↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶を失くした悪役神官は総溺愛に気付かない  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/72

65.魔力供給

(くそ……こういうことかよ……)

 俺は自分の胸元に手を当て、解呪の魔法をかける。だが魔法は発動せず、俺は上手く息を吸うことができない。セオドアは「魔力封じ」と言っていた。その名の通り、俺の体の中で魔力が遮断されているのだろう。魔法が発動しないのはそのせいなのだ。

(ナビ、強制休息に入ってくれ)

 まるで壊れたラジオのような雑音を発するだけで、ナビは応えない。魔力封じによってナビも機能しなくなっているのだ。

 ダンがそばに来て、俺の胸元に手を当てる。魔力が流れ込んで来るのを感じるが、それは効果がないようだった。ダンは苦々しい顔をして、再び窓の外を覗く。おそらく、キリオを探しているのだ。キリオの魔法なら、この状況を打破できるのだろう。だが、キリオは神殿騎士団の援護に回っている。近くにはいないはずだ。

 ダンは俺のもとに戻って来ると、何か考え込むように俺を見つめる。それから、小さく息をついた。

「緊急時の無礼講ということで、お許しいただきたい」

 ダンは硬い顔でそう言うと、俺に覆い被さり、突然、唇を重ねた。驚いて動きが固まった俺は、魔力封じでまともに動くことができず、口内に侵入した熱い舌を受け入れざるを得なかった。逃げようとした俺の後頭部に手を添え、ダンは深い口付けを俺にもたらした。それと同時に、全身に休息に魔力が行き渡るのを感じた。それに合わせるようにして、性的快感と似た感覚が背筋を走る。このままではまずい。そう思うのに、後頭部に添えられた手は俺を逃がしてはくれない。そうしているうちに、俺は自分の魔力回路がこじ開けられるのがわかった。それはダンにも伝わったようで、ダンはようやく俺を解放した。魔力が全身に広がるのを感じながら、俺は呼吸を整えようと短い呼吸を繰り返す。そのあいだ、俺の体には痺れるような感覚が残っていた。

「司祭長様!」

 切羽詰まった声に視線を向けると、キリオが俺のもとに駆け寄って来る。その後ろにクリスの姿もあった。セオドアが探して来てくれたのだろう。

 キリオは俺のそばに膝を折り、俺の胸元に手を当てる。先ほどのダンの無理やりな魔力供給とは違い、温かい魔力がゆっくりと全身に行き渡るのを感じた。

「魔力封じは解けているようですが」キリオが言う。「随分と乱暴にこじ開けたみたいですね」

 それがどういった方法であるか、キリオは知っているのだろうか。もし知らなかったとしたら、それを聞けば激怒するかもしれない。ヤンデレを発揮して、ダンを殺そうとする可能性だってある。きっとダンの行動は他言しないほうがいいだろう。

 キリオの魔力が俺の中を優しく滑っていくと、耳の奥で雑音が鳴った。

【魔力供給が完了しました。魔力回路の安定化を持続します】

 どうやら魔力封じが解除されて、ナビも通常の機能を取り戻したらしい。あとはナビに任せておけばいい。

「これでひとまずは大丈夫です。あとは魔力を使わず、安静にしていれば安定するはずです」

「団長は司祭長殿を連れて神殿に戻ってください」クリスが言う。「こちらはもうすぐ片付きそうです。やつらはセオドア様のいかりを買ってしまった」

 俺は思考を巡らせる。街を蹂躙するのは魔物だが、あの少女に化けたものは魔物の気配を感じなかった。おそらく、すでにどこかに逃げているだろう。セオドアは、あの魔物の中から俺の魔力封じの犯人を捜しているのだ。

 俺は民の援護を司祭たちに任せ、ダンの馬に乗って神殿に戻ることになった。

 あの少女は何者だったのだろうか。魔物であったことに変わりはないのだろうが、その正体は計り知れない。ハーグレイヴズ神がキリオに降ろした神託は、俺の危機を報せるものだった。ハーグレイヴズ神はあの少女の正体に気付いているのだろうか。

 そう考えていると、次第に瞼が重くなってきた。魔力封じは解呪されたが、体が万全の状態に戻るまでまだ時間がかかるのだろう。

【生命維持のため、強制休息に入ります。魔力回路の安定化を持続します】

 ナビの機械的な声を最後に、俺の意識は途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。