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記憶を失くした悪役神官は総溺愛に気付かない  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


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10.エターナリア王国

 いやー、参ったね。ひと晩、部屋にこもって本を読み込んでみたけど、本当に文字がひとつもわからない。この身体はもともとこの世界のものなのだから、目もそのはずなのだが、頭の中身が変わったから、ってことなのだろうか。

「ナビ、なんか翻訳アプリみたいなものはないのか?」

【私にその機能はありません】

「だよなー」

【ですが】

「おっ」

【ご自分の能力をご覧ください】

 ナビの機械的な音声が言うのと同時に、俺の目の前に青色のボードが現れた。ゲームでよく見るステータスウィンドウだ。体力値、魔力値、魔法、技巧(スキル)……等々、俺の能力が一覧になって書き出されている。

 技巧(スキル)の中にひとつ、気に留まるものがあった。

「これは……読解力?」

 説明を読んでみると、どうやら解読できない文章を頭に叩き込むという、いままさに俺が求めていたどんぴしゃの技巧(スキル)だった。

 ついでに他の技巧(スキル)や魔法を見てみると、生活に必要なものから戦闘に必要なものまで、あらゆる技巧(スキル)と魔法が備わっている。神官らしく、回復系の魔法も充実していた。体力値と魔力値は……完全に魔法人間だ。体力値が恐ろしく低い。生きるのにギリギリの筋肉しか持ち合わせていないということだろう。

 さて、じゃあ「読解力」なる技巧(スキル)を試してみよう。

「これはどうやって使うものなんだ?」

【中指と薬指で文字列をなぞってみてください】

 本当に便利だな、このナビ。ナビと呼んでも異議を申し立てない辺り、本当に人間の知能とは別物なのだろう。俺だったら「適当な名前を付けるんじゃねえ!」って怒ってるところだ。

 ナビの言う通り、中指と薬指で文字列を左から右へなぞる。すると、どうだろう。頭の中に言葉が次々と流れ込んで来るではないか。内容も完全に理解もできる。

「こんな便利な技巧(スキル)があるならもっと早く教えてくれよ」

 ナビは答えない。実に都合の良いナビゲーターだ。

 さて、まずはこの国のことだ。

 この国は「エターナリア王国」というらしい。昔から貴族制度に支えられて成り立ってきた国だとか。まあ細かいところははぶこう。いまの俺には不要な情報だ。んで? 王族の同性婚が決まったのは、二百年前。当時の王太子は王位継承権を獲得していたが、それが気に入らなかったのが第二王子。ふたりの王子にはそれぞれの派閥があり、その派閥同士が争うことになった。争いの上、王太子が勝った。それ以来、この争いを二度と起こさないため、王太子以外は同性と婚姻を結ぶようになった、と。

 こういったことは、どの世界でもあり得ることなんだなあ。とは言え、俺がいた世界で考えると、それこそ物語でしかあり得ないが。

 んじゃ、次は教団のことだ。教団が崇拝しているのが、世界王国。その中でも、ハーグレイヴズという万物の神の加護を受けているとされている。世界王国の中でも、高い地位を持つ神らしい。

 万物の神か。俺がいた世界の国では八百万の神が存在したらしいが、それがひとつに凝縮されたようなものだろうか。無宗教だったからよくわからないが。

 教団は、司祭長と司祭と呼ばれる神官、使徒と呼ばれる教団員で構成されている。中でも司祭長はハーグレイヴズ神の加護を受け、特別な力を持つ高位の存在。

 なぜフランはこんなに若くしてそんな偉い地位に就いたんだ? 俺の見立てでは、たぶんまだ二十代だ。世界王の寵児……。フランがそうだったとしても、俺がこの身体に宿った理由は?

 異世界転生と言えば、恵まれなかった人間がチート能力を使って成り上がる、ってのが定番だが……。フランが恵まれない人間だったとは思えない。ステータスを見たところ、チート能力を持っている気配もない。魔力値はだいぶ潤沢しているが、おそらくチート能力ではない。魔法を見るに、回復に特化した魔力だ。チート能力と言えば「全属性適性あり」が定石だ。俺のいまの能力は回復系にだいぶ偏っている。

 前司祭長の罪を帳消しにするため、フランが司祭長に……。だが、教団は黒い噂に包まれている。フランも清いだけの人間ではないんじゃないか?

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