声援主義
「ナイス〜!!」
凄い!さすがは部長.スーパープレイだ!!なんとなく横を見ると,ユメちゃんが顔をしかめていた.
「どしたん?ユメちゃん?」
「あ,その....耳が痛いです....」
「あ,ゴメン....近すぎたね....」
やばい,ついつい....この大会ならではの一体感,マジで夢中になっちゃうわ〜.
「あれ?そういえば,ユメちゃんって拍手しかしないよね.」
彼女は痛いところを突かれたような表情をした.
「べ,別に声を出さなきゃいけない訳じゃないですし....」
「まあね.でもやっぱ気持ちって大事じゃない?」
少し困ったような素振りを見せる.
「まあ,確かに,心理学的にはいいんですけど....強い人はそれで良いんですよ.でも,そうでもない人だとプレッシャーになってかえって逆効果なので....僕も応援はプレッシャーになっちゃうタイプだし.しかし,それで応援するか否かを変えるのはよくないじゃないですか.だから,とりあえず拍手だけにしています.」
「へー.難しい話はわからんけど,応援あったほうが,こう,一体感が生まれるというか,なんかアガるじゃん!」
やっぱみんなで声を出して盛り上げていきたい!!
「つまり,僕も声を出せということですね.僕は感情論は好かない者なので.」
そして彼女は審判席へ向かった.え?何この温度差....ユメちゃん,あのかわいいルックスでこの
ギャップは反則っ...!
やばい,あたしが好きになるばかりだ.でも,ユメちゃんはあたしのことを見向きもしないな....せや!いいこと思いついた!
「ユキ先輩!お久しぶりです〜!」
そう,ユメちゃんのお姉さんにユメちゃんのことを聞けばいいんだ!
「1時間後にはあいつらがくるから,あんまり長く相談には乗れない.手短かに頼む.」
「あいつら?」
「反乱分子たちさ.新自由主義者と右派修正主義が今のところか.そういや,君はキャプテンだっけ.大変だな,あんな左に偏ってる部員たちを率いるなんて.革命を起こされないよう,せいぜい気をつけるんだな.」
涼しい顔でゴツい単語を連発する先輩.
「だ,誰ですか?」
「あ.すまん.マイワールドに入ってた.極左冒険主義は我が妹,ユメに貼ったレッテルだ.新自由主義者が我が妹の友,ユウタ.そして,右派修正主義者が我が妹の子分,ユウキ.今の部活に不満があるようで,革命という名の反乱を起こそうとしている.」
え,ユメちゃんって子分いたんだ.てか子分って…?やばい,ユメちゃんのこと,全然知らないのか
も.
「ま,専門用語の意味はググってくれ.」
別に知りたくもないわ.
「なんでそんなに難しい言葉を...?」
「近頃,政治思想史を学んでいて,ちょっと思考が革命的になってしまっているのだ.」
いや,そうはならんやろ.ハマりすぎじゃね?まあ,元部長は現役のときから変わっていたからな....うちの部の部長は変人ばかりやん.でも強いっていう....
「あの、ユメちゃんのこと、教えてください!」
ユキ先輩は驚いているのか引いているのかわからないくらい微妙に表情が変わった気がした。
「そのためだけに来たのかよ。確かに、かなり曲者だから大変だろうが。」
あ、呆れてるだけだった。
「我が汝に伝授すべきことはただ一つ。全体主義的な押し付けと資本主義的な競争と恋愛主義的な話題と声援主義的な強制と矯正を避けることだ。」
いろいろツッコミたいけど、あたしが言いたいことはただ一つ。
「どこが一つだよっ!」




