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ボロボロの身体と困難とポーション

 あれから、何度ズタボロにされたことだろう。ゴーレムから飛んでくる岩から防御魔法で身を守って、何回も吹き飛ばされて……。

「もう魔力切れで一歩も動けない!」と吹き飛ばされた先の床で、そのまま寝転がる。

「リリン。立てますか?」

「無理!もう魔力空っぽになっちゃったもん!」

 すると、ヴィオレッタ姉様はゴソゴソと懐から何かを取り出した。

「魔力回復用のポーションです。よく効きますよ」

 わたしはそれを受け取る。小瓶の中を見ると、少量の液体が満たされている。緑色でなんだかドロドロしていて不気味だ。

「ヴィオレッタ姉様ぁ……。これ飲んで大丈夫なやつ?」

「心配ありませんよぉ。それは我が研究部の開発した特性ポーション。効果は私で実証済みですから」

 どうやらヘーゼル姉様……じゃなくて主任が開発したもののようだ。わたしは小瓶の封を開け、一気に飲み干しす。

「ぐうう…… 苦いよぉ…… 苦すぎる‼」

 口に入れた途端、広がる強烈な青臭さと苦味。それに加えて生臭い臭いがわたしを襲い、思わず悶絶する。

「効き目の方はどうですか?」

 後味に残る苦味を耐えながら、わたしは自分の身体をよく観察する。さっきまで冷えきっていた指先がポカポカするような……?

「なんだか指先が温かくなってきたかも!」

「えへへぇ……。ポーションの効き目は問題なし、と……」

 わたしの感想を聞いたヘーゼル主任はいつの間にか手に持っていたノートに何かを書き込んでいる。

「……それ何に使うの?」

「現在こちらテスト段階でしてぇ……。この結果を元に実用段階へ移行できる可能性が高まりました!」

「効果はすごいかもしれないけど、味はもっとどうにかならなかったの?」

「味? 効能と何の関係があるのですか?」

「……」

 そうだった。ヘーゼル姉様はいつもこういう人だった。研究結果が第一で、それ以外はあまり気にしない人なのだ。

 どうやら、わたしは実験体にされたらしい。

 (魔王軍の兵士さんが使う頃には、もっと美味しく改良されていますように……)

 この願いが届くかはわからないが、どうか届いてほしい。


「魔力が回復したのでしたら再開できますね?」

「うう……」

 ヴィオレッタ姉様のするどい一言がわたしの背中に突き刺さる。

 でもこれは、わたしをただ虐げたいというものではない。わたしが生き残るための訓練なのだ。それを理解しているからこそ、足に力を入れて立ち上がる。

 ここまでの過酷な訓練の中で気付いたことがある。それは防御魔法で大きな結界を張ると、魔力の消費が多すぎるということだ。1発は確実に耐えられるかもしれないが、2発、3発と続けば持たない。だから、わたしを守るように全面に展開するのではなく、岩の軌道を読んで小さな結界を張る方がずっと効率がいい。

 そして……。

「避けられる岩は避けるっ!」

 右脚に力を込め、横に向かって跳躍する。わたしに向かって飛んできた岩は、そのまま壁に当たって砕け散った。

「良い調子ですよ! リリン!」

 訓練場の端から見ているヴィオレッタ姉様がわたしに向かって叫ぶ。


 最初は偶然だった。防御魔法が間に合わなくて尻もちをついてしまったところを、岩が頭の上を飛んで行ったのだ。

(これ、全部防御魔法で防がなくてもいけるんじゃ……!?)

「そうとわかればっ!」

 頭に向かって飛んでくる岩をしゃがんで回避。次の岩は足元を狙ってきたので結界で防ぐ。

 最初の頃よりも避けられる時間が長くなってきた。それなのに――。

「……っ!?」

 両手に岩を1つずつ掴んだゴーレム。同時に飛んでくる軌道に対処できない。わたしは再び吹き飛ばされた。


「大丈夫ですか?リリン」

「なんとか……」

 ふらふらになった足で瓦礫の山から立ち上がる。服と靴は既に砕けた岩の土煙で茶色く汚れてしまっている。

「あとちょっと!あともう少しで何か掴めそうなのに!」

 そう。わたしはこの同時に飛んでくる岩に対応できないでいたのだ。

「火球を放つ魔導具の詳細が不明である以上、同時に2つ以上攻撃されることは想定しておく必要がありますからね」

「そうだよね……。うっ、苦い……」

 また渡されたポーションに顔をしかめながらわたしは考える。

「避けるのと防御魔法を唱えるのが一緒にできたらいいのに。片方に集中すると、もう片方ができなくなっちゃうんだよね……」

 回避に集中しすぎると安定して防御魔法が唱えられず、防御魔法に集中すれば今度は岩が避けられない。今のわたしには選択肢がないように思える。

「……真正面から受け止めるのをやめてはどうですか?」

「え? どういうこと?」

「さあ、もう一度やりますよ」


 よく分からないアドバイスをくれたヴィオレッタ姉様は、ヘーゼル主任のところへ戻っていく。

 しばらくして、ゴーレムの頭の魔石が赤く光る。そして、岩が持ち上げられた。訓練再開だ。

(真正面から受け止めない……?それってどういう意味なんだろう……)

 わたしは深呼吸して、ゴーレムの動きに意識を集中させた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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