降雨主義
俺は最近,戦争を指揮する夢ばかり見る.見た時は歴史オタクのユメに解析してもらう.
フツーに死体が転がってるシーンとかも夢に出てきて,正直苦痛ではある.しかし,ユメのおかげで少し楽しみにもなっている.
「なんかね,今日は確か....なんか砂が凄くてさ.俺がなんか前の方の部隊に行って,鼓舞してるのかな.そんなことやって.そしてその後,風向きが変わったとか,なんとかで,攻撃するぞー!みたいなカンジの夢を見たんだよ.なんの戦いに似てる?」
「毎度毎度難しいわ!でも,やっぱり,三日月の兜をかぶっていたりする?」
怒りつつも,ユメも楽しんでいるようだ.
「うん.」
夢の中だと,なんかよくわかんないおじさんになっているんだよな,俺.
「摺上原の戦いかな.伊達様が蘆名氏を滅ぼし,東北の覇者となった決定的な戦いだ.まあ,実際に
見てないし,なんとも言えないケド.」
ユメは伊達政宗が好きだから,ただ強引に結びつけている可能性だってあるからな.
「ここで小ネタ.実は,惣無事令,要するに個人的な戦争すんなよってきまりを無視してやったんだよ.豊臣秀吉の.」
こいつは語りだすと止まらない.容姿は良くて,結構かわいいんだが,中身がオタクすぎる.
「俺,伊達政宗の生まれ変わり?」
何回か伊達政宗関連の戦争の疑いがある夢見たし.
「マジで?ユウタが?僕は毎日推しに会えているということになるよ?」
俺達は家が近いから,毎日一緒に登下校をしている.
「伊達様とか言ってる割には,伊達政宗は歴史人物の中で二番目なんだろ.好きなの.もし伊達政宗
の生まれ変わりだったらなんか複雑な気持ちになるわ.」
ちなみに一番は杉原千畝という方らしい.歴史に詳しくない俺からすると誰だよってカンジ.
そして三番がスターリンなのがかなり狂ってる.
俺が教えられた限りのことを反芻すると,とてもじゃないが良いイメージは持てない.
杉原千畝はなんかいい人っぽいけど.
そして,ユメは革命を起こしたいんだってな.自称令和のスターリンだっけ.変わってるじゃ済まない境地に辿り着いている.
「よし,じゃあ俺は自称令和の伊達政宗だ!」
「フッ.良いんじゃない?伊達政宗も君も同じ性格の傾向があるからね.計画的だけど,急に大胆な
行動に出る.」
ユメも認めてくれたようだ.あとなんで急に悪役みたいなカンジに...?
「なあユウタ.毎度毎度のことだが,ユナ先輩ウザくね?全体主義を唱えている独裁者のようだ.だ
からさ,革命を起こそうではないか!ハッハッハッ!社会主義にしてやる!僕なら釣り野伏せで嵌めたいとこだな.」
なんかよからぬことに巻き込まれそう!でも,なんかたのしそう.
「いいぜ.梅雨の時期なのに外での走り込みを計画してるアイツに目に物見せてやろう!」
「協力してくれる理由が思ったよりしょぼい.」
どのみち,俺らにはユナ先輩は敵でしかない.圧倒的な実力があり,顧問も逆らえない.悪気は無さ
そうだが,自分こそが正義という確固たる信念を持っていて,それをみんなに強制してくる.
「ユナ先輩,雨降ってきた!」
校庭での外周中,雨がパラパラと降ってきた.ユメはすかさず文句を言う.あいつは雨が嫌いだか
ら.
「気にするな.雨が降っていたほうが,他の部活がどっかいって校庭を独り占めできる.」
俺は苛ついたが,ここは冷静に.作戦を実行するのだ.
「トイレ行ってきます!」
俺とユメは同時に叫び,一旦離脱.そして,傘とレインコート,レインブーツを装備して戻る.
「お前らなにを?」
ジト目でこちらを凝視する.
「止めてくれないなら俺らはこれで走ります!」
「僕たちなりの抵抗です!」
降りかかる雨を傘で弾き,水たまりをレインブーツで豪快に踏んでいく.
「明日は休みだから,風邪をちょっとひいたところで問題なかろう.」
「ユナ先輩!」
「そういうことじゃないです!」
「これは僕らの」
「抵抗運動だ!!」
ユナ先輩は黙ってこちらを見ていた.その間にも,雨は強くなっていく.
「そこの二人,明日の放課後に私のところに来るように.」
「へ,上等だ.最高の謝罪を見せつけてやる.」
と負けたふりして追い打ち.釣り野伏せだ.
「ねえユウタ.新し主義思いついた.『降雨主義』」
「それはどんな主義?」
「今雨が降ってたからつけただけ!」
まあ,俺ら革命軍にとっちゃ,この雨は大事なものですな....
抑圧に立ち向かう俺らは反降雨主義だ。




