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工房と角と杖作り

「――リリンさん。これは何の素材でしょうか?」

 先生はわたしの机の上を見る。

「えっと……馬?」

「馬? 馬に角はありませんよ?」

 しまった……言い訳を考えてなかった……。

「う……馬みたいな四足歩行の魔物が置いていったんです!」

「そうですか……あなたは1年生ですし、危険な行為は控えてくださいね」

 先生は首を傾げながらも、納得してくれたようだった。わたしが芯材として選んだのはバイコーンの角だ。部屋の隅にずっと転がっていたからちょうどいいや、と持ってきたのだ。スケベ馬とはいえ、一応精霊の身体の一部だから使えるはず。


 今日の授業は教室ではなく工房室という部屋に移動して行われていた。工房室には何に使われるかわからない道具たちが置かれている。今後使ったりするのかな?

「まず、素材を可能な限り細かく砕いてください。粒が大きいままだと、完成した芯の中で魔力の流れに偏りが生じます。」

 わたしは布に包んだ角を金槌で叩く。かなり硬かったけれど、何度かやっているうちにいくつかの塊に分かれた。

「ミア、大丈夫そう?」

「リリンはすごいね。竜種の牙がこんなに硬いなんて知らなかった……」

 どうやらミアよりわたしの方が力があるみたい。これも魔族の能力なのかな?少しだけ彼女の手伝いをすることにした。ガン、という音がして無事に牙が砕ける。

「えーっと……次はこれをすり潰すんだよね?」

 乳鉢に角の欠片を入れてゴリゴリと押し潰す。欠片たちは少しずつ小さくなっていき、最後には細かい砂状になった。早く終わったので周りを見渡すと、みんな色々な素材を使っているようだった。何かの毛や羽、綺麗な石、エレオノーラの机の上のあの小瓶に入ったドロドロの液体は……なんだろう。


「ここに魔晶石を浸した液体があります。一人1つ受け取ってください」

 わたしたちは薄く黄色に染まった液体を手に取った。先生によると魔力を注ぐ時の溶媒になるらしい。言われた通りに液体と角を砕いた粉を混ぜ合わせる。これが本当に芯になるのかな?

「混ぜた物にへゆっくりと魔力を流してください。一気に流してはいけませんよ?自分の魔力に素材を馴染ませるように。すると、中央から固まっていきます」

 魔力を流す……。自分の身体を再生したときは上手くいったけれど、自分以外のものに注ぐイメージがなかなかできない。わたしは指先から器に向かって意識を集中させる。

「杖作りで重要なのは、高価な素材を使うことではありません。自分の魔力をどれだけ均一に芯へ馴染ませるかです」

 ゆっくりと……均一に……。意識すればするほど緊張してしまう。うう……。何も考えず、力で何とかできたらいいのに。一向に固まりそうにない芯の材料を睨むが、何も変わらない。ミアの方をちらりと見ると、真ん中のあたりから少しずつ白くなっているのが見えた。

「ミア、すごい! もう固まってきたの?」

「うん。私こういう作業が得意なのかも」

「いいなぁ……」

 わたしも早くしないと!魔力を一気に注いで固めようとした。しかし、ブクブクと急に泡が発生する。

「うわあ!」

「リリンさん! 慌ててはいけませんよ。ゆっくりと、慎重に」

「はあい……」


「今日の授業はここまで。今日完成した芯を杖に組み込んでください。1週間後に完成した杖を提出すること。これを宿題とします」

 宿題かあ……。杖作り、わたしには難しすぎるかもしれない……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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