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報告と同級生と懐かしい思い出

「――レグナリア王立学園潜入任務についてご報告いたします。リリンの学園への潜入は予定通り成功。現在まで、正体の露見につながる事案は確認されておりません」

 魔王様が小さく頷く。

「聖女候補は?」

「現時点では特定に至っておりません。ただし、当初の予定とは異なる状況が発生しております」

「……続けろ」

「はい。潜入後、学園側による全生徒への聖女適性検査が実施されました。その際、リリン自身が治癒魔法への高い適性を有すると誤認され、一般科から聖女科に編入しております」

「…………」

 魔王様の紺色の目がゆっくりとこちらへ向いた。

「…………」

(なんでこっち見るの⁉)

 何も悪いことはしていないはずなのに、思わず背筋を伸ばす。


「結果として、聖女候補となり得る生徒への直接的な接触が可能となりました。想定外ではありますが、任務遂行上は有利な状況と判断しております」

「候補者は?」

「現時点で断定するには情報が不足しています。引き続き、調査を継続する予定です。」

「わかった」

 魔王様は短く答える。それで終わりかと思ったけれど――。


「リリン」

「は、はい!」

「学園はどうだ?」

「え?」

 任務について聞かれると思っていたので、予想していなかった質問だった。

「えっと……楽しいです! ミアっていうお友達もできました! それから授業も……あっ、難しいのもあります!」

 魔王様は黙ったまま、わたしの話を聞いている。

(報告ってこれでいいのかな?)

 不安になってヴィオレッタ姉様を見ると、小さく頷いてくれた。

「そうか」

 魔王様はそれだけ言うと、再びヴィオレッタ姉様に視線を戻した。


「ヴィオレッタ、妹と久しぶりに会えて嬉しそうだな」

「……アステル。リリンの前では魔王補佐官とお呼びいただけますか?」

「姉様と魔王様って仲良しなんですか……?」

 急に砕けた口調へと変わった二人に驚き、わたしは思わず口を挟んだ。

「ああ。学生時代の同級生だ。よくイタズラをしては、一緒に怒られていた」

「アステル! それ以上はやめてください! 怒りますよ!」

 魔王様とヴィオレッタ姉様が同級生! しかも、姉様と一緒に怒られていたなんて! 魔王領でもわたしの知らないことだらけだ。

「そういえば先ほど出会ったクラウスも同級生なんですよ」

「フッ……。懐かしいな。昔からよく3人で集まっていた」

「今は、魔王とその部下ですね」

 魔王様は小さく笑みを浮かべる。


「……話が長くなってしまいましたね。これ以上お時間を頂戴するわけにも参りませんので、私どもは執務室に戻ります」

「ああ」

 そう言って、わたしたちは部屋を出た。今度は来た方向とは別の方へと歩き出す。

「執務室って?」

「私に割り振られた部屋ですよ。リリン、よくがんばりましたね」

 ヴィオレッタ姉様はわたしの頬にそっと触れる。

「えへへ……」

 なんだかくすぐったくて恥ずかしい。

「それからリリン。休暇の間は好きな時に私の執務室を訪ねて構いません」

「それってどういう……」

「学園の課題があるのでしょう? 家でやっていても暇を持て余した姉様たちに邪魔されるだけですよ」

「でも……わたしが仕事の邪魔にならない?」

 姉様はわたしの目を優しく見つめる。

「静かに勉強していてくれるのでしたら問題ありません。私がいる間なら課題について質問してもいいですよ」

「うん! わかった! ありがとう、ヴィオレッタ姉様!」

 やっぱり姉様は優しい。頼りになる存在だ。

 こうして、また一つ私の居場所が増えたことに心を躍らせるのだった。

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