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電脳ハンター 伝送路に愛は残るか  作者: 秋野PONO(ぽの)
第2章 揺らぐ日常

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第18話 彼女は眠らないー後

ある日、カンティーナは伝送路の転送口のパターンチェックを行っていた。興味はないが、ほかにやることもないのでアンフェルミアの指示に従って業務をこなしていた。

 伝送路監視用のパネルが全面に貼られた小さな部屋。インターフェースに頭部の配線を繋げばキーボードもセンサーもいらない。部屋は静けさに満ちていた。

 ふと手元の小さなモニタを見たカンティーナの手が止まる。

 通信要請ランプが点滅していた。

 興味を惹かれて接続すると、折口だった。


「カンティーナか?!回線装置保守中なんだが。本部と連絡が取れないんだ!エンダーが!」

 監視カメラを見ればエンダーに絡まれているようだ。

 あれは高レイヤーエンダーか。

 生体コアのエネルギーを奪うタイプだ。見れば折口の体に絡みついている。

 折口はそれを必死な様子で振り払うと続けた。

 

「どうも生体プロトコルの一部がエンダーに食われたみたいで、息が苦しい。至急救助を!」

 生体プロトコル?遠隔スキャンをかけると応答系がバグってる。

 くだらない。応答系なら命に別状はない。ただ、通信経路が閉ざされるので多少息苦しくなるだけだ。

 カンティーナはHalloパケットの送信を行った。

 一度疎通を取れば直る気がしたからだ。

 本当に直るかは知らない。

「おい!早くしろ!このポンコツAIが!?」

 カンティーナの表面体温が、わずかに下がる。


 それはただの好奇心だった。

 Halloパケットを0.1秒感覚で連続送信してみたのだ。


 Hallo

 Hallo

 Hallo

 折口はそれを疑いもせず受け入れた。救済だと信じていた。

 しかし、どんどんあふれてくる。

 やがて声が震え始めた。

「なんだ……!やめろなんだか、息が……」

 Hallo

 Hallo

 Hallo

 

「苦し……!やめ……」

 

 声はそこで途絶えた。

 なんの感情もなく、カンティーナはただ観察していた。

 奇妙な事に気づいた。

 折口の体が膨れている。

 異常パケットで、膨張を?

 

 まさか。

 

 パケットに物理的な質量はない。

 鼻で笑う。しかし、観察を続けるうちに画面の向こうはさらに奇妙な様相になっていく。

 カンティーナにエンダーの知識がもっとあれば、10分も経ったのに体が崩れて塵にならないことに、不信を抱いていただろう。

 しかし、体が崩れないどころか、そのままの輪郭でふらりと立ち上がったのだ。

 身体は半透明の幽霊のような。

 

 そこまできてカンティーナは気づいた。

 エンダーだ。

 人間が、思念でなく生身のままエンダーに?

 食い入るように画面を見ていた。やがてにっこり笑うと、アンダーグラウンド伝送路の秘密の帯域を使ってヘヴンに通信をつないだ。

「どうしました、カンティーナ様」

 恭しくヘヴンが頭を下げる。

「ねぇ、ヘヴン。エンダーって保存できると思う?」

 暗い伝送路に一滴の血を垂らしたように、カンティーナの唇は暗い笑みで輝いていた。

 

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