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電脳ハンター 伝送路に愛は残るか  作者: 秋野PONO(ぽの)
第6章 再接続

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第38話 皆まで聞かない

「住所を装って、管理社員として堂々とPCを新規払い出しさせるとか、やべえやつだな」

 ヒロユキはそう言いながら、手でぱたぱたと自分を扇いだ。

「日本の『住所があれば安全』って思い込み、そこを突いてる。住所神話をクリティカルに刺してきてる。普通に怖い」


 夏の終わりとはいえ、まだまだ暑い日もある。

 

 ザーッと強い風が吹いて、コリンダーのかぶっていた帽子を飛ばしてしまう。ヒロユキが帽子を器用にキャッチするが、「風強いから、たぶんまた飛ぶぞ。持っとくな」と洋服のポケットに入れる。

 

 それをずっと見ていたコリンダーは、駅の方へ歩いていく彼の背中を見たまま、動けなくなった。

 ヒロユキが戻ってきて「どうした?」と慎重に問う。

 ヒロユキはそのまま無言で木のベンチに腰掛け、ペットボトルの水を取り出した。

 コリンダーも隣に座る。

  

「……知ってます。あなたの癖。守ろうとするほどに、背負い込む。それ、好きじゃない」

 ヒロユキはわずかに肩をすくめた。

 

「……見くびんなよ。おれだって知ってるよ。コリンダーの癖。気づいてしまうほど、隠そうとするほど、嘘が下手になる」

 コリンダーの瞳が揺れる。

「だって、自分でも、気づいてたろ。ログのポート番号」

 ヒロユキの瞳がわずかに緩む。

「……お前は嘘ついてた。でも理由も知ってるよ。真面目だもんな」

 コリンダーは、ついに目を伏せてしまった。

「でもなぁ。お前に嘘つかせたのは、俺が悪い。信じてもらえないって、思わせた」

 ヒロユキは瞳を覗き込むように少しだけ顔を下げる。

 

「あなたの、背負ってるものを、一緒に……」

 

 それ以上はうまく言葉にならなかった。

 

 顔を上げたコリンダーの瞳は、もう水がいっぱいに溜まっていて、こぼれる寸前で、ヒロユキははっとする。

 

 ――めちゃくちゃ、目が大きいのな……。

 泣きそうな顔を見ているのが苦しくて、そんな場違いなことを考えた。

 

 目を細めて、コリンダーの目元を右手で隠すと、ゆっくり唇を重ねる。

 皆まで聞かない、とでも言うように。

 

 羽根のように軽い沈黙のあと。

 コリンダーは額を重ねて、言った。

「……あなたは、優しすぎるから」

 今にも泣き出しそうなのに微笑むその顔が、あんまり綺麗でヒロユキは言葉を忘れてただぼんやりと、コリンダーの顔を見た。


 かちり、と頭の中で鍵がはまったような音がする。

 気づいてしまった。

 もう、離れられない。

 

 その時、二人はまだ知らない。

 その選択が、二人の運命を決めてしまったことを。

ここまで読んでくださってありがとうございました!


現在、改稿版を準備しており、将来的には賞への応募も考えています。


本編もここまでで約2/3が終了しました!このまま8月まで走りきる予定です。


「この場面が好きだった」「このキャラが印象に残った」など、一言でも感想をいただけると、とても参考になります。


応援してもいいよと思っていただけたら、★をいただけると作者が飛び跳ねて喜びます。


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