落下主義
誰かを攻撃することをスマッシュと呼ぶことにする.そしたら,その攻撃を受け止めて返すのがブロックだ.
弾いてさらに攻撃力を強くして返すのがカウンターである.
分かりにくいか.僕は卓球部でね.別に卓球が好きだったわけではない.
ただ,毎日のようにやっているから,真っ先に出た例えがこれだった.
そんなことよりアイス食べたい.
で,何が言いたいのかって?卓球は返せなかったほうが負けだ.たとえ攻撃されても,返さなけれ
ば勝てない.
でも,僕は返球して勝つ意味を見つけられない.僕はカウンターが好きだった.
しかし,僕は勝ちたい訳ではなく,相手を圧倒したかっただけ.
暑いな.マジでアイス食いたい.
突然だが,僕は勝つことが怖かった.敗者に妬まれることが嫌いだった.なんとなくで打ち負かす
ことが申し訳なかった.
だから勝負とか競争とかやめたい.資本主義のレールから外れて,一人で僕を正当化してくれるシステムを探している.
上を目指すのはつかれた.堕ちれるところまで堕ちてしまいたい.
食べるなら,バニラアイスがいいな...
なんて,部室の隅で嘆いている僕,ユメ.ユメなんて名前の割には,将来の夢なんてない.強いて
言うならなんか革命を起こしたいな〜くらい.夢というより野望だな.
「台ついてー!」
おっと,休憩時間が終わったようだ.さて,脳内ひとり会話を終了するとしよう.
「エレベーター三分間始め!」
エレベーターとは,勝った人が上と決められた台の方向に,負けた人が下と決められた台の方向に下
がる試合形式. 全方向からピンポンが跳ねる音が聞こえる.ポコポコ,パチーンッ.
相手は僕よりちょっと強い.もし相手の調子が悪くて僕が勝つと,相手はキレる,不快だからサーブはミス多めでいこう.そんなことしなくても基本は負けるケド.
試合中だが,退屈すぎてまた会話したくなってきた.相手はただミスるまでずっと返球するだけ.
つまらないの極みである.
ア゙ー,アイスだべだい゙!
あ,負けたようだ.点数は数えてないから知らんが,ありがとうございましたって言ってるから,さっさと下にいく.
勝ったとか負けたとか,声出せとか,なにもかもがうざい.敵も味方もいない深淵に沈んでしまい
たい.刹那,目の前にピンポン玉が落ちてきた.
そうだ,新しい主義を思いついた.
「落下主義」
堕ちれるとこまで堕ちてしまえば,無敵だ.
「おい!聞いてる?」
つまらん対戦相手がなんか言ってる.
「お前勝っただろ!」
こいつまだ声変わりの気配ねえな.中2なのに,小学生みたいな声だ.
「あー,スミマセン.」
棒読みで謝る.
「なにぼーっとしてるんだよ.」
怒られた.クソ、あの生真面目野郎のユウごときに。でも知らん.これは堕ちて解放されるためのプロセスだ.
だから真剣に向き合って精神を削られる必要なんてない.生真面目なやつに構う暇はないね.
「おい?聞いてる?」
黙れ。僕は、僕はな。それどころじゃない。
「あいすたべたああい!!」




