↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶を失くした悪役神官は総溺愛に気付かない  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/89

79.秘密

 聖堂の片付けを神殿騎士たちに任せると、俺たちはひとまずサロンで休憩を取ることにした。いつも通りエントランスに行こうかと思ったが、司祭たちも使徒たちも落ち着かない様子だったし、サロンに籠ったほうがいいだろう、とクリスが判断した。俺としては部屋に戻ってもよかったんだが、どうやら彼らはまた俺の心配をしているらしい。マーヤが全員分のお茶を持って来て、心配性たちとのささやかなお茶会と洒落込むことになった。マーヤのお茶は落ち着くな。

「まさか、神殿内に侵入を許すとは……」

 つくづくとクリスが呟く。これを機に、神殿に結界を張ることも検討したほうがいいのかもしれないな。だが、と俺は口を開く。

「今回はたまたまですよ」

 俺はキリオとともに妖精を見つけたことを彼らに話して聞かせた。鈴の音を辿って見つけた弱った妖精に俺とキリオの魔力を注いだこと、その妖精が街角の女王だったと思われること。街角の女王は自分を弱体化させ、侵入する隙を作ったのだ。

「司祭長殿も危険な状態だったのですよ」クリスが重々しく言う。「あれは狂気化(バーサク)の魔法です」

「狂気化(バーサク)……ですか」

「キリオ殿がいなければ、司祭長殿は理性を失って暴れ回るところだったでしょう」

 狂気化(バーサク)……つまり、狂人(バーサーカー)になるってことか。一般的にイメージする狂人(バーサーカー)は、とにかく力でゴリ押しする性質の存在だよな。

「あんたが暴れ回れば、この神殿は吹き飛んでただろうな。私たちごと」

 セオドアは明るく笑っているが、実に笑えないことだ。済んだ話だから笑えるだけであって。実際、俺の能力値で狂気化(バーサク)がかかれば、セオドアの言う通り神殿内にいたすべての者が無事では済まなかっただろう。そのとき、俺を止めるために戦うのは攻略対象たちとキリオ。

 あれ……? 実質、断罪イベントを回避した形になってないか……? フラン(俺)の断罪イベントが狂気化(バーサク)だった可能性はあるな。しかし、暴走する俺を彼らが止められただろうか。神殿騎士団も総動員すればどうかわからないが、俺を止められる人間はいるだろうか。

 例えそうだったとしても、彼らと戦わずに済んだのは本当によかった。狂気化(バーサク)で理性を失っていたとしても、彼らを傷付けることはしたくないからな。

「なぜ司祭長様が狂気化(バーサク)の魔法にかかるのですか?」

 リーヴが首を傾げる。確かに俺はあらゆる魔法の耐性を持っている。狂気化(バーサク)のような状態異常に関する耐性も持っているはずだ。

「それこそ妖精の話でしょう」ダンが言う。「妖精は司祭長様とキリオ殿の魔力を吸った。司祭長様の魔力に同調するよう魔法を調整したのです」

「ただ厄介なだけの魔物だと思っていましたが、想像の上をいっていましたね」

 俺は溜め息を落とした。街角の女王も俺が生み出した存在なんだろうか。国を騒がせるほどの魔物だったが、聖堂程度で済んだのは不幸中の幸いだったかもしれないな。

「いろいろ気になることはあるが……」と、セオドア。「あんたの“庭”というのはなんなんだ?」

 そうか、世界王の庭のことはもちろん誰も知らないんだよな。俺が庭に入ることができるのも、この世界を創った原作者だからってことだろうし。そもそもこの世界の人間に世界王の庭を観測できる者はいないかもしれない。

「それは……そうですね。私と、街角の女王だけの秘密、ということで」

 街角の女王は招待客だ。他にも俺が招待すれば庭に入れる者もいるかもしれないが、いまのところ、招待客を増やす予定はない。

「なぜ街角の女王なんですか⁉」キリオが不満げに言う。「街角の女王は消滅したんじゃないんですか⁉」

「街角の女王は消滅しましたよ。この世界からは、ね」

 俺は嘘は言っていない。この世界から街角の女王は消滅した。ただ、それ以上のことを説明することはできない。世界王の庭は極秘エリアだからな。フランは謎に包まれている、ということで、この意味深な微笑みで誤魔化されておいてくれ。

【誤魔化されていない可能性75%】

(そんなことまでパーセンテージ化するな)

 あれ、そういえば……。

「じゃあ、頭の中の人というのは?」

 セオドアの疑問に俺も疑問が湧く。キリオは「頭の中の人」と言った。つまり、ナビの存在を観測したのだ。まあでも、俺に含まれる要素を詳細に鑑定すればナビも何かしらの数値に現れるのかもしれない。

「それは――」

「それは司祭長様と僕だけの秘密です!」

 ここぞとばかりにキリオの瞳が輝く。握り締めた拳が勝利を告げていた。

「……そういうことで」

 ナビについては俺もいまだに解明できているわけじゃないしな。世界王が俺のために用意したシステム。俺でさえそれしか知らないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。