独裁主義
「え?お、おう…。」
なんか言葉も出ない。自分の仕事で手一杯で、部活も顧問をまともにやっていなかったせいで、そんな悲惨なことに…?
「せんせーは平和な部活と強い部活、どちらを望みますか?」
ユウスケと名乗る子が究極の二択を選ばせてくる。
「すごく個人的な感想にはなっちゃうけど、私は部長に合わせちゃうかな。人の上に立つ人って、なんか魅力がある。理解できないことも多いけど、なんとなく判断は委ねちゃうかな。」
私が担任のクラスの子、ユウセイ君がほら見ろ、みたいな表情をしている。
ユウスケ君は少しムッとした顔になった。
なんか頼りなくてごめんね。部長が許せないのに私は部長に合わせるなんていってしまって。
「せんせーの名前はなんですか〜?」
ユウスケ君が聞いてくる。
「ユリアだよ。」
「ユリアせんせー、ご意見をありがとうございました!」
癖が強いけど多分いい子なんだろうな。
「えーと、ユリア先生は独裁主義っと!」
ユウスケ君は何やらメモを取りながら去っていった。え?独裁主義?なんか、ヤバそうなやつみたいじゃん…。
「いや、そこまでは言っていないんじゃ…?」
ユウスケ君が冷静にツッコむも、彼は聞いていないようだ。
ということで、何ヶ月ぶりかわからないが部活を見にいってみた。
確かに、同じ人がずっと球を打っている。他の人は筋トレやら球拾いやらしながら交代交代で台を使っている。
これは問題だけど、私が言ったところでだよな…。
以前、ユメちゃんがしてくれた話だと、この卓球部の部長はどこか癖が強く、また圧倒的なカリスマを持った者がなることが多い傾向にあるんだって。
そして実力も上だから独裁的になるんだと。姉の情報らしいけど。
「なあユウセイ、ここの部活さ、独裁主義多くね〜?顧問まで独裁主義者だぞ〜?」
腕立て伏せをしているユウセイ君に、ユウスケ君がしきりに話しかけている。
「全部責任を部長に背負わせたほうが楽だからですよ!」
めっちゃ迷惑そうな顔をしているけど、なんやかんや相手をしてあげている。
「え〜、まじむり。まあ、だから俺は大人向けのクラブチームで夜な夜な孤独な練習をしてるってわけなんだけど。」
あ、もしかしてユウスケ君は帰宅部…?にしてはまるで部活に入っているかのような態度だけど。
「ユリアせんせー、最終的な責任は顧問にいくだろうから、頑張ってくださいね〜!」
筋トレチームに近づいた瞬間、にこにこ笑顔でユウスケ君が話しかけてきた。
周りの部員たちがびっくりしてるじゃないの。部員じゃないからって好き放題してるのかね…。
よくここにいられるね。みんな気まずそうに私を見ていたのに、部外者のユウスケ君は何も感じないから無敵だな。
「私は新任だし、一応今日は顔を出した。つまり、責任は完全に顧問としての職務を放棄しているベ
テランの加瀬先生にいく!」
笑い声が一帯を包んだ。しかし、誰一人として、私も含めて、目は笑っていない。




