読空主義
外周、筋トレ、球拾い。ラリー、筋トレ、球拾い。それらを黙々と淡々とこなして部活は終わっていく。 運が悪い日はラケットを握れずに終わる。
それでも仕方ない。この部活は完全な実力主義にな
った。ラケットの握り方さえ怪しい初心者の俺はこうなるしかなくなったのだ。
「ねえ、君卓球部?」
走っていたら話しかけられた。だ、誰?
「は、はい…。」
軽く睨む。何者だこの人。卓球部じゃない。
「そんな目で見ないでくれよ〜。俺っちはな、ゆめっちにオルグされて、卓球部を共産主義化するために偵察をしにきたんだよ。あ、名前?ユウスケだぜよろしく〜!帰宅部だぜ!」
なんか癖の強い人に絡まれてしまった…。今日は星座占い最下位だったからかな。
「そんでさ、なんで走ってるやつと球を打ってるやつと球拾ってるやつがいんの?みんなおんなじことするべきじゃね?」
この人完全にユメ先輩の男性バージョンだ。平等を夢見てる。
「ここは正式に実力主義になりました。」
俺が言うと、彼は信じられないということを全身で表現しだした。
「え?マジ資本主義の極みじゃん!なにそれディストピア?」
確かに残酷だけど、入部した以上は空気を読んで従うしかない。俺は部活に入っていたという実績が欲しいだけだ。変に騒ぎを起こして悪い評価がついたらたまったもんじゃない。
あと、やりたい部活がなかったから、“どれにしようかな神様の言う通り”で決めちゃった俺が悪い。
「そういや、君の名前は〜?」
あ、確かに言ってなかった。
「ユウセイです。」
彼はなにやらメモをし始めた。え、そこまでガチでやってるの?
「この部はどうですか?嫌ですか?」
堂々と聞いてくる。しかし、改革派の部員を密告して部内密告ラッシュへと導いた保守派のユウ先輩が近くに!めっちゃこっち見てる!絶対本心は言っちゃいけないやつだ!!
「普通です。」
無難な答えで済ませた。
「あ、あの、俺行かないと…。」
「ん?あー、部活中か。すまんすまん。ユウセイ、協力ありがとな〜!」
いや協力してない、してないよ、やめて、そんなこと言わないで!!
今日の星座占いは3位。悪くないな。じゃあ、昨日のことは多分密告されてない。ユウスケさんは、俺以外の人にも同じように聞いていた。
そして、みんな俺みたいにぼかしていた。誰も密告の必要はないな。
あれあんまりいい気しないが、やらないと俺が密告される。
部全体がこうなった以上、もうこのまま突き進むしかないだろう。部長交代までは…。
――交代したとて、本当によくなるのかね。




