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長期休みと油断と友達

「姉様たちのお土産も詰めたし、これで大丈夫かな?」

 カバンの中身をチェックして、わたしはベッドに寝転がる。お風呂上がりで髪が濡れたままだが気にしない。

(姉様たちが見たら怒られちゃうかな?)

 でも今は寮の自室に一人きり。悠々自適というやつだ。

 

 突然コンコン、とドアがノックされる。

「リリン。入ってもいい?」

 どうぞー、と言いかけて私は固まる。そうだ。角を隠していない。

(まずい! 何とかしなきゃ……! でもどうやって⁉)

 慌ててタオルを頭に巻き、鏡で確認する。よし、これなら見えないはず!

 ドアを開けると寝間着姿のミアが立っていた。

「ミア! 何か用?」

「突然来ちゃってごめんね」

「ううん! 気にしないで!」

 ミアは私の頭をじっと見る。嘘⁉ もしかして角が見えてる⁉

「お風呂上がったばっかりだった?」

「う……うん! そんなとこ」

「よかったら私が乾かしてあげようか?」

 気を使ってくれたミアに「自分でできるから大丈夫! 乾いたらそっちの部屋に行くから待ってて!」と告げてドアを閉める。危ないところだった……。

 やっぱり髪は早めに乾かした方がいいのかもしれない。気を付けないと……。


 いつも通りの髪形に整えて、今度はわたしがノックする。

「お待たせ!」

「大丈夫。待ってないよ。……リリンは寝る前もその髪型なの?」

「あはは……なんだか普段と同じじゃないと落ち着かなくて……」

 わたしは揺れるツインテールの頭をかきながら必死にごまかす。

「それで、何の用だったの?」

「明日から長期休みでしょ? リリンは朝早くに乗合馬車へ乗るみたいだから挨拶しておこうと思って」

 

 そう。明日から学園の長期休み。入学してから初めて実家に帰るのだ。みんなには孤児院に帰ると言っているが、正確には違う。そこから姉様のツテを借りて魔王領に帰還するつもりだ。

「ミアも実家に帰るの?」

「うん。わたしの家は王都のすぐそばだから。もう少し遅い時間に寮を出るつもり」

 ミアがお菓子と暖かいお茶を出してくれる。いいな。わたしも部屋にお客さん用のかわいい食器とか置こうかな?

「お土産は? お菓子と何にしたの?」

「雑誌とか小説かな。みんなに『何がオススメ?』って聞いたらたくさん教えてくれたんだけど……1つに決められそうになかったからカバンが重くなっちゃった」

 サキュバスは昔から人間の間に紛れ込んで生活していたというくらい好奇心旺盛な種族だ。人間の国で流行っていると言えばきっと喜んでくれるだろう。

「孤児院って本も届かないくらい田舎にあるの?」

「えっと……国境付近だから最新のものはほとんどないの!」

 苦し紛れについた嘘にしてはまあまあ上出来な気がする。人間の国について何も知らないことについて問われた時、いつもこの嘘を使っているせいでどんどん孤児院が辺境の地になっていってる気もするが、気にしないでおこう。


「ミアに会えなくなると思うとちょっと寂しい」

「ふふっ。最初はお姉さんたちに会えなくて寂しいって言ってたのに」

「だってぇ……」

「わたしもリリンに会えないのは寂しい。でも休みが終わったらまた会えるでしょ?」

「うん! 長期休みが終わってもお友達でいてくれる?」

 こんなことを聞くとキョトン、という顔をされた。それからクスクスと笑いだす。

「当たり前じゃない! 大事なお友達だもの」

「本当⁉ わたしのこと忘れないでね!」

「わかってるよ。じゃあ約束ね」

 ミアはわたしの手を取って小指を絡める。

「これが約束?」

「そうだよ。知らなかった?」

 人間流の約束なんて初めてだ。

 わたしとミアはたくさんお話をした後、おやすみを告げてそれぞれの部屋に戻るのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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