
「ねえ。エレオノーラさん」
わたしは揺れる金髪に話しかけた。振り向いた彼女が身に付けている髪飾りは宝石がキラキラと輝いていてとても高そうだ。
「あら、なんですの?」
突然声をかけられたことに一瞬びっくりしたような顔をされたが、すぐにいつもの自信満々な表情へと変わる。
「わたしたち、まだ一人メンバーが決まってないの。一緒に入ってくれると嬉しいんだけど……ダメかな?」
「えっ……あっ……」
彼女はわたしの提案に戸惑っているようだ。もしかしてよくなかったのかな? そう心配していると……。
「もちろんですわ! わたくしを選ぶとはお目が高いのね!」
「本当!? よかった! エレオノーラさんがいたら完璧だね!」
「ええ。そうですとも!」
わたしはどこか誇らしげな彼女の手を引いて、ミアのところに戻る。
「入ってくれるって! よかったね! ミア!」
「えっ……うん……」
大喜びしているわたしとは対照的に、ミアはなんだか不安そうだ。そんな様子を感じたのか、エレオノーラは高らかに宣言した。
「わたくし、エレオノーラ・グランフェルトがいれば問題ありませんわ! 貴族ですもの! 平民はわたくしの後ろにいればよいのです!」
胸を張った彼女へわたしはパチパチと拍手を送り、ミアはさらに心配そうな顔をするのだった。
「今回のフィールドワークでは魔物を見つけるのが目的です。今から配るリストを見てくださいねー」
前の机から紙が回ってくる。わたしはそれを受け取って文字を追った。
(えっと……? スライムにスリーピーマウス、低級の魔物ばかりだ)
「魔物を見つけたら教科書で確認し、該当のマスにチェックを付けてください! 1匹発見したら1ポイント、そして、見事に討伐したら3ポイントです!」
先生は黒板にポイントの計算方法について書いていく。
「そして、最も得点が多かった3グループはちょっとしたプレゼントも用意しています! 皆さん、がんばりましょう!」
こうして説明が終わり、休み時間を告げるベルが鳴った。
「ちょっと、リリンさん。ミアさん」
エレオノーラがわたしたちを呼び出す。何の用だろう?
「来週のフィールドワークについて作戦を立てませんこと?」
「え? まだ来週だよ?」
「何を言っていますの! 1週間しかありませんわ!」
エレオノーラが髪を揺らしてプンプン、と怒る。地団太を踏む様子はまるでバイコーンのようだ。
「作戦って言っても……どんな魔物が出てくるのかはその時にならないとわからないんじゃないの? それに、騎士科の子たちがどんな人かも知らないし……」
わたしの陰に隠れながら、ミアは小さく問いかける。
「それはそうですが、今回の授業は上位3グループが表彰されますのよ! わたくしたちは必ず1位を目指さなくてはなりません!」
「1位? 3位までじゃダメなの?」
わたしが声を上げるとエレオノーラはキッと睨みつけてくる。
「このエレオノーラ・グランフェルトに1位以外は許されませんのよ!」
どうやら、とんでもない人をグループに入れてしまったのかもしれない……。後悔したが、時間は巻き戻ってくれそうになかった。
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